日本商工会議所と東京商工会議所は2024年11月21日、年金制度改革に関する提言を発表した。「年収の壁」問題の本質的な解決とともに、会社員らに扶養され保険料を納める必要がない「第3号被保険者」制度の将来的な廃止に向け「早急に国民の合意を得る努力をすべき」と求めている。 中小企業で深刻さを増す人手不足が成長の足かせとなっていることを受け、社会環境・構造の変化や年金制度をめぐるおもな課題を整理。年金制度改革の検討にあたり、提言項目を取りまとめて公表した。 提言内容は、「社会の変化に対応した年金制度への再構築に向けて」「将来の公的年金の受給水準確保に向けて」「その他の検討課題」の3分野。 被用者保険の適用拡大について、規模の小さい事業者の事務処理・コスト負担が重いことから負担軽減の支援策を講じるべきとしたほか、いわゆる「年収の壁」問題については「壁の上げ下げでは本質的解決とならない」と指摘。「現実に起きている就業調整問題に対し、さらに有効な対策を検討すべき」と訴えている。 サラリーマン家庭の専業主婦(被扶養者)の老後の無年金をなくし年金受給権を確立するために約40年前に導入された第3号被保険者制度については、現在は性別や婚姻の有無に関わらず、男女とも働いて収入を得ることが一般化しているとして「制度が果たしてきた役割は、終焉が見通せる状況になりつつある。むしろ、主婦等被扶養者を非就業・低収入就業に固定化させる誘因との見方がある」と強調。「年収の壁」問題の根底にある第3号被保険者制度について、10~20年後などの解消に向け、「早急に国民の合意を得る努力をすべき」と提言した。 提言の概要や本文は、日本商工会議所や東京商工会議所のWebサイトから見ることができる。