中高受験生の親の心得…「声の教育社」三谷潤一氏が語る不安を乗り越える視点 | NewsCafe

中高受験生の親の心得…「声の教育社」三谷潤一氏が語る不安を乗り越える視点

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「声の教育社」の営業部に勤務する三谷潤一氏
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 「過去問」でおなじみの声の教育社で、長年受験の最前線に立ち、多くの講演や「リセマム相談online」の相談員を務める三谷潤一氏。多くの受験生と保護者を見てきたエキスパートに、これまでの相談内容や、不安を乗り切るための親の心得について話を聞いた。

【リセマム相談onlineとは?】
 「リセマム相談online」は、保護者の悩みに、時間や場所を気にせず、電話やZoomといったWeb会議システムなど事情にあわせて相談ができるサービス。

 塾選びから志望校選定、さらに伸び悩む教科への学習アドバイス等、普段対話することの難しい人気の専門家と1on1で対話できる。中学受験か高校受験か、あるいはインターナショナルスクールかなど、中学受験に関するさまざまな相談に回答できる専門家が相談を受け付ける。
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25年のキャリアが語る受験指導の原点
--三谷さんは普段、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

 中学校、高等学校の過去問発行している出版社の「声の教育社」で、おもに学校や塾をお客様に仕事をしています。受験関連の講演会でお話をさせていただく機会も多く、週末はイベント会場で本のご紹介をしていることが多いです。

--声の教育社に入社される前は、塾で働かれていたとお聞きしました。

 塾にいたのは2000年までですから、もう25年前になります。最初は学生アルバイトから入り、そのまま就職という安易な選択をして(笑)、地元で中学生を教えていました。その後、個別指導塾や地域塾を経て、中学受験の担当になりました。当初、中学受験のことはまったくわかっていませんでしたが、1990年代に入って中学受験が加熱しだした時期から本格的に携わるようになりました。

--その後、受験情報のエキスパートとして、講演や相談員として活躍されているのですね。

 塾にいたときから、保護者の方々からの質問は多く受けていましたので、当時から保護者の皆さんと向き合ってきたことが、今の仕事につながっているのかもしれません。

「辛い思いをさせたくない」親心が生む二極化
--これまでに受けた相談で、特に多かった内容や、最近の傾向について教えてください。

 根本的なお悩みは以前とそれほど大きな変化はありませんが、時代背景として、親御さんがお子さんに「辛い思いをさせたくない」という気持ちが強くなっていると感じています。本当は、悩んだり、うまくいかないところを乗り越えたりといった経験が、成長につながるものだと思うのですが、いざ自分の子供がそうした状況に置かれると、できるだけ避けたいと思う方が増えているようです。

--相談内容はどのようなものが多いでしょうか。

 中学受験の場合、受験シーズンが本格化する中で「このままだと全滅してしまうのではないか」という不安から、併願校の相談が多いですね。第一志望校は決まっているけど、確実に合格をもらえる学校をどこにすべきか、とか。特に男子は女子に比べると選択肢が少ないため、余計に切実なお悩みだと思います。

 最近は、面倒見の良い学校の人気が伸びています。親御さんが中学受験で疲弊してしまい、中学進学後に自習室や家庭学習指導が充実していて「勉強しなさい」と言わなくて良い、給食やデリバリー等があるからお弁当を作らなくて良いなど、学校にすべてを任せたいというご家庭の増加が背景にあると感じています。

-- 塾に関するお悩みはいかがですか。

 たとえば、大手集団塾に通われている保護者の方から「塾が何もしてくれない」という不満を聞くことがあります。その塾は保護者会や三者面談がほとんどなく、不安に感じる保護者が多いようです。逆にそうした塾であっても、毎日電話してでも情報を取るという、賢い塾の使い方をされている方もいらっしゃいますが。

 また、塾からの宿題や過去問演習など、やることが多くて自分の勉強が進まない、という声も聞きます。実際、学校でも塾の宿題をこなさないと間に合わない、といったことは起きているようなので、折り合いのつけ方が難しいですよね。

高校受験特有の「壁」とは?
--高校受験に関する相談には、どのような特徴がありますか。

 高校受験は、入試制度に関する質問が多いです。特に都県境にお住まいの方ですと、入試制度の違い、内申点や偏差値の基準、単願・併願に関する内容ですね。

 この時期になると、内申点などの基準が不足している場合の対応についてのご相談が増えます。私立高校の併願や単願では、内申点などの基準をクリアしているかどうかが非常に重要になってきます。そのため、「足りないけれどもチャレンジしたい場合、どうすれば良いか」というご相談が多いです。

-- 親子のコミュニケーションに関するお悩みはいかがでしょうか。

 あるイベントに登壇した際に「子供は親に勉強しろと言われれば言われるほど、やる気はなくなります」とお話したことがありました。イベント後質問に来られたお父様から、「常々思っていたことを言ってもらえた。でも今日の話を妻にどう伝えたら良いか」といったご相談を受けたことがありました。

 このように、教育方針や子供の接し方の違いなどを、角が立たないようご夫婦でどのように共有するかで悩まれているケースが目立ちますね。

辛いときこそ「明るく乗り切る姿勢」が合格を引き寄せる
-- これまでのご相談の中で、特に印象的だったエピソードを教えてください。

 やはり、親子が限界まで頑張ったケースです。中学受験を目指しているご家庭のお父様が、塾の成績が上がらないので、ご自身で予習してまでお子さんに勉強を教え続けたのです。おかげで成績は上がったものの、親子とも疲れ切ってしまい、毎日喧嘩ばかりで「もう受験をやめたほうが良いか」と相談に来られました。

--そのときはどのようなアドバイスをされたのでしょうか。

  まずは「本当に、ここまでよく頑張ってこられましたね」と、ねぎらいました。そのうえで、「お子さんがやめたいと言わないのは、これまでの努力が無駄になるのが嫌だから。親がやめろと言うのは、子どもの努力を否定することになります。ですから、自分ごととして受験に向き合えるよう、親は感情的にならず促すべきだ」とお伝えしました。

 また、別の印象的なエピソードとして…こちらも中学受験ですが…ある不合格が続いたご家庭のお話ですが、最後の試験前に家族4人でカラオケに行って歌いまくったと聞きました。お姉さんの受験で我慢を強いられていた妹さんがはしゃいでいたそうです。普通は不謹慎だと思われるのかもしれませんが、家族全員で辛い気持ちを発散し、「明日ダメならしょうがない」と気持ちを切り替え、家族でひとつの想いを共有したことが、功を奏したのでしょう。翌日の試験で、お子さんは合格を手にすることができたそうです。そのときのことをご家族みんな忘れないでしょうね。親御さんの不安は子供に伝わりますから、明るく乗り切る姿勢が大切だと感じました。

受験生のご家庭へのメッセージ
--まずは中学受験を控える保護者の皆様にメッセージをお願いします。

 親御さんは、お子さんに向かって「大丈夫!」と言い続けてほしいです。嘘でもいいから褒めちぎりましょう。親はたとえ根拠のない自信と言われようが、楽観的に構えて自信をもつべきです。「こんなに頑張ったのだからあなたは大丈夫!」と言い続けることが、子どもの安心感につながり、力を引き出すことになるのです。

 そして、受験戦略としては、「最悪のケースを想定し、全滅だけはとにかく避ける」という併願作戦が重要です。「1校は合格した」という成功体験は、親子が自分たちの努力を認めてもらったという確信につながります。たとえその学校に通わないという選択をしたとしても、合格を手にしたという自信をもって新しい学校生活に入ることがその後の成長や姿勢に繋がります。「受験なんてやらなきゃよかった」と思わないことが大切なのです。

 学校選びにおいては、「偏差値」や「評価」にとらわれすぎないでください。今の学校の評価は「たまたま、そうだ」というだけで、将来大きく化ける学校はたくさんあります。今の評価に惑わされず、未来の可能性を見据えて幅広く学校を選ぶことが大切です。学校には必ず足を運び、「考えるな、感じろ」という気持ちで、肌で感じることを大切にすべきです。あ、この言葉は映画『燃えよドラゴン』でブルース・リーが言ったセリフなんですけどね(笑)、私もよく使わせてもらってます。

--高校受験を控える保護者の皆様へのメッセージをお願いします。

 「全滅を避ける」戦略が基本です。

 加点制度を最大限に活用し、もし内申点などの基準が足りなくても、まずはチャレンジする姿勢が大切です。足りなかった場合でも、確実に合格が見込める次の学校を併願として考えておくべきです。

 私立高校は学校によってさまざまな基準を設けているので、募集要項や情報をしっかり把握することが重要です。不足している場合でも諦めずに、検定、部活動、生徒会などの「加点要素」を活用できないか確認してください。基準が足らなくても、入試の学力検査の得点が高ければ合格できるので、滑り止め校を確保したうえで過去問演習を重ねて欲しいです。

 就学支援金の充実によって私立高校志向は増えていますが、早めに進学先が決まると机に向かわなくなるものです。数か月遊び呆けていると、高校に入学したあと、授業についていけなくて躓くケースがあります。合格したあとも学生生活は続くことを意識して欲しいです。

 受験の結果に関係なく、お子さんが新しい学校生活に対してワクワクして入学式を迎えてほしいと願っています。今の難易度や評価に惑わされず、未来は変えられると信じて、前向きに受験を乗り切ってください。

--ありがとうございました。


 今回、話を聞いた三谷氏をはじめ、多くの専門家が講師として登録をしている「リセマム相談online」。受験関連の内容はもちろん、子育てや海外留学など、多岐にわたる相談ができる。

 受験本番が差し迫り、「身近な人には相談しにくい…」「第三者からの冷静な意見が欲しい」など、少しでも悩まれている方は一度、専門家に話を聞いてみてもらってはいかがだろうか。

リセマム相談online
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 なお、2025年12月1日には、オンラインで悩みを相談できるライブ企画「受験直前企画!中学受験なんでも相談会」をZoomウェビナー(表示されるのは専門家のみ)で開催する。今回の取材でお話しくださった三谷潤一氏と、共育コンサルタントの金澤浩氏が登壇し、勉強のことや志望校のこと、家庭でのサポートの仕方など、入試直前期の保護者の悩みを聞き、その場で回答をしてくれる。「いきなり個別相談はハードルが高い…」とお感じの方は、ぜひこのイベントを通じて「リセマム相談online」の雰囲気を感じ取ってほしい。


 
《編集部》

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