顔を触ると記憶力アップ…早大、自己接触行動の効果を検証 | NewsCafe

顔を触ると記憶力アップ…早大、自己接触行動の効果を検証

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正答数の結果と実験条件(誤差線は標準誤差)
 早稲田大学の研究グループは、自己接触行動が語彙検索を助けることを実験で明らかにした。成人を対象に、ことわざや四字熟語の定義を問い、対応する言葉を答える課題を実施。自己接触行動を行った参加者は、手の動きを抑えた参加者よりも正答数が多かった。これは、顔を触る動作が特定の課題に対する注意制御に役立つことを示唆している。

 自己接触行動とは、無意識に自分の体に触れるしぐさを指し、これまでは緊張や不安をやわらげる行動と考えられてきた。研究では、自己接触行動が語彙検索を助ける可能性が議論されてきたが、実験的に操作することは少なかった。

 今回の実験では、3つの条件を比較。(1)手の動きに関して特に教示をしない「統制条件」、(2)両手で頬を触りながら課題に取り組む「自己接触条件」、(3)棒を両手で持ち手を動かせなくさせる「抑制条件」。自己接触条件は抑制条件より正答数が有意に多く、自己接触行動が語の想起を助けることが示された。

 研究の波及効果として、高齢者や失語症者など、語想起の困難を抱える人々への支援に応用できる可能性がある。自己接触行動を自然に取り入れることで、会話を続けるための手がかりや安心感を与えることが期待される。

 学術的な効果としては、非伝達的な身体動作の意義を示した点が挙げられる。自己接触行動は「注意や認知の制御」に関与する可能性があり、ジェスチャーとは異なる役割を担っている。この違いを明確に区別して研究することで、人間の言語生成や認知過程の理解がさらに深まることが期待される。

 今後の課題としては、年齢や文化の違いによる影響の解明や、より自然な会話場面での検証が必要だという。さらに、脳活動の計測などを組み合わせることで、自己接触行動がどのように注意や記憶を支えているのかを解明できると考えられる。同研究成果は、2025年8月26日に「Languages(MDPI)」に掲載された。
《風巻塔子》

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