2010年9月、東京・池袋のラブホテルで女子大生(22)の遺体が発見されました。
逮捕されたのは無職の紺野正美被告(29)でした。知人男性(72)と一緒に渋谷署に自首したのです。
11年2月18日、東京地裁で懲役14年(求刑16年)の実刑判決が下りました。
まず、事件概要を説明しましょう。
起訴状や判決などによりますと、10年9月25日深夜零時ごろ、2人は出会いカフェで知り合い、近くの居酒屋へ行きました。
その時、女子大生が提示した「条件」は、居酒屋で一時間1万円。紺野被告は了解しました。
結局、居酒屋には翌26日の午前1時50分までの2時間弱いましたので、2万円を手渡したのです。
その後、居酒屋を出た後、女子大生は「ホテルなら3万、カラオケなら1万」の条件を出し、被告はホテルを選択します。
手元に現金がなかった紺野被告は出会いカフェから100Mもないマンションへ立ち寄りました。女子大生は廊下で待っていました。
その後、コンビニに寄り、ラブホテルに行きます。
性交後、女子大生がシャワーを浴びている時、財布にあったはずの1万円を取られたと思った被告。
女子大生に詰め寄り、最終的には殺害してしまうのです。
犯行後、午前4時43分。紺野被告はマンションに戻り、6時35分にマンションを出て、横浜へ向かいます。
みなとみらいでぶらついた後、横浜のホテルにチェックイン。知人男性に電話をして渋谷に向かいます。
そこで知人男性に説得され、自首するのです。
自宅、出会いカフェ、事件現場となったホテルは、すべて「近所」です。
事件の翌日、私は現場周辺を歩きました。
匿名メディアであるはずの「出会いカフェ」であるのに、なぜ、自宅近くの場所を選んだのだろうか、と不思議に思ったのです。
また、無職だったのに、なぜ、駅に近いマンションに住んでいるのか、というのも謎でした。
そして、最もこの事件を気になった理由は二つあります。
一つは、紺野被告と知人男性との関係です。
20代の紺野被告と70代の男性。なぜ、紺野被告はこの男性と自首したのか。その関係はいかなるものなのでしょうか。
もう一つは紺野被告と、亡くなった女子大生との関係です。
2人は池袋の出会いカフェで知り合いました。
出会いカフェは、見知らぬ男性と女性とが知り合う場です。男女ともに登録制で、男性のみが利用料金を支払います。
出会いカフェをきっかけにした事件はありましたが、殺人事件は初めてだったからです。
紺野被告は、幼い頃から母親との関係で苦しんでいました。
キリスト教系の新興宗教を強く信じている母親は、生活のかなりの部分で制約を課しました。
父親との離婚で、母子家庭でした幼いころから、母親と一緒に宗教の行事にも出かけていったのです。
しかし、中学時代に反抗し、高校は中退をして、県外に働きに出ることを選びました。
知人男性との関係を説明しますと、被告と知人男性は約10年前、上京してきた被告が飲食店で、都内で不動産業をしている男性に声をかけられたのがきっかけ。
2人は東北出身で意気投合したといいます。
住む場所に困っていた被告に対して、あまり使用していないマンションの部屋を貸したのです。
その後も、自立を促すこともしていましたが、このマンションに戻ったりしていました。10年2月、約一年京都で住んだ後、再び、池袋のマンションに戻って来たのです。
知人男性は私の取材にこう応えています。
「私自身、貧乏な時期があり、いろんな人に支援してもらった。だから、困っている人を見ると、支援したいと思うのです。もちろん、紺野とは最初からうまくいっていたわけではない。でも、憎めないのです。付き合いが長くなれば親近感もわきます」
そして、事件の少し前から、被告がうつ病ではないか心配し、クリニックを紹介していたりしました(実際に被告が通院したのは別の病院)。
「無縁社会」とも言われている昨今ですが、二人の関係は逆でした。
「慣れていない」ことを理由に、知人男性は法廷では証言していません。「振り返ると、証言したほうがよかった」と言い、次のように言いました。
「殺害時のことを細かく話していたが、実際にはパニックだったはず。体が弱いために仕事が続かず、犯行当時も無職。一万円を取られたことで『次の日からどうやって暮らして行けばいいのか?』などを思ったのではないか。ただ、病気のことを言うと、罪を軽くしようとしていると思われるのが嫌だった」(続く)
《NewsCafeコラム》
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