
厚生労働省による2026年7月24日の発表によると、日本人女性の平均寿命は87.33歳で8年連続過去最長を更新。日本人男性の平均寿命も9年連続過去最長を更新したものの、81.35歳と依然として男女で約7歳もの差が出る結果となりました。なぜ日本人女性はここまで平均寿命が長いのか、いつまでも若々しくいるためには何が必要なのか。京都府立医科大学大学院医学研究科 教授の内藤裕二先生に詳しくお話をお聞きしました。
【こちらも読まれています】◀◀大腸がんは内臓脂肪の老化から始まる!?すべての病気の原因「老化」の速度を遅らせる最新医学とは【京都府立医大・内藤先生が解説】
▶日本人女性が長生きである納得の理由男性より約7歳も長生き!女性の平均寿命が世界トップクラスである理由は
――そもそもなぜ日本人は男性よりも女性のほうがこんなに長生きなのでしょうか。
私は圧倒的なコミュニケーション能力や生きがいが要因だと思っています。独身でも既婚でもうまく自分の今の環境に対応する能力が非常に高く、社会的に孤立しにくい。これは日本人に限らず、東アジアの女性に共通する特徴だと思っています。シニア女性って何歳になっても友達と旅行やランチを楽しんで、近所の人と井戸端会議をしていますよね。あれは男性の私からすると羨ましい(笑)。
一方で男性は仕事以外のコミュニティがないので、退職すると家に引きこもって、さらに奥さんに先立たれたり離婚したりすると、社会的に孤立する。孤独になると鬱傾向が高まって認知機能が低下することは研究結果でも明らかになっています。やはり若い頃から生きがいや生きる目的、楽しみがあるかどうか、社会的に幸せなのかというウェルビーイングの視点は長寿の秘訣なのではないかと考えています。
――今の高齢者は戦後の苦境を乗り越えた世代なのでそもそも心身ともに強い一方で、それより下の世代は高ストレスや食生活の変化から今の高齢者ほど長生きしないのではないでしょうか。
今は女性で言えば日本人が平均寿命世界一ですが、数年後にはスペインに世界一は抜かれるでしょう。近年の研究では地中海の食生活は肉より魚が多く、野菜やナッツ、豆、全粒粉、オリーブオイルなど善玉菌のエサになる栄養素が多く、腸内環境の多様性を高めることが注目されています。私の見立てでは日本人は男女ともに平均寿命は今が高止まりをしていると思います。今後、数年は男女ともに微々たる更新をしていき、女性は90歳くらいまではいくとは思いますが、平均寿命が100歳という未来は考えにくいですね。
また今の高齢者に関しても日本人女性の長寿には課題があって、健康寿命と平均寿命の差は女性のほうが圧倒的に大きいんです。つまり健康的に体も頭も動いて長生きする人も多いけれども、寝たきりになったまま長生きする女性も多い。これは今後も最新の老化研究で克服していくべき課題ではないかと思います。
▶抗老化に必要なのは「見た目だけのアンチエイジング」ではない40・50代女性は2人に1人が90歳を超える?大事なのは「見た目だけのアンチエイジング」ではなく
――オトナサローネ読者の40~50代女性については今の高齢者のように長生きすると思いますか?
そうですね、だいたい2人に1人の割合で90歳を超えていくと思います。そうなると女性の40代から50代ってまだまだ人生の半分なんですよ。ですからオトナサローネ読者の世代の方々は、80歳くらいまでは働くと思います。昔の人が作った人生設計は成立しないと捉えたほうがいい。これからの人の長生きの話で言うと、やはりただ長生きするのではなく健康寿命を延ばすことで長く働いて社会に貢献し、お金の投資をし、若い人の世話にならなくて済むシステムにさらに移行していくでしょう。
――体の健康や長寿はもちろん、若く美しい見た目を維持したいオトナサローネ読者は多いです。若く見える人と老けて見える人の違いについて先生はどうお考えですか?
たくさんの若々しい方とお会いしますが、やはり見栄え目的のためだけにアンチエイジングを続けるのは限界があるように思います。若々しく長生きして何がしたいのか、信念を持って、自分に合ったアンチエイジングを継続することが重要でしょう。しっかりと生きがいがあるから健康管理をするからこそ、結果として若々しくいられているなという印象です。やっぱりただ単に『若く見せたい』、『異性にモテたい』という気持ちでアンチエイジングをしても心が伴っていないのでうまくいかないのでしょうね。
私の研究でも前向きに仕事や人生に向き合っていたり友達やコミュニティで社会コミュニケーションを取ったりしている人は生きがいスコアが高く、これが健康寿命や若々しさに深く繋がっていることがわかりました。生きがいがないと人はどんどん死んでいく。生きがいがあるから自分の食事や生活習慣を考えていいほうに向かっていく。『この食べ物だけ食べればいい』、『綺麗になるために』というアンチエイジングではなく、生きがいを持って自分の人生を考えて食べ物や運動を考えるから継続できるのかなと思います。
▶恐怖!肥満は体に記憶される「一度太ると脂肪が記憶する?」肥満のメモリーの恐ろしさ。若さのためには太らないことが大事
――健康寿命のためには痩せすぎず、太り過ぎないことも大事かなと思いますがいかがでしょう。
「やっぱり肥満はNGです。肥満になると糖尿病や心筋梗塞などさまざまな病気のリスクが高まり、老化を早めます。また肥満の恐ろしさは、人生で一番太っていたときの肥満の記憶が残ることなんです。太っていたときの脂肪細胞は痩せてからも残り続けるからまた太ってしまう。だから太らないことは大事でしょうね。ただ痩せすぎもダメ。痩せすぎるとまず骨がスカスカになって弱りますから。
運動習慣に関しては激しすぎる運動はハイリスクですね。軽量や増量を求められるスポーツだと太りすぎや痩せすぎで体に負担が大きいですし、接触が多いコンタクトスポーツは脳への衝撃が強いので死亡リスクも高まります。
――他に若さのために必要なことは何でしょうか。
「長年長寿研究をしている京丹後地域の高齢者を見ても、やはり昔ながらの日本人の食生活を続けています。彼らは肉ではなく魚を食べて悪玉菌をなるべく増やさない、大豆で植物性タンパク質を、野菜や海藻など食物繊維をたくさん摂っています。近年注目されている地中海食を見ても、やはり肉よりも魚がメインなのでそもそも肉は食べ過ぎないほうがいいのかもしれません。
もともと日本人は魚と大豆、穀物で良質なタンパク質を摂っていたわけですが、近年は手軽に安く肉や加工肉が手に入るようになったのでタンパク質源が入れ替わってしまった。日本人女性の死因第1位の大腸がんも食の欧米化が指摘されています。あとはアルコールを摂り過ぎると大腸菌などの悪玉菌を増やすという研究結果もあるので、老けたくないならお酒の飲みすぎも避けたほうがいいですね。
内藤 裕二先生
京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体免疫栄養学講座教授
1983 年京都府立医科大学卒業、2001 年米国ルイジアナ州立大学医学部客員教授、09 年京都府立医科大学(消化器内 科学)准教授などを経て 21 年から現職。日本酸化ストレス学会副理事長、日本消化器免疫学会理事、日本抗加齢医学会理事、2025 年大阪・関西万博大阪パビリオンアドバイザー。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢学、腸内細菌叢。著書に「消化管(おなか)は泣いています」、「健康の土台をつくる腸内細菌の科学」など多数。京都府立医科大学における京丹後コホート研究の腸内細菌叢研究を担当。




