中高大、いずれの受験も「時事問題」は社会科以外にもさまざまな教科で出題される。ネットやTVなどのニュースでよく見聞きする、基本的かつ重要な「キーワード」に関連するトピックスを、「経済」「法と政治」「世界情勢」「社会と技術」「宗教」「現代史」のテーマ別に収録した、池上彰氏の『カラー図解 社会人なら知っておきたいニュースに出るキーワードがすっきりわかる本』は、今の世の中の情報を読み解くために必要な教養を、オールカラーのイラスト図解を使ってわかりやすくまとめた1冊だ。 本記事では受験シーズンに突入するわが子と一緒に学び、考えたい「キーワード」をピックアップし、解説ととも紹介する。今回のキーワードは「ユダヤ教」について。(本記事は、「カラー図解 社会人なら知っておきたいニュースに出るキーワードがすっきりわかる本」(KADOKAWA)の一部を抜粋・改編し掲載している。本文イラスト・図版/ケン・サイトー)ユダヤ教はどういう教えなのか なんとなく決まりごとが多いイメージがあるこの宗教。そもそもどういう考えにもとづいたものなのか?基本的な知識を、この宗教の誕生からひもといていく。ユダヤ教の起源 ユダヤ教の経典である『旧約聖書』(聖書についての紹介は本書の259ページに記載)の冒頭「創世記」には、「初めに、神は天地を創造された」と書かれています。ユダヤ教とは、「世界も人も唯一の神が創造した。この神の教えを固く守れば、神はユダヤ民族を守ってくれる」という信仰にもとづいた宗教です。ユダヤ教はユダヤ人だけの宗教、ということですね。 3000年以上前、現在のイスラエルがあるパレスチナの地にユダヤ人が移り住み、その一部はエジプトにも住むようになりました。しかし、エジプト王の圧政によって迫害を受けたため、唯一神ヤハウェが指導者として選んだとされるモーゼとともに、エジプトを脱出します。これが、『旧約聖書』に書かれている「出(しゅつ)エジプト」です。 モーゼはヤハウェから、カナンの地(現在のパレスチナ地方)へ戻るように命じられます。この地は、神がユダヤ人の祖先アブラハムに対して「与える」と約束した土地(約束の地)とされています。モーゼがカナンの地に戻る途中、10か条からなる神との約束を授けられました。これが「十戒(じっかい)」です。そこには「ヤハウェ以外を神としてはいけない」「偶像を作ってはいけない」「 ヤハウェの名前をみだりに唱えてはいけない」などの条文がありました。 こうして神と契約したユダヤ人は、約束の地にイスラエル王国を建設しました。しかし、古代に王国が滅亡してから1948年のイスラエル建国まで、国を持たない民族として世界各地に離散することになるのです。食べてはいけないものがある ユダヤ教では、「十戒」にもとづく戒律(信仰上で守るべき規律・規則)を守って実践することを重んじ、「 律法(トーラー)」 で、さまざまな規定が定められています。 たとえば、野菜や果物は食べてもいいが、豚肉やエビ、タコ、イカなどはだめ。牛肉は食べてもいいが、血のしたたるビーフステーキはいけない。ユダヤ教では、血は命であると考え、血を食べる(または飲む)ことを厳格に禁じているのです。また、肉と乳製品を分けて食べるようにも規定されています。ユダヤ人 一般的にユダヤ人とは、ユダヤ人の母親から生まれた人、またはユダヤ教を信じている人のことを指します。ですから、ユダヤ教の信者でなくてもユダヤ人はいますし、アジアやアフリカなどにもユダヤ人はいるのです。 ユダヤ教では、金曜日の日没から土曜日の日没までを安息日としています。安息日にはいっさいの仕事が禁じられています。敬虔なユダヤ教徒は、この時間帯に車も運転しませんし、電化製品のスイッチも入れません。 また、ユダヤ教では、年齢に応じた儀式が行われます。男の子は生まれてから8日目になると割礼(性器の包皮を切り取ること)を受け、この儀式の後に名前を授けられます。女の子は、会堂(シナゴーグ)で、その子と母親の幸せを願う祈りを捧げてから名前が付けられます。男の子が成人と認められるのは13歳。このとき会堂で「バー ル・ミツバ(戒律の子)」の儀式を行い、家庭でも一家でお祝いします。一方、女の子のほうは12歳で成人とみなされ、「バート・ミツバ(戒律の娘)」の儀式が行われます。この儀式は地域によって異なり、12歳の少年少女が合同で成人式を行うこともあるようです。 「ユダヤ教」のほかにも、さまざまな気になるキーワードをわかりやすく解説している『カラー図解 社会人なら知っておきたいニュースに出るキーワードがすっきりわかる本』。気になるキーワードをきっかけに、親子で知識を共有したり意見を交換したり、「そうだったのか!」と会話を楽しむ時間をつくってみてはいかがだろうか。