河合塾は2025年10月20日、入試を取り巻く環境の変化と、全統模試からみる2026年度入試の志望動向について、大学入試情報サイト「Kei-Net」に掲載した。国公立大は前年度並みの堅調な人気、私立大志望者は共通テスト方式で大きく増加しているという。 2026年度の18歳人口(現高3生)は、2025年度とほぼ同水準の約109万人。大学志願者数も前年並みを維持するものと見込んでいる。大学入学定員は国立大で前年並み、公立大で微増、私立大では微減になる見込みで、大学全体では概ね前年並みを維持すると推測される。 国公立大では近年、総合型・学校推薦型選抜が拡大しており、来春も一般選抜の募集人員を減員し、総合型・学校推薦型選抜を増員する大学がみられる。しかし、依然として募集人員の4分の3は一般選抜が占めており、国公立大のメイン入試が一般選抜であることに変わりはない。 定員についてみていくと、国公立大の学部系統別入学定員は、理・工・農学系では前年から入学定員増となっている一方、教員養成をはじめとした教育系では定員減となった。私立大では、学部新設にともない、東京理科大や立教大、立命館大などのほか、学科・課程を新設する芝浦工業大、関西大などで大学全体の入学定員が増員。一方で、都市部近郊をはじめとした一部の大学では入学定員を減らす動きがみられ、2026年度の私立大の入学定員は微減となる見込み。 入試のルールについて、2026年度は大きく2つの見直しがあった。1つは総合型・学校推薦型選抜に関するもので、小論文・面接・志望理由書などと組みあわせることで2月1日より前に学科試験を課すことが容認された。前年度から劇的に増加していないものの、首都圏では新たに学科試験を課す方式を設置する大学、近畿圏では学科試験を課す既存の方式で自己推薦書や小論文を課す大学がみられる。 2つ目は入学金二重払い改善についてで、「入学金の額を抑える」「入学辞退する受験生に対し、ほかの入学者が見込める時期であるなら入学金返還に応じる、または分割払いとする」など、文部科学省が受験生の負担を軽減する方策を検討するよう私立大に要請を実施。しかしながら、要請に応じた大学はわずかであり、入試の環境そのものに大きな影響は及ぼさないと推測される。 次に、2025年夏に実施した「第2回全統共通テスト模試」(実施期間2025年7月19日~8月17日)の結果から、2026年度入試の志望動向をみていく。国公立大の動向について、国公立大入試の中心である前期日程の志望者数は、前年比100%であった。難関10大学の個別の状況をみると、北海道大(前年比106%)、東京科学大(同103%)、一橋大(同116%)で志望者の増加が目立つ一方、前年度入試で志願者が大幅に減少した東京大の志望者は前年比95%と落ち込み、東北大や京都大も志望者が減少した。 学部系統別でみると、全体的な傾向としては文系・理系でどちらがより人気というのではなく、文理均衡となった。文系では、「法・政治」「経済・経営・商」で前年比103%と志望者が増加。特に「法・政治」は女子志望者が前年比108%となっている。理系では、「理」「工」「農」はいずれも前年並みを維持。女子志望者では、「理」で前年比106%、「工」は同104%と人気を集めている。 なお、近年国公立大の後期日程廃止の動きが続いている。2026年度は医学科で3大学(旭川医科大、山形大、佐賀大)後期日程を廃止。近隣の大学の志望動向をみると、東北では秋田大、九州では鹿児島大などで志望者が大幅に増加した。医学科で後期日程を受験できる大学は限られているため、そのほかの地域でも後期日程の志望者が増えており、注意が必要だという。 私立大の動向について、私立大全体の志望者数は前年比103%と増加。方式別では、一般方式で前年比99%、共通テスト方式は同110%と、共通テスト方式で大幅に増加している。グループ別では、首都圏で早慶上理、MARCH、日東駒専の志望者が前年比108%、関関同立で同109%と都市部の有名大が人気となっている。 学部系統別の志望動向でみると、文系では「文・人文」「社会・国際」の志望者は前年並みにとどまったものの、「法・政治」で前年比109%、「経済・経営・商」で同107%と志望者の増加が目立つ。理系では、「理」が103%、「工」が104%となり、人気は堅調といえる。 なお、2026年度は学部新設・改組の動きが目立っており、たとえば学習院女子大と統合し、新たに学部が誕生する学習院大(国際文化交流)では、志望者が前年比146%と大きく増加した。立命館大(デザイン・アート)の共通テスト方式は募集人員5名に対し志望者数は222人、倍率(志望者数/募集人員)は44.4倍となっている。同様に、募集人員が少ない方式は高倍率になりやすく、注意が必要だという。 2026年度入試は、新課程2年目となり、切り替わりが本格化。共通テストでは、2年目となる「情報」は難化するかもしれない。2025年度に出題傾向が変わった「国語」はその傾向が継続するとは限らないため、模試や過去問を利用し、幅広い対策が必要。また、各大学の個別試験では数学の範囲について、旧課程生への配慮がなくなり、新課程から加わった分野が本格的に出題されると推測される。 「大学入試環境の変化と2026年度入試最新動向」は、河合塾の大学入試情報サイト「Kei-Net」で確認できる。