2025年度の全国の私立大学577校3,801学科の学費が初年度納入額で全体の約22%、卒業までの総額で約24%の学科で値上げされていることが2025年1月21日、学費ナビが公表した調査結果から明らかとなった。特に、初年度納入金を引き下げた学科のうち約6割が卒業までの総額で値上げとなる「実質値上げ」となっている。 この調査は、私立大学の学費の実態を把握することを目的として行われた。文部科学省の調査では学費の平均値しか把握できず、私立大学の学費は大学や学部ごとに異なるため、詳細な実態が分かりにくいとされている。学費ナビによる調査は今回で2回目となる。 2025年度の学費が値上げされた学科・大学を調べると、初年度納入額では844学科(107校)、卒業までの総額では906学科(116校)で値上げが行われている。前回調査の18%から6ポイント増加し、初年度納入額を値上げした学科・大学を上回った。また、値下げが行われた学科は88学科(22校)あるが、そのうち、約6割にあたる53学科(11大学)では総額が改定前より高い「実質的な」値上げとなっている。 学費の値上げ要因としては、物価上昇や財政の安定化、教育環境の向上と学生サービスの充実があげられる。インフレ率の上昇により大学の運営コストが増加し、人件費や光熱費、通信費、教材費などが値上げの要因となっている。また、大学は持続的な運営を続けるために財政の健全化を図る必要があり、学生数の減少により1人あたりの学費を上げざるを得ない状況もある。 さらに、教育環境の向上や学生サービスの充実のために、建物や設備の維持・管理、ICTインフラの整備、グローバル化による留学生の受け入れ、海外大学との連携強化などにも多額の資金が必要となる。これらの要因が学費の値上げにつながっている。 2024年には、中央教育審議会で国立大学の授業料引き上げの提言や東京大学の授業料改定が話題となったが、私立大学の学費の値上げについてはあまり報じられていない。私立大学の学費は国立大学とは異なり、大学や学部ごとに異なるため、値上げの実情を知ることは難しい。 文部科学省の「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査」によると、2015年(平成27年)以降、私立大学の学費は毎年ゆるやかに上がり続けている。初年度納入額を2023年度(令和5年度)と2021年度(令和3年度)で比較すると、その差額は8,201円(0.6%)の増額となっているが、これは平均額であり、実際に値上げした大学を個別に見ると大きな差がある。 現状は、入学金は毎年下がっているのに対し、毎年納入が必要な授業料は値上げとなっている。これは初年度納入額が下がっていても、卒業までの総額は「実質的な値上げ」となっている場合が含まれていることを意味している。 学費ナビのデータから、私立大学の学費の現状を詳細に把握することができる。学費ナビは、全国の小学校から大学・専門学校までの学費を検索・比較できるWebサイトであり、教育関係者や保護者にとって有用な情報源となっている。