アメリカ政府が2025年9月22日の記者会見で自閉症の原因と治療に関する発表を行ったことに対し、日本自閉スペクトラム学会が声明を発表した。同学会は、アメリカ政府の発表内容が十分な科学的根拠に基づかないとして懸念を表明し、誤解を正す責任を強調した。 アメリカ政府は、妊娠中のアセトアミノフェンの服用や混合ワクチンの同時接種が自閉症の原因になる可能性があるという見解を示し、ロイコボリンの使用を推奨した。しかし、日本自閉スペクトラム学会は、これらの発表が一貫した科学的な証拠に基づくものではなく、不必要な不安を生じかねないと指摘する。 自閉スペクトラム症は遺伝的および環境的要因によって複雑に形成され、特定の物質摂取が原因とされる明確な証拠は確認されていない。特にアセトアミノフェンと自閉スペクトラム症の関連については、一部の研究で相関が示唆されるも、決定的な証拠はなく、方法論的課題が指摘されている。 また、ワクチン接種に関しては、水銀化合物を含むワクチンやMMRワクチンが自閉症と関連するとの仮説は国際的な研究で否定されている。ワクチン接種の有効性と安全性は、すでに多くの研究で確認されており、アメリカ政府の見解には科学的妥当性が欠けると学会は主張する。 ロイコボリンについても、葉酸代謝に異常がある一部の自閉スペクトラム症の子供に効果があるとの報告はあるが、大規模な試験は行われておらず、標準的治療薬としてのエビデンスは不十分である。アメリカ政府がロイコボリンを治療薬として推奨するのは、科学的根拠に基づかないとして批判されている。 今回の発表は、社会に不安や混乱を招く可能性があり、必要な医療や支援から当事者を遠ざける危険性が指摘されている。同学会は、今後も関連諸団体と連携し、正確な知識を社会に届けていくとしている。