屋外仕事、子どものスポーツや部活は「この時期こそ要注意」。専門家が語る「熱中症を防ぐため」これだけは知っておいてほしいこと | NewsCafe

屋外仕事、子どものスポーツや部活は「この時期こそ要注意」。専門家が語る「熱中症を防ぐため」これだけは知っておいてほしいこと

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屋外仕事、子どものスポーツや部活は「この時期こそ要注意」。専門家が語る「熱中症を防ぐため」これだけは知っておいてほしいこと

「熱中症は深刻化しており、24年度は前年比約6000人増の9万7000人を越える搬送者が出ました。沸騰化している日本で熱中症をなくすのは難しいのですが、せめて重篤な副作用を起こさない状態で済ませるための啓もうをしていく必要があります」

そう語るのは早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室教授 医師・博士(医学)永島計先生。傾向と対策を聞きました。

この夏は「必ず覚えておいてほしい」内部冷却の方法とは

「もうひとつ、身体の内部から冷やす内部冷却は、使わないとならない場面が出てくるかもしれません。熱中症の最終段階は体温が上がってたんぱく質が変性を起こし、不可逆な脳障害が起きることです。この予防が必須です」

アスリートの場合、明らかに体温が上がるとわかっていたら氷を浮かべたお風呂「アイスバス」に身体ごと漬けるそうです。

「これは乱暴なようでとても有効。人間は2500kcalの半分以上が基礎代謝で、とても多量の熱を作ります。それが調節できないときは氷に身体ごと漬けて冷やすしかないんです」

なるほど……ですが、中高生の部活などの現場ではなかなかアイスバスを用意するのも難しそうです。

「よりマイルドな方法は、氷で冷やしたアイスタオルをからだじゅうに巻き付けて扇風機をあてる、水をかける、アイスベストなど。熱中症の症状を出している人に対して何もしないのは絶対にだめ、最低でもクーラーの効いた安全なところへ連れていき、異変を感じたら、アイスタオルくらいはできると思うから迷わずやる。AEDと同じです」

もうひとつ、最近知られつつあるのが内部冷却です。アイススラリーですね。

「消防士など、汗をかいてもまったく蒸発のない防護服の現場では、凍った飲み物を体内に入れるアイススラリーを取り入れています。冷たい氷を飲ませ、食べさせて、休んでいる間にちょっと早めに体内から冷やすのです」

なぜ熱中症は起きるのか? 身体と熱の関係は子どもに教えておいてほしい

なぜ体内からも冷やすのか。それには体内では熱というものがどう処理されているのかを知るのが重要です。

「ヒトは産生熱と熱放出のバランスをとることで深部体温を37度に保ち、生命活動を維持しています。体温調節機能が働くには汗が重要。かつ、汗の元になる体水分を常に保つことが体温調節機能、ひいては体の機能の維持のため重要です。汗で体温調節するのはヒトだけではないかと言われているのです」

【熱中症対策の3原則】

・暑熱順化 熱くなる前からの準備。暑さに強い体を作る

・水分補給 効果的な水分補給で対水分を維持。脱水を防止

・内部冷却 体温への直接アプローチ。なってしまって体温が上がった時の対応

この3つが揃ってはじめて熱中症に備えることができると永島先生。水分補給だけではダメな理由は?

「人の深部体温は約37度に保たれています。37度は生命活動に欠かせない酵素が最も活性化する温度で、37度より高温、低温になると酵素活動が保てず脳や体の働きが低下します。熱産生と熱放散のバランスがとれてはじめて、体温調節ができます」

夏以外の季節の、たとえば安静+温度中性域(28~31度)の状態では熱バランスをとるための仕組みは強くは働いていません。ヒトにとっての快適な環境とは服を着て軽作業をしていて25度くらいで、体深部の体温37度と環境温度は12度くらい違うものなのだそう。

「発汗による熱放散は、100gの汗の蒸発で体温の1度上昇を防ぎます。体温37度で10分歩いた場合、汗が出れば37度を保ちますが、仮に出ないと38度まで上昇します。およそ10分で100g程度の蒸発を繰り返している、と記憶してください。汗腺はもともとすべりどめでしたが、こうして熱放散を助けるようになりました。発汗し、水とナトリウムを失いながら体温調節をするのがヒトなのです」

では、その原資となる水分はどのように摂取し、また排出しているのでしょうか?

「食物1、飲料水1.2、体内で作られる代謝水0.3、計2.5リットル。ですから、食事をとるのはとても大切な行為です。いっぽうの排泄は、尿1.5、大便0.1、皮膚や呼吸0.9、計2.5。このように、水は常に、かつ動的に失われています。尿だけではなく時々刻々とどこかで出入りしているのです。睡眠497g、通勤340g、長時間座位210g、入浴(41度15分)822gと、意外と損失します」

人の60%は水でできています。大まかに、筋肉40%、間質液15%、血漿など5%。つまり、筋肉は水分を貯蓄する場所でもあるのです。女性と老人は熱中症リスクが高いとされますが、その理由も明快。女性は脂肪が多く筋肉が少なく、また高齢者は加齢により筋肉が少ないため、どちらも身体の含水量が減り、結果的に脱水リスクが高まるとのこと。

つまり、筋肉がまだ少ない子どもも同様に、水分のリザーバーが少ないことを自覚して、こまめに水分の補給が必要ということですね。記録的な猛暑がすでに始まった今年の夏、万全に大切したいものです。

▶▶「知らなかった」熱中症にならないためには水分補給が大事だが、他に大切なことって?

お話/早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室教授 医師・博士(医学)永島計先生

ながしま・けい 1960年生まれ。85年京都府立医科大学医学部医学科卒業、95年同大学大学院医学研究科(生理系)修了。同大学附属病院研修医、米イェール大学医学部ピアス研究所ポスドク研究員などを経て現職。専門は生理学、とくに体温・体液の調節機構の解明。


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