全国学校図書館協議会と毎日新聞社は、「第72回青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書を発表した。2026年の夏休みに向け、小学校低学年から高校までの5部門で計18冊を選定。物語作品に加え、科学や社会、平和など多様なテーマを扱う作品がそろった。 青少年読書感想文全国コンクールは、全国の小学生・中学生・高校生を対象に毎年実施されている読書推進事業。読書を通じて感じたことや考えたことを文章に表現する機会として、夏休みの定番コンクールとなっている。作品は在籍校を通して提出することとなっており、地方審査を経て中央審査会へと進み、段階的に審査が行われるため、締切りは都道府県により異なる。 今年の課題図書も、さまざまなテーマを取り上げたバリエーションに富んだラインアップとなっている。そこで2026年度の課題図書を、小学校低学年、小学校中学年、小学校高学年、中学校、高校の区分ごとに紹介する。選定理由は、第72回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」選定委員会の報告をもとにしている。一足早く課題図書をチェックし、充実した夏休みの計画の第一歩としてみてはいかがだろう。<目次>・小学校低学年(1・2年生)・小学校中学年(3・4年生)・小学校高学年(5・6年生)・中学校・高等学校小学校低学年(1・2年生)の部まこちゃんとコトバロボ【選定理由】 子供たちの身近な「宿題」をロボットにさせてしまう、といういまどきなテーマの1冊。子供たちの身近になりつつあるAIのことも考えることができる。【書籍情報】出版社:佼成出版社作:村上しいこ絵:たんじあきこ価格:1,540円(税込)あらすじ:宿題もドリルもやりたくないまこちゃんの前に現れたのは、国語のことなら何でも教えてくれる「コトバロボ」。全部おまかせらくちん!だけど、本当にこれでいいのかな?なにかいいことあった?【選定理由】 きれいな絵、丁寧なコラージュなど、じっくりと絵を楽しめる作品。主人公の男の子と祖父の関係性の描かれ方がほほえましく、児童が自分も含め、まわりの「なにかいいこと」をさがしたくなる。【書籍情報】出版社:BL出版作:ミーシャ・アーチャー訳:石津ちひろ価格:1,870円(税込)あらすじ:ダニエルと出会った鳥やオタマジャクシやリスたちが教えてくれる、それぞれの「いいこと」。「いいこと」は私たちの何気ない毎日のなかにたくさんあるよ、と気付かせてくれるすてきなお話。ララのまほうのことば【選定理由】 色の使い方がよく考えられている絵本。太陽の色と主人公の女の子の生命力の表現などに、ひきこまれる。絵に力や夢が感じられ、主人公の成長と子供の力・希望が見られ、読んでいて楽しい。【書籍情報】出版社:工学図書作:グレーシー・ジャン訳:やのあやこ価格:1,980円(税込)あらすじ:いつも元気でどろんこのララに、お母さんはちょっとイライラ。とうとう、外に出かけちゃだめと言われてしまう。でも、ララが心をこめておともだちに呼びかけると…。やさしい言葉が世界を生き生きと育むお話。たねはいのちのおわりとはじまり【選定理由】 写真がとてもきれいで、使用されているさまざまな写真に引きつけられる絵本。どの種を植えようか、という興味・関心、種のはじまりとおわりを想像するなど、考える読書を促すところが選書のポイント。【書籍情報】出版社:ブロンズ新社著:鈴木純価格:1,540円(税込)あらすじ:小さなたねから芽ばえ、花が咲いて枯れたあとに、またたねになって命をつなぐ。たねを観察すると秘密が見えてくる。64種類のたねや芽ばえのふしぎを写真で紹介する、植物観察って面白い!を詰め込んだ1冊。小学校中学年(3・4年生)の部まだまだここから【選定理由】 落胆や嫉妬といった小学4年生の主人公の心情が丁寧に描かれており、失意の中で前に進もうとする心の動きが伝わってくる。チームメイトの個性も丁寧に描かれ、それぞれの成長も読み取れる。【書籍情報】出版社:ポプラ社作:宇佐美牧子絵:酒井以価格:1,540円(税込)あらすじ:主人公・蓮がつかんだスイミングの特訓生になるチャンス。でも選ばれたのは弟の方で…。ぼくのがんばりは「むだ」だったのかな?「がんばった」ことの先にある本当の意味とは。コツコツがんばっているきみへおくる物語。それからぼくはひとりで歩く【選定理由】 困難に前向きに向き合い、成長する姿を描き、障害への理解や挑戦の大切さを伝える。時系列で示される日常生活はイメージしやすく、舞台であるメキシコから異文化にも触れられる作品。【書籍情報】出版社:ほるぷ出版作:アリシア・モリーナ訳:星野由美絵:犬吠徒歩価格:1,595円(税込)あらすじ:ある放課後、はじめてひとりでバスに乗ることになってしまった、目の見えないハイメ。はじめての経験にともなう失敗や喜び、秘密…11歳の、ささやかで大きな冒険の1日。おいしいお米をつくりたい!:ゆうちゃん、小学生で農家に弟子入りしました【選定理由】 主人公が、子供たちと同世代で親しみやすい。大きめの写真と適宜入るコラムとともに、米作りに関する情報も得られ、読者がさまざまな気付きを得られる。【書籍情報】出版社:汐文社著:谷本雄治価格:1,980円(税込)あらすじ:農家の中井さんがつくるお米が大好きなゆうちゃん。小学2年生で弟子入りし、田んぼで米づくりを始める。ひりょうをつくり、なえを育て、田植え、草とり、虫たいじ。米づくりってたいへん…でも、おもしろい!おいしいお米、とれるかな?宇宙でウンチ:みんなの知らない宇宙トイレのひみつ【選定理由】 巻末資料まで読むことで、内容が理解でき、深めることができる構成。類書がなく、独特でユニークな絵とタイトルだが、内容はふざけずに科学的。探究する児童も出てくるような内容。【書籍情報】出版社:あすなろ書房作:A・ボンドー=ストーン、C・ホワイト絵:L・ケンセス訳:千葉茂樹価格:1,650円(税込)あらすじ:宇宙飛行士は、どうやって「ウンチ」をするの? 無重力だと浮いちゃうし…。宇宙開発に残る「トイレ」という大きな問題。NASAも開発を続ける、宇宙トイレの秘密にせまる科学絵本。小学校高学年(5・6年生)の部ポジション!【選定理由】 構成に工夫があり、バスケの練習や試合を通した主人公たちの成長が描かれる。切磋琢磨しながら望むポジション確保のため、自分の役割を考え、改善し協力する過程が丁寧に描写されている。【書籍情報】出版社:岩崎書店作:高田由紀子価格:1,650円(税込)あらすじ:運動は苦手なのに背が高いだけでミニバスのメンバーになった芽吹。挫折し自信を失う中、車いすバスケで努力するルイの姿に触発される。仲間とぶつかりながら、自分の居場所を見出していく熱い成長物語。リヒト!【選定理由】 高学年児童の目線で出来事が描かれ、主人公の心情の変化と成長が人間関係を通して丁寧に表現されている。読者が登場人物に共感し、各々の思いを感想文に綴ることができる1冊。【書籍情報】出版社:文研出版作:イノウエミホコ価格:1,650円(税込)あらすじ:「理人、最後に伝えておきます」。祖母の節さんがぼくに託した、中身のわからない封筒。 節さんが伝えたかったことは何? そもそも節さんって…? 疑問を抱えながら、ぼくは「苦手なあいつ」とドイツへ向かうことになった。ミシュカ【選定理由】 穏やかで楽しい家族の暮らしが描かれるが、心に抱える多くの悲しみが静かに伝わる文章。丁寧な叙述から、国を追われるという苦難を背負う人々が世界にいることに気付かせてくれる作品。【書籍情報】出版社:静山社作:エドワルト・ファン・デ・フェンデル、アヌッシュ・エルマン絵:アネット・スカープ訳:野坂悦子価格:1,815円(税込)あらすじ:「わたしの名前はロヤで、9歳だよ。生まれたのはアフガニスタン」。ロヤはウサギのミシュカに語りかける。聞いてほしかったのは、知ってほしかったのは、国を追われたロヤたちの、長い長い旅のお話。難民になった女の子が新しい国で見つけた、ウサギと家族の愛の物語。キミの一歩アフリカ:ゾウを食べるにはひと口ずつ【選定理由】 小学生にわかりやすい文体と豊富な写真でまとめられ、比較や共感を通して考えを深められる。アフリカの子供たちの状況や願いから、世界の人々の生き方や考え方へ考えを広げられる。【書籍情報】出版社:あかね書房文:味田村太郎価格:1,980円(税込)あらすじ:砂漠化による食糧不足や貧困、環境破壊や治安悪化…。アフリカ各国における社会問題を背景に、チェスやボクシングなど、夢を抱いて力強く生きるアフリカの子供たちの姿を描いた1冊!中学校の部君の火がゆらめいている【選定理由】 「きょうだい児」という立場を想像しながら多様に読め、「正しく知ってほしい」という著者の思いが取材に基づき描かれている。考える一歩、理解という支援を広げるという点が評価された物語。【書籍情報】出版社:講談社作:落合由佳価格:1,650円(税込)あらすじ:障害のある双子の姉のことを大切に思い、彼女の生活を手伝う毎日を送る葉澄。困っていたら助けるのは当たり前。でも、本当にそうなの?いつもわたしが、我慢しなくちゃいけないの?障害や重い病気のある兄弟・姉妹がいる子供「きょうだい児」の葛藤を描く感動作。チーム・テスならだいじょうぶ【選定理由】 悩みを抱える主人公テスが、新しい環境に前向きになじむ姿に中学生らしさがあり、共感できる。父の死や病を経て立ち直る過程と結末が、中学生に大人への一歩を促す。【書籍情報】出版社:鈴木出版作:カービー・ラーソン&クイン・ワイアット訳:杉田七重価格:1,870円(税込)あらすじ:チーム・テスとは、主人公テスを支える応援団のこと。焼き菓子コンテストに挑戦する中2のテスをバックアップしながら、まだ完治困難とされるクローン病を発症したテスに寄り添う。厚い友情と希望を描く青春ストーリー。リュウグウの砂に挑む:チームで小惑星のサンプルを分析【選定理由】 大きな文字と平易な表現で読みやすい。専門用語も理解しやすく、「リュウグウの砂」への理解が深まる。準備や失敗の大切さ、諦めない姿勢など生き方への示唆や気付きの多い読後が評価され選ばれた1冊。【書籍情報】出版社:くもん出版著:伊藤元雄価格:1,760円(税込)あらすじ:小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウから採取した砂を地球へ持ち帰った。さまざまな分野の研究者たちが砂の分析に挑み、ついに重要な手がかりとなる「生命のゆりかご」を発見した。高等学校の部スウィッシュ!【選定理由】 高校女子バスケ部を舞台に、正反対のタイプの主人公とエースの友情を描いた作品。スポーツドクターの父との関係や、医学的視点の描写も物語に広がりを与えており、多様な感想文が考えられる。【書籍情報】出版社:徳間書店著:藤ノ木優価格:1,980円(税込)あらすじ:人生を変えてくれた親友と、もう一度同じコートに…。怪我をしたチームメイトを治すため、愛奈が頼ったのは仲違いしていたスポーツドクターの父だった。高校生最後の大会であふれた友情と家族愛が心に響く、青春バスケ小説。ノアハム・ガーデンズの家【選定理由】 不遇な生い立ちの主人公が明るく生きる姿が評価された1冊。パプアニューギニア先住民への関心から異世界へと展開するストーリー、文明による文化破壊への問題提起も含め、多様な意見が期待できる。【書籍情報】出版社:ゴブリン書房著:ペネロピ・ライヴリー訳:斎藤倫子価格:1,980円(税込)あらすじ:1970年代のオックスフォード。古い家に大おばと暮らすクレアは、物置で人類学者の曽祖父がニューギニアから持ち帰った楯を見つけて以来、奇妙な夢を見るようになる。文明と文化、場所や物にまつわる記憶、若さと老いについて…読み手に深く考え、感じさせる物語。平和のうぶごえ:「原爆の子」として生きた80年【選定理由】 世界中で読み継がれる、広島の被爆少年少女の体験手記「原爆の子」。被爆者である著者の体験と半生、また「原爆の子」執筆者の手記も収められた、戦後80年を過ぎた今、高校生に響く1冊。平和についてさまざまな意見を読書感想文にしてほしい。【書籍情報】出版社:毎日新聞出版著:早志百合子価格:2,420円(税込)あらすじ:6歳で被爆、家は焼け、土手で掘っ立て小屋暮らし。原爆症、トラウマ、差別…戦後80年が過ぎても被爆者の厳しい人生は続く。それでも決して平和を諦めない「原爆の子」たちから現代の若者へ送る、生きるためのエール。