国際教育機関のイー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン(EF)は、世界123か国・地域を対象とした成人の英語力に関する調査「EF英語能力指数(EF EPI)」の2025年版を発表した。日本の英語力は世界96位で、AI評価の導入により「読む・聞く」に比べ「話す・書く」能力が低い課題がより明確になった。 同調査は2011年から毎年実施されており、今回で15回目となる。2024年1月から12月にかけて、世界123の国と地域の成人約220万人のオンライン英語テスト「EF SET」などの受験データを集計・分析した。2025年版からは、新たにAIによるスピーキング・ライティングの自動評価を導入している。 調査の結果、日本の英語力はスコア446で世界96位となり、アジア平均(477)および世界平均(488)を下回った。スキル別に見ると、リーディングやリスニングに比べてライティングやスピーキングのスコアが低く、「理解はできるが使いこなせない」という日本の英語教育における長年の課題がデータによって示されたかたちだ。 EF EPI分析チーム責任者のケイト・ベル氏は「日本では、読む・聞くと比べて、話す・書くのスコアが相対的に伸びにくい傾向があり、今回のAI評価によってその差がより明確になりました。英語力全体の停滞は世界共通の課題ですが、日本では4技能のバランス改善が鍵となります」と述べている。 国内の地域別では、関東(478)がもっとも高く、中国地方(436)がもっとも低い結果となり、都市部と地方での英語力に40ポイント以上の差が見られた。首都圏を中心に英語を使うビジネスや留学の必要性が高まる一方、すべての地域で学習機会が均等ではないことがうかがえる。また、世代別では18~25歳の若年層のスコアが全世代でもっとも低いことも明らかになった。学校教育やオンラインで英語に触れる機会が多い世代であるにもかかわらず、スコアに結びついていない現状が示唆されている。 世界的に見ると、オランダ、クロアチア、オーストリア、ドイツなどヨーロッパ諸国が引き続き上位を占めた。これらの国々では、理科や社会などの教科を英語で教える「CLIL教育」や、口頭試験などの実演型評価が広く導入されている。また、今回のAI評価の導入により、世界の半数以上の国でスピーキングがもっとも弱いスキルであることが初めて明らかになり、読解や聴解を中心とした教育の限界を示している。 同調査では、英語力が高い国ほど国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数」や、INSEADの「世界人材競争力指数」といった国際指標も高い水準を示す傾向が確認されている。