2025年1月19日、2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト(旧センター試験、以下、共通テスト)2日目「理科」が終了した。東進、河合塾、データネット(ベネッセ・駿台)、代ゼミより提供を受け、理科(『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』『物理』『化学』『生物』『地学』)の共通テスト分析速報「科目別分析コメント」を紹介する。物理基礎東進 大問3題の構成で出題された。昨年同様、実験結果から現象を考察させるような問題が多く出題されたが、昨年と異なり、数値計算の問題はあまり出題されていなかったため時間的に余裕のある出題であった。河合塾 マーク数は昨年より2減少。第1問の小問集合は原子・力学・波動分野からの出題。第2問は2物体の運動を基に重力加速度を求める探究課題からの出題。第3問は比熱測定に関する熱・電気分野の融合問題。昨年見られた会話形式の出題はなかったデータネット アトウッドの装置(滑車と2つのおもり)を用いて重力加速度の大きさを測定する探究課題や、電熱線から発生するジュール熱を用いて液体の比熱(比熱容量)を測定する実験など、実験が重視されており、新課程の観点を意識した出題がなされた。実験データを読み取ったうえで、誤差について考察させる問題が特徴的。難易は昨年並。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して、波動の問題が減少し、熱の問題が増加。また、会話文形式による問題は出題されなかった。第3問が、昨年の波動から今年は熱、電気になった。また、昨年出題された会話文を交えた問題、数値を直接マークする問題は出題されなかった。例年通り基本問題を中心とした出題である。目新しい設定の問題、組合せを答える問題、数値計算は減少したが、数値計算や文字で答える問題の選択肢の数は増加した。化学基礎東進 大問数は2題で、昨年と変化はなかった。設問数は12で、昨年よりも1つ減少した。マーク数は19で、昨年よりも1つ増加した。例年どおり、化学基礎の教科書の内容が偏りなく出題されていた。また、今年からマーク番号が101~に変更となっている。河合塾 第1問は小問集合で化学基礎の全範囲から主に基本的な事項が問われた。第2問は空気の成分の発見と質量保存の法則を題材とした総合問題で、問題文から必要な情報を読み取り、考え方を組み立てていく力や無機物質に関する知識が問われた。データネット アルゴンの発見や質量保存の法則を題材とする計算問題が出題された。第1問は、昨年同様に小問集合形式で出題された。物質の量的関係を正しくとらえて計算する問いがあった。第2問では、空気に含まれる気体成分の発見や質量保存の法則を取り上げた問いが出題された。測定結果から量関係を正しく把握する問いや、数値そのものをマークする問いも出題された。難易は昨年並。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して、計算力と思考力が問われる出題が目立った。知識問題については概ね基本的な内容であった。第1問は、問9bの混合物中の質量の計算がやや煩雑であったが、他は全体として基本的な内容であった。第2問は化学の歴史を題材とした出題であったが、問3bなど一部で思考力と計算力が求められた。生物基礎東進 計算問題・会話文形式の問題が復活、知識問題が難化した。大問数は3問、設問数は16問と昨年から変化はなかったが、マーク数は17個と昨年より1個増加した。出題形式は空所補充、用語の組合せ、正誤判断が主体であり、昨年よりも考察問題の割合が増加したほか、知識問題の難易度が上がった。また、昨年は出題されていなかった計算問題や会話文形式の問題が出題された。 例年同様、特定の分野に偏ることなく、幅広い内容が出題されている。出題内容は、第1問が『生物と遺伝子』から生物の特徴・細胞周期・遺伝情報とタンパク質・生物とエネルギー、第2問が『ヒトの体内環境の維持』から情報伝達と体内環境の維持・免疫、第3問が『生物の多様性と生態系の保全』から生態系における生物どうしの関わり・バイオームである。 昨年までと比較すると、考察問題の難易度は変わらないが、知識問題は各選択肢を吟味する必要があり、やや解答しづらい。全体を通して、教科書内容の知識の正確さを測ることができる良問揃いではあるものの、受験生にとっては解答しづらい問題が多く、昨年よりやや難化。河合塾 今年も教科書の3分野から1題ずつ出題された。設問数は昨年と同じ16、マーク数は1つ増加して17であった。平易な知識を問う問題が少なく、仮説検証型の問題や、計算問題が出題されたため、昨年と比べて解答に時間を要したと思われる。データネット タンポポの再生力を題材に、仮説を検証させる探究的視点の問題が出された。昨年はみられなかった仮説検証に関する問題、会話形式の問題が出題された。昨年同様、知識・理解のみで解答できる問題、知識を前提とした思考問題がバランスよく出題された。解答数は昨年より増加し、選択肢の数が多い設問の割合も増えたが、取り組みやすい問題も多く、難易は昨年並。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して全体の分量が若干増加した。知識や理解を基に実験や資料を読み取る問題が中心の出題であった。教科書の基本的な知識や理解を基に、実験や資料の内容を読み取って考える問題が増加し、これまで以上に知識の活用力や思考力が求められる内容であった。例年通り、すべての大問がA・Bの中問に分かれることで幅広く出題された。地学基礎東進 第4問は自然災害や人為起源の現象について、自然界のスケールを意識した出題がされた。大問数・設問数・マーク数に変更はなかった。新課程の狙い通り、図やグラフを読み解く問題が目立った。また、昨年に比べて選択肢の数が5択以上の問題が多く出題された一方、数値計算が必要な問題は出題されなかった。河合塾 今年も地学基礎の各分野から幅広く出題された。ポンペイの噴火や津波の堆積物など、現実的な地学現象を題材にした問題も出題された。過半数が図や写真を使用した問題だった。選択肢数が増えた問題も多く、昨年より解きにくくなったと思われる。データネット 知識と図表にもとづいて災害について考察する問題が複数出題された。第4問では、自然災害や地球温暖化について時間・空間スケールを問う問題が出題され、津波堆積物や地震災害についても問われた。知識と図表から過去のできごとを推定したり、起こり得ることがらについて考察したりする幅広い問題が出題された。また、6択以上の問題が大幅に増加した。難易は昨年よりやや難化。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して、図表を読み取る問題が大幅に増加した一方で、計算問題が出題されなかった。第1問の出題内容は全分野からの総合問題となった。昨年に比べ図表の読み取り問題が大幅に増加した。第1問で地球分野が1題減少した一方、宇宙分野が1題増加し計4題となった。また、中学理科で学ぶ天の川銀河の構造について1題出題された。物理東進 大問4題構成で昨年から変化なし。設問数とマーク数は増加した。昨年の共通テストと同じく大問数4題の出題。第1問は小問集合であり、力学、熱力学、電磁気学、原子物理の分野から出題された。第2問の出題分野は力学、第3問Aは熱力学、第3問Bは波動、第4問は電磁気であり、第1問から第4問のすべての問題が必答問題である。全体として、物理の全範囲から広く出題されている。グラフの読み取りなど実験を背景にしている問題が多い。厳密に考えると難しい現象を題材としているが、もともとの解答選択肢の数が少ないことに加えて、明らかに誤った選択肢を消去することで救われる可能性も高い。問題によっては問題文をほとんど読まなくても解答できるような作りになっている。分量は制限時間に対してちょうどよいものであり、例年に比べればやや少ない。河合塾 第2問の単振り子の周期をレーザー光とオシロスコープを用いて測定する実験問題では、誤差についても問われるなど、実験に関する理解が求められた。一方、昨年と比べて資料について分析する力を問うような問題は減少し、分野をまたいだ融合問題も出題されなかった。分量は昨年に比べ増加し、全分野から出題され、原子は小問集合で出題された。全範囲を偏りなく学習する必要がある。データネット 単振り子の周期を精度よく測定する探究活動に関する問題や、薄い媒質を伝わる振幅が異なる二つの正弦波の重ね合わせに関する問題など、思考力を要する問題が出題された。原子分野からは、電子線によるブラッグの条件を用いる問題が出題された。難易は昨年並。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して、大問をAとBに分けての出題が復活するなど分量が増えている。考察力を試す出題が多いのは昨年同様。まず、昨年度と比べて読むべき文章量や設問数が増えたのが目を引く。また、昨年同様、実験および実験データの分析など、探究活動を意識したと思われる出題が目立った。図およびグラフ選択の問が昨年の1から6に増えているのも、実験結果の分析を意識したものと思われる。化学東進 昨年から大きな変化はなし。新課程から導入の反応エンタルピーに関する問題が出題された。大問数は5題で変化なく、設問数は19から20に増加、マーク数は31から34に増加した。なお、新課程履修者は第1~5問が必答、旧課程履修者は第1~4問が必答で、第5問と第6問からいずれか1題を選ぶ形式であった。第1問では、逆浸透によって海水から淡水を得る方法に関する問題が出題された。第5問は原油の分留、原油に含まれる化合物に関する問題であり、新課程から導入された反応エンタルピーに関する問題も出題された。全体を通して、知識問題と思考問題がバランスよく出題された。河合塾 化学の全範囲から満遍なく出題された。海水からの塩化ナトリウムや淡水の製造、化学発光、昆布や地下水からのヨウ素の製造、原油の分留と利用、高分子の合成など、人間活動と関連する題材の問題が多くみられた。問題文やグラフ・図から必要な情報を読み取り、解答に至る手順を設定しながら原理・法則を当てはめて計算したり、適切なグラフを判断したりするなど、思考力が重視された。データネット 問題文が長く読解力を要し、与えられた条件から段階的に考える問題が増加した。グラフを利用した問題数は減少し、計算問題の数は増加した。今年は、計算結果の値を直接マークする問題が出題された。重油中のバナジウムを題材とし、有機反応や熱化学、成分量を問う問題が目新しい。昨年より難化。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して、思考力、計算力を問う設問が増加した一方で、知識問題は標準的なものが多かった。全大問を通じて、見慣れない反応や、ややひねりのある計算問題が出題されたが、それ以外の知識問題は標準的であった。第5問(または第6問)は昨年よりも広範囲の分野にわたっての出題であった。生物東進 大問数が5題に減少したが、難しめの実験考察問題が増加したため、やや難化。大問数が2024年度の6題から5題に減少した。分量は昨年と同様に28ページであった。設問数は19問(マーク数25)であり、2024年度の20問(マーク数26)より設問数が1つ減少、マーク数も1つ減少した。2024年度に比べて大問当たりの分量が多くなった。また、知識問題が減少して実験考察問題が増加したため、解く時間が長くなり、難しめの考察問題が増加したことから、全体としてやや難化した。河合塾 新課程になったが、問題の傾向は大きく変わらなかった。大問数が6題から1題減少して5題になり、小問数、問題ページ数、マーク数もやや減少した。知識問題の割合が減り、考察問題の割合が増えた。第1問は神経、進化、遺伝子など複数の分野にまたがって出題された。第4問に示された実験は、教科書の知識に基づいて考えれば、比較的容易に理解することができたであろう。データネット 昨年よりも大問数が1問減り、5大問必答となった。基本的知識を問う設問と与えられた情報をふまえて初見の実験について考察する設問とがバランス良く出題された。考察問題の難易度は昨年と同様であったが、読み取る情報量が減少し、昨年より易化。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して大問が減少。文章や資料の解析などが分野横断的に出題され、知識や読解力、思考力が総合的に試された。知識問題や実験考察、資料解析などの読解問題がバランス良く出題され、総合的な理解度を試す内容であった。目新しい形式の出題はみられず、落ち着いて取り組めただろう。地学東進 第1問は「地学現象の測定・観測とその機器」について出題された。設問数は1問増加。大問数・マーク数に変更はなかった。全体的に大きな変更はないが、新課程で重視される図・グラフの分析というテーマがはっきりした出題であった。一見知識を問うている問題に見えても、その背後の自然現象を理解することが要求される問題が目立った。河合塾 大問は5題、マーク数は27で昨年と同じであった。第1問は例年同様、1つのテーマに沿った総合問題で、さまざまな地学現象の測定・観測についての考察問題が出題された。全体的に、図やグラフを読み取る問題が中心であった。昨年、一昨年と比較すると、知識のみで解ける問題がやや増加したが、詳細な知識を要求される問題は少なく、全体として解きやすかった。データネット 第1問では地学における測定方法や観測機器について、昨年と同様に分野横断形式で出題された。第2問では地震波の伝わり方についてのやや複雑な計算問題が出された。第4問では旅行を題材とした気象・海洋についての知識が問われた。全体的に正確な知識と深い理解が必要な問題が多く、昨年よりやや難化。代ゼミ 昨年度共通テストと比較して、図表問題が減少した一方で、説明文や会話文を用いた空欄補充問題が増加した。図表の読み取りを要する設問が全体の半分程度まで減少した一方で、説明文や会話文を用いた空欄補充問題が全体の3分の1を占めるまでに増加した。設問で要求される知識は基本的なものが大半だが、細かい知識や高度な思考力が要求される問題も一部見られた。 情報は、1月19日午後6時時点のもの。今後、各予備校のWebサイト上で情報が追加修正されることもある。 リセマムで公開している1日目の問題分析、難易度、解答速報に関する記事は下記のとおり。<1日目>>> 4予備校の【地理歴史・公民の問題分析】はこちら>> 4予備校の【国語の問題分析】はこちら>> 4予備校の【英語の問題分析】はこちら>> 1日目の【難易度分析】はこちら>> 1日目の試験【問題・解答】はこちら大学入学共通テスト2025 特集大学受験2025 特集