
ヨーグルトは入っている菌の種類によって選ぶ人も多いのではないでしょうか。腸活のためにいろいろな菌を取り入れたいものの、実際にどういった機能を持って体に影響を与えるのか見極めが難しいですよね。そこで今回は近年老化に対する目覚ましい研究結果が出ているビフィズス菌に注目。日々ビフィズス菌を研究している森永乳業株式会社 バイオティクス研究所の小田巻俊孝さんにお話を伺いました。
▶乳酸菌の1000倍!?実は「乳酸菌の1000倍」も存在する!意外と知らない、大腸を守るビフィズス菌の役割
――そもそもビフィズス菌とはどんな菌なのでしょうか。乳酸菌との違いも教えてください。
ビフィズス菌は現在まで100種類以上発見されていますが、人間の腸内にすむビフィズス菌と人間以外にすむビフィズス菌では基本的に種類が異なります。人間のビフィズス菌は少なくとも1500万年以上進化してきた可能性や乳幼児だけでなく成人にも生息するため、ビフィズス菌が老化にどのように影響するのかという研究成果も近年は注目されるようになってきました。
ビフィズス菌も乳酸菌もどちらも善玉菌です。ただ乳酸菌は分類学上、一つの菌として存在しているわけではなく、代謝産物として乳酸を作る細菌の総称です。乳酸菌は糖を分解して乳酸を作る菌で、小腸や口腔、発酵食品のほか、大腸にもすんでいます。一方、大腸内ではビフィズス菌の数が乳酸菌の約1,000倍とされています。ビフィズス菌が大腸の中で作り出す乳酸と酢酸によって腸内が酸性に保たれ、悪玉菌などが増えにくい腸内環境を作ります。
▶加齢とともに減少、炎症の原因に乳幼児期に非常に多いビフィズス菌。加齢により「減る」とどうなるのか
――ビフィズス菌の入った食品を食べるように推奨されるのはなぜでしょうか。
ビフィズス菌は乳児期の腸内に非常に多く、成長とともに腸内細菌に占める割合が低下していくからです。そもそも乳児期の赤ちゃんはビフィズス菌が腸内細菌の大部分を占め、特に母乳で育つ赤ちゃんでは、腸内細菌に占めるビフィズス菌の割合が8割程度に達することも。まだ腸内細菌叢が発達途中にある赤ちゃんにとって、ビフィズス菌は病原菌など好ましくない菌が増殖しにくい健やかな腸内環境を保つうえで重要な存在なんです。ちなみに乳児期の腸内にビフィズス菌が多いほど、ワクチン接種後の抗体価が高い傾向にあることも研究で報告されています。
――乳幼児期に持っていたビフィズス菌が加齢によって減少することについてもう少し詳しく教えてください。
腸内にいるビフィズス菌の種類(菌種)や構成比が次第に入れ替わっていくイメージです。母乳には、赤ちゃん自身ではほとんど消化できない「ヒトミルクオリゴ糖(HMO)」が含まれています。一方、乳児期に多いビフィズス菌はHMOを利用して増え、乳酸や酢酸を作ることで、病原菌などが増えにくい腸内環境を作ります。やがて離乳食が始まると、さまざまな栄養素を利用する腸内細菌が増え、乳児期に多かったビフィズス菌が減り、成人の腸内環境に適した菌種へと構成が変化。同時にほかの腸内細菌も増え、腸内細菌叢全体が多様化していきます。
一方、加齢とともにビフィズス菌は減少する傾向があり、腸内細菌のバランスも崩れやすくなります。ビフィズス菌の減少は、好ましくない菌の増加や炎症とも関連する可能性があります。そのため高齢期では、ビフィズス菌を補うことで腸内環境を良好に保ち、加齢に伴う腸内環境の変化に働きかけられる可能性が研究されています。つまり、赤ちゃんでは「未成熟な免疫系の過剰反応を抑える」、高齢者では「崩れやすくなった腸内環境を支える」というように、ビフィズス菌の果たす意味は年代によって異なる可能性も示唆されています。
▶老化スピードが低下した菌とは日本初の事例。「ビフィズス菌BB536」で老化スピードが低下!?驚きの結果とは
――なぜ最近、ビフィズス菌が老化研究において注目されているのでしょうか。
森永の臨床試験によって「ビフィズス菌BB536」を配合したプレーンヨーグルトの摂取と食事や運動習慣改善によって老化速度が減速する可能性が確認できたからです。食品介入による老化に関する臨床試験で老化速度の抑制が示されたのは日本で初めての事例です。加齢は暦年齢の変化なので誰でも同じ速度ですが、一方、老化の進み方には個人差があります。その生物学的な老化の程度を捉える指標の一つが、DNAメチル化の状態から算出されるエピゲノム年齢です。そこに食品が寄与できるのではないかという大きな希望となる臨床試験結果でした。
――臨床試験について詳しく教えてください。
臨床試験ではBMIが25以上の50歳から74歳の男性を対象に、12週間、普段通りの生活を継続するグループと「ビフィズス菌BB536」を配合したヨーグルトを1日100g摂取したグループに分け、そのほか運動、食事の指導も行いました。12週間後にDNAメチル化に基づく老化関連指標を評価したところ、普段通りの生活のグループと比較し、ヨーグルトの摂取と生活習慣改善に取り組んだグループでは老化速度が2.3%も低下しました。最大9.8%も減少した人も。老化速度と運動や食事などの生活習慣との明確な関連性は認められませんでした。
――今まで世界的にも老化速度に関する研究はなかったのでしょうか。
DNAのメチル化を測定することで老化速度に影響を与えるものの研究は世界各国で行われている。たとえばアメリカと日本の観察研究では、身体活動や心肺機能が高い人ほど老化速度が遅いとわかりました。また25%のカロリー制限を2年間行うことで老化速度が約2~3%低下するという海外の研究事例もあります。
しかしプロバイオティクスをはじめ、日本人を対象とした食事・栄養・サプリメント介入による研究報告はありませんでした。今回の結果を受け、ビフィズス菌が2023年に「Hallmarks of Aging(老化の特徴)」として整理された12の生物学的な特徴のいずれかに働きかけることで、老化の進行に影響を与えているのではないか、という仮説を立てています。今後もビフィズス菌のさまざまな可能性や老化進行との密接な関係性は研究の余地が多分にあるので、開発研究に取り組んでいきたいと思います。
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