
今年還暦を迎えた植物療法士の森田敦子さん。常々思います、森田さんを表現するための新しい言葉が必要だと。「若々しい」という言葉ではまったく足りない、その髪も肌も姿も声も考えも行動も気持ちもすべてが常に「新鮮な」存在。しかし同時に円熟も迎えようとしている豊かな女性、それが森田さんです。
「これから更年期を迎える女性に向けて助言をお願いします」とお願いしてみたところ……前編記事『「更年期を怖がらなくていい、絶対に大丈夫だから」。ただし、とても大事なことがあって……植物療法士・森田敦子さんが教える「更年期じたく」』に続く後編です。
【更年期を助けてくれる人たち名鑑】#4後編
特別なことはしなくていい。先祖が1000年続けてきた食べ方・暮らし方に、まず立ち返ってみてほしい

では具体的に、何をすればいいのでしょうか。森田さんが「イロハのイ」として挙げるのは、意外なほどシンプルな生活習慣です。
「昔の人は生のサラダをメインで食べてこなかった。白いごはんにごまをかけて、お味噌汁は具だくさん、発酵物のお漬物を食べて、そこにお豆腐なんかでたんぱく質をとる。先祖が1000年続けてきた食べ方・暮らし方に戻してあげる。まずはそこに立ち返り、その次に私ならばフィトテラピーという順番です。先に突拍子もないことをしなくていいの」
特に強調するのが「ねばねば食材」の効果です。
「山芋、長芋、納豆、オクラ、ねばねばしたものを食べるだけで粘液ができる多様を高めます。粘液力は免疫力なの。最初に潤いが大事と言いましたが、目・鼻・口・膣、粘液は体の最前線で異物やウイルスをブロックする免疫機構。目がうるうると潤っていたら、その女性は免疫力がめちゃくちゃ高いということです。乾燥するなんてもってのほか、気を配ってあげてほしいです」
眠りについても、寝具に凝るのもいいですが、まずは生活習慣の見直しが先だといいます。
「眠たいなと思ったらメラトニンが出ているサインです。こうしたバイタルサインを無視しないこと。眠たいなと思ったらもう目に光を入れません。昔は夜が暗かった、夜は暗くあるべきものなの。そして朝、すっきりと目覚めたら深呼吸して、1日の中でちゃんと歩く時間をとる。できれば少し体操もしてください、筋肉運動とホルモンの状態をよくします」
こうした日常習慣に加えて、植物療法を組み合わせるのが森田さんのアプローチです。ホルモン変動が激しいプレ更年期から閉経期には「チェストベリー」「メリッサ」「生姜(ジンジャー)」、睡眠には「バレリアン」「パッションフラワー」。よもぎを蒸して粘膜から吸収させる「よもぎサウナ」も中目黒の拠点に導入しています。
「月経痛がある、腰痛がある、疲れやすい、これくらいはケアで緩和されます。さっとケアができたらあとは様子を見る。大切なのは『飲む、塗る、香る、蒸す』この4つ。薬草をどうやって体に効かせるかをちょっと知っておいて、必要なときにだけ使えばいいの」
そもそも更年期はホルモンが激落ちしていく大激動期、それに体が耐えられないし、体をいなす知識もないというのがみんなの不安の原因。森田さんはスクールで解剖学を含めてヘルスリテラシーをしっかり教えますが、生徒さんたちはそれぞれポコポコと「どうすればよいのか」答えが浮かぶようになるそうです。うつだった人も薬をやめられるけれど、でも、何がなくともマイ婦人科を持つことは大事と森田さん。
「毎日の生活の中でやることをやったうえで、フィトテラピーもひとつのツールとして取り入れてほしい。だからマイ婦人科は必ずもっておいてほしいです。40代半ばでいちどは検診を受け、何かあったら相談できるという安心感を持ってください。私は産婦人科医の対馬ルリ子先生が始めた日本女性財団で、日々女性医師たちとコミュニケーションをとっています。治療はどれかひとつではなく、できることを無理なく実践できたらよいですね」
女性は60歳からがスタート、ずっと恋して生きていけるんです。そのために40代50代をしっかり過ごして

森田さんが考える、更年期のあとの生活とはどのようなものなのでしょう。パリの大学では「食欲・睡眠欲・性欲」という三大欲についても徹底して学んだといいます。
「性欲もタブー視せず、生きる上で必要なものとして向き合うことが大事。外陰部のケアを含めたセクシャリティの中で、日本は驚くほど女性のボデイ認識がおざなりになっています。40代からは自分の内側から沸き立つものに正直になっていい。60代からが女性の本番なんですよ、これは12年一緒に暮らしてきた作家の桐島洋子さんも言っていたこと。彼女は80歳からゴールデンエイジと言っていたくらい!」
でも、どんどん老いていく自分に恥ずかしさを感じてしまいます。
「私は更年期を感じなかった、そこに疲れやすさや老化はあったけれど、老化は誰にでもついてきます。43歳で出産した子どもは、私が還暦を迎えてもまだ17歳。50代で育児している最中、昔みたいに徹夜はできなくなったし、子どもと走ったら足がもつれて転ぶしで、本当に老化しているのが如実にわかる。でも、骨と筋肉をフォローしながら日々のケアを徹底していると、ひどいことは起きない。老化に抗うよりはウェルビーイングです。そして自分を愛することと、ケ・セラ・セラ、気にしないこと。よきにはからえ、それでいいんです」
最後に、40代の女性たちへ最も伝えたいメッセージを聞きました。
「日本は女性は若いほうがいいと言いすぎます。40代をどう過ごすかで、50代、60代と女の人生が新しい形で動き始めます。眠りで体を作り直し、骨と筋肉をしっかりとケアする。そんな基本を当たり前のように実践できるか。それだけです」
60代からが本番。恋できるスタンス、夢、好きなこと、親の介護があるかもしれないけど、元気よく生きるための本番が60から。そのために40代をちゃんと使ってほしい。
「しっかり食べて、しっかり眠る。それができていないのに未来を心配ばかりしているのは、体に対して失礼というものでしょう。体が答えてくれる、毎日の生活を整えてあげると心も体もしっかり応えてくれます」
つづき>>>>「更年期を怖がらなくていい、絶対に大丈夫だから」。ただし、とても大事なことがあって……植物療法士・森田敦子さんが教える「更年期じたく」

森田 敦子(もりた・あつこ)
植物療法士、株式会社サンルイ・インターナッショナル代表。フランス国立パリ第13大学医薬学部で植物薬理学を学び、帰国後に植物療法に基づく商品・サービスを社会へ提供するため会社を設立。フランス植物療法普及医学協会(AMPP)アジア唯一の認定校「ルボア フィトテラピースクール」を主宰。2013年にデリケートゾーンケアブランド「アンティーム オーガニック」を立ち上げる。2022年、世界45の国・地域で刊行される女性誌『ELLE』の「100 Women CHANGE MAKERS」に選出。日本女性財団理事。著書に『潤うからだ』『私のからだの物語』(共にワニブックス)など。新刊『みどりの薬箱がひらくケアのかたち: 訪問看護ステーション「ブランマグノリア」が始める新しい看護と介護』(方丈社)が3月4日に発売。




