「こんなに辛いことが人生にあるだなんて誰も私に教えてくれなかった」抗がん剤+放射線「お願いだから麻酔をかけてください」と懇願する私に医師は | NewsCafe

「こんなに辛いことが人生にあるだなんて誰も私に教えてくれなかった」抗がん剤+放射線「お願いだから麻酔をかけてください」と懇願する私に医師は

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「こんなに辛いことが人生にあるだなんて誰も私に教えてくれなかった」抗がん剤+放射線「お願いだから麻酔をかけてください」と懇願する私に医師は

熊本市在住、現在52歳の西川佳江さんは、中2・高2の2人娘のママ。アパレルECのCEOのほか、埼玉県のFM局「Nack5」火曜深夜の番組「Goo Goo Radio」のパーソナリティを20年に渡り務めています。

よく食べよく笑いよく働く、そんな佳江さんの肩書がある日突然「がん患者」になったのは、いまから5年前、46歳のときでした。

前編記事に続く後編です。

転院、抗がん剤+放射線の治療を始めるが「この世の地獄とはこのことかと思い知りました」

2月の乳がんの発見から5か月。2つ目のがん、子宮頸がんの治療のため、佳江さんは7月にがん研有明病院に転院しました。手術を行わないという治療計画はそのまま維持されましたが、抗がん剤は従来予定のシスプラチン単剤から「シスプラチン+パクリタキセル」のTP療法に変わり、並行して放射線でがんを叩くことになりました。月曜に検査、火曜に抗がん剤を投与、水木は生理食塩水を点滴して流し、金曜に体重が基準値の重さなら終了、戻っていなかったらさらに生理食塩水を追加。土日月は休みで、月曜にまた検査、これを6週に渡って繰り返します。

「まだコロナ前だったのでお見舞いに人がじゃんじゃんきてくれます。寂しくはなかったのですが、この抗がん剤は本当にしんどくて。とにかく倦怠感が常識の限界を超えるレベルで、やる気がゼロをはるかに超過してむしろマイナスみたいな状態。ずっと吐き気止めを飲んでベッドに寝て天井を見るだけの生活です」

火曜に6時間がかりでぽたぽた2剤を点滴で落とし、水木は生理食塩水を点滴、金曜の数値がダメだったら金曜もずっと生理食塩水。

「月曜には放射線を受けに地下に降りるのですが、エレベーターでも立っていられず壁に寄りかかって移動します。その間にラルスという治療があって、これがまた、こんなに辛いことが人生にあるだなんて誰も私に教えてくれなかったことを呪うような何かで」

「遠隔操作密封小線源治療」ラルス(RALS)は体の中から放射線を照射する治療です。アプリケータと呼ばれる金属製のチューブを子宮と膣に挿入、イリジウム線源を一時的に体内に送り込むことで、身体の内部から直接腫瘍に対して放射線を照射する療法で、子宮頸がんの治療にはよく使われるそう。

「まずは子宮口を開かねばなりませんから、お産のときに使ったあの子宮を開くもの*1を入れて一晩耐えます。私の場合はですが、まあ、ひどく痛い。そしてアプリケータの挿入も痛い。そのうえ、腫瘍を直接狙うため、とても慎重に2時間近くかけて何度もX線で位置を撮影しながら位置と確度を合わせてイリジウム線源を設置します。照射そのものは5分程度なのですが、始まる前に怖くて『お願いだから麻酔をかけてください』と懇願してしまいました」

(*1編集部注・ラミナリアなど)

分娩台のような手術台で、風下には目だけを出したイケメン(に見える)先生やスタッフが4人ほどいらっしゃる、その緊張感もあります。やっぱり恥ずかしい気持ちはぬぐえません。

「痛みを紛らわすために好きな音楽をかけていいよと言われていたので、エド・シーランを爆音で流してもらいました。そこへ麻酔をかけてもらうと、瞬時に意識が飛びます。ですが私は途中で起きてしまい、どうやら『私ラジオDJもしてるんですよ』とぺらぺら話しはじめたみたいです。……なんかもう、とりとめのない話でごめんなさい。私、そうやって、痛くて辛い中にも少しの楽しみを見出そうとしてたみたいです。『エド・シーランでこれは事実上クラブじゃん』って。現実はどうやっても痛くて辛いんだから、もうハッピーに楽しむほうに無理やり脳をセットしたというか」

「あいつら」がくる抗がん剤治療。でも「いずれ終わるのを先生たちは知っている」

6週間にわたる入院治療の前半はまだ泣いたり笑ったりする元気もありましたが、3週目からは白血球値が戻り切らなくなり、抗がん剤のダメージ蓄積を実感したそうです。倦怠感、しんどさの積み重ねの前に、悩んだり泣いたりという感情もなくなったと振り返ります。

「乳がんの時は、仕事どうしよう、今後どうしようといろいろ考えました。しかし子宮頸がんでは、抗がん剤が入るとすべて『無』。1日の中でも波がありますが、私は『あいつら』と呼んでいました。『あいつら』がくると気分がとにかくつらさの塊、すべてがすごい速度で落ちていき、あいつらの人数が多いと『無』。あいつらの襲撃が弱まると何かを食べようかなという気持ちになりますが、先生がたは食べろとは言いません。よくご存じだなといまも振り返って感じますが、ずっとこの状態ではないから、食べて吐いてしまうより、食べたくないなら自由にしていてくださいと。でも周囲はもっと食べてと言うんですよね、それもまたつらかった」

たとえばインスタで美味しそうなサンドイッチを見かけて「おいしそう」とつぶやくと、さっそく友人が翌日買ってきてくれるので、それを食べる。お母さまが好物を作っては持ってきてくれる。

「なんと、普通なら絶食に近いはずの6週間で、私は5しか痩せませんでした。これだけ痛くてしんどくて辛い思いをしていても、人はどこかで慣れていくんですね。乳がんの摘出や放射線だって、最初は乳房を医師に見せるのがどうにも恥ずかしかったし、子宮頸がんの放射線やラルスだって下半身を出すのが恥ずかしかった。でも、3回目くらいから照射を受けながら先生と『今日は暑いですか』なんてお天気の話をしていたりして。あれだけイヤだイヤだと思っていたのに、普通に仲良しになるんだな、人間の慣れはすごいなって思いました」

ホルモン療法の「私が私でなくなる」副作用。治療は選択できる、

ところで、抗がん剤治療時、倦怠感のほかの副作用はどうだったのでしょう。脱毛、吐き気などがよく言われます。

「強烈な便秘と下痢に苦しみました。金曜まではものすごい便秘なのに、週末はすさまじい下痢になるんです。『土曜に外出して天ぷら食べたい!』なんて先生に言うと、『食べるのは自由ですが覚悟して食べてくださいね』と言われます。私はすごく食いしん坊なので、わかりましたと言って食べますが、そのお腹の壊し方がもう尋常ではなくて、発作みたいで。さすがの私もお腹に優しいものを食べるようになりましたが、すると弟が『お姉ちゃん、そうめん好きでしょう』ってアンパンマンの流しそうめんを持ってきてくれて(笑)。みょうがもしそも刻んで持ってきてくれるんです。看護師さんも『さすがに病室で流しそうめんは初めて見ました』とほほ笑んでいましたが、それでもその後結局トイレに籠るんですね」

いっぽうで、髪はそれほど脱毛しなかったそうです。パクリタキセルが少量だったため、地肌の見えるシニア女性のような減り方にとどまり、だいたい2年で元に戻ったそう。

「ただ、私はウィッグがあまり好きになれず、退院後も仕事で人に会うときはニット帽を愛用していました。色々な帽子を買いました。これは人それぞれで、何かしら自分にあったアイテムが見つかるから安心してください」

また、乳がんの治療の一環として行われるホルモン療法にも大きな副作用があったそうです。ホルモン療法とは、乳がんを増殖させる可能性のある女性ホルモン分泌を薬剤で止める治療で、人工的な閉経状態を迎えます。

「私はホルモン陽性、HER2陰性だったので、ホルモン療法の薬を飲み始めました。しかし、わずか10日ほどで『私が私じゃなくなる』ような状態に陥りました。たとえば、飛行機のチケットを買おうとして希望便が満席だと、もうどうしていいかわからなり、『誰か助けて……』ってしくしく泣いてしまうんです。しばらく我慢しましたが、あまりの激変に耐えかねました。乳がんの先生に相談したところ『もう飲まなくていいです、QOLを大事にしましょう』という話に。『子宮頸がんでパクリタキセルを使っているから乳がんも一緒に抗がん剤治療をしたも同然です、もういいですよ』と」

こうして、佳江さんの治療は終了を迎えました。乳がんの場合はホルモン療法を経て10年で治療卒業ですが、子宮頸がんは5年無事で過ぎればほぼ再発しないと言われています。

「このあいだの夏で卒業かと思っていましたが、カウントを間違えていて、今年の冬、12月24日のクリスマスイブに無事に経過観察が終了しました。24日当日、最後の検査結果をドキドキしながら待ち、移転なし、卒業と言われたあとは一人で変なテンションで泣きました。私にとっては人生最高のクリスマスプレゼントでした」

>>>12月29日21時配信 そんな佳江さんが闘病を経て気が付いたこと。「恥ずかしくない性教育を行うきっかけに」52歳ラジオパーソナリティが「必要だったもの」とは

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撮影/園田ゆきみ(PEACE MONKEY)


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