同世代、40代50代働く女性たちは「なぜ推すのか?」「推して得るものとは?」 それぞれの背景を聞いてみたら、意外な「理由」と世代のドラマが見えてきました。連載1回目はこのSNS時代ならではの方法で「つながり」を楽しむ57歳女性が語ります。
【私たちが「推す」理由】#1後編
◆マリコさん 57歳
東京都在住。自営業、53歳の夫・21歳の長男・18歳の長女
韓国を推す「ソンムル」ってシスターフッドだと思う。女性は助け合うことそのものが幸福なのだと
韓流情報をいっぱい発信している人をフォローし、SNSで情報収集する、これもマリコさんの日課です。フォローしている人の中にはインフルエンサー級の人もいて、推し活の熱量が高い人は情報量もすごい。だから情報を共有してもらいたいのだそう。
もともとXアカウントをもっていたマリコさんですが、韓流用、韓ドラ用にアカウントを新設。既存の知り合いとは被らないようにするためでした。
「私からの発信は1日1回ぐらいかな。ファンミーティングに行った時や、新しい韓国ドラマを見始めたとき、見終わったときに感想を書きます。だからフォロワーは100人くらいです」。
そんなマリコさんにフォローバックをしてくれるのは、やはり同世代の女性たち。ファン同士のプレゼント交換のような慣習を「ソンムル」と言います。これはK-popや韓国スターを推す、韓国ソウルのファンが実践している文化。韓流推しの間ではおなじみの行為なのだそうです。
「日本では、推しのシールやポストカードを作って配る人が多いかな……。SNSで『私が制作したグッズを差し上げます!よかったらもらってください!』などと配信されてくるんです」
もちろん、著作肖像権利を遵守したささやかな交換です。先日は、ファンミーティングの前にSNSを通じて知り合った人と会場で初対面し、「推しのオリジナルシールを貼ったケース入りキャンディ」をいただいだそう。
「ノリが合いそうな方だったので、イベント後に一緒にご飯を食べてきました。その後もお礼のコメントを送り合って、いつか一緒に渡韓して、推し活しようと話しています……」
「1人でファンミーティング参加します」と発信すると「私も1人なので会場で会いましょう!」ということもよくあります。こんな感じでどんどんつながっていきます。
SNSコミュニティはどちらかといえば「大切な同志たちの集団」
「SNSコミュニティはとっても大事なの!」とマリコさんは語ります。フォロワーをもっと増やしたいし、コミュニティ内での関係性を大事にしたいのだそう。
つい最近の出来事ですが「どうしても行きたい推しの舞台挨拶があり、家族を巻き込んで抽選予約を入れたものの、全落ち……」がっかりしてXでつぶやいたところ「チケットが余っているので、譲ります!」とフォロワーさんから連絡が。
「譲ってくれた人とランチに行く約束をしたところです。それぞれのフォロワーさんを数人呼んで大勢で会うことになっています」
出会いはSNSだけではありません。ファンミーティングで隣の席になった人ともお付き合いが続いています。仲良くなったのは、同世代ではなく、小学生のお子さんがいる30代の女性。この年代は子育てや仕事が忙しいこともあり、仲間がいないことに寂しさを感じていたため、同じ熱量で活動する仲間を探していたのだとか。
最後にマリコさんにとって「推し活とは」と質問してみると、
「私にとって推し活は生活の全てではなく、楽しみの一つかな……」
えええ、こんなに全力で推し活してているのに、生活の全てではないの? と肩透かしな発言ですが、その真意は「これひとつしか見えないというような盲目的なのめり込みではなく、友人関係、行動範囲が広がっていくハブのような楽しみの一つ」ということ。なるほど、旅行、美術館めぐりといった趣味のひとつに「推し活」が入って、旅行しながら推し活など相互に影響しあうイメージですね。今後ともいろいろと推し暮らしてください!
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