「外に出られる気がする」引きこもりだった長女が動き始めるまで | NewsCafe

「外に出られる気がする」引きこもりだった長女が動き始めるまで

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「外に出られる気がする」引きこもりだった長女が動き始めるまで

こんにちは。「1人も見捨てない子育て手札の提案者」として年間数百件以上の子育て相談に乗っているきのぴー先生です。児童自立支援施設に併設された小中学校に勤務し、生徒指導主任を務めました。愛情や正論だけではなかなかうまくいかない子どもとの関わり。この連載では、理想論や正論だけでは届かないところにある、泥くさい現場で培ってきた子どもとの関わり方のヒントをお届けしていきます。

【きのぴー先生の子育て手札 #4】

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▶親は「できていない」ことばかりに目がつく

承認

次に大切なのが、承認です。信頼関係をつくるのと同時に、その子の「できていること」「今ある力」に光を当てていきます。ここで多くの親が戸惑います。「できていること」より「できていないこと」が目についてしまうからです。例えば、「学校に行けていない」「生活が乱れている」「言葉が荒い」「親に当たる」など。そういう現実の前では、「褒めるところなんてない」と感じてしまうこともあるでしょう。けれど、承認とは決して「大げさに褒めろ」ということではありません。

・落ち着こうとしている。
・今日は昨日より表情が少しやわらかい。
・暴れずにその場にいられた。

そういう小さな「ある」を見つけていくことです。つまり「今のこの子がどこまでならできそうか」を見極めることです。子どもに必要なのは、できていない現実を突きつけられることではなく、「ここまではできるかもしれない」と感じられる入り口をたくさん「つくっていくこと」です。詳しくはぜひ最下部の私のYouTubeをご覧ください。

一定の枠組みの中の自由と成功
親に、信頼され、認められることで、ようやく子どもは少しずつ動けるようになります。その後に大切なのが、 一定の枠組みの中で自由を保障することです。しかも、その枠組みは、いきなり大きいものである必要はありません。むしろ最初は、「ちょっと頑張ればできそう」 「これならやれそう」と思えるくらいの、小さな枠であることが大切です。

親が間違えやすいのはここです。「早く成長してほしい。このままでは困る」と思うがあまりに、つい大きな枠組みを設定してしまいます。「学校に行く。最後までやり切る。毎日ちゃんと続ける。普通にこなす」、その親としては当然の要求が子どもにとって負担が大きすぎることがあるのです。結果子どもにとっては、圧になり、圧になると人は自分から動けなくなります。だからこそ、最初に設定する枠は小さいほうがおすすめです。

例えば、

・全部やる、ではなく、ここまでならやる。
・最後まで行く、ではなく、まずはここまで行ってみる。
・一人でやる、ではなく。最初の一歩だけ一緒にやってみる。

このくらいの枠組みです。

そして、この小さな枠組みの中で、子どもに自由を渡します。つまり、強制ではなく、自分で選べる余白を残すのです。ここで大切なのは、「やらせること」が目的ではないということです。自由が保障されていること。強制ではないこと。その中で子どもが自発的に動きやすくなる言葉を渡すこと。そして、自分でその枠をクリアできた、という経験を生み出すこと。そこにあります。

この「できた」は、とても重要です。

なぜなら、子どもが本当に必要としているのは、正論でも説得でもなく、「自分で動けた」「自分にもできた」という身体感覚だからです。自分で選んで、自分で動いて、できた。その経験であることに意味があります。

▶そして最後に親がすべきことは

困難な課題への挑戦

そして4つ目が、課題への挑戦です。

学校に戻る。集団に入る。進路を考える。社会に出る。多くの親が最初に求めてしまうのは、実はここです。けれど、本来ここは最後の段階です。信頼も承認も成功体験もないまま、いきなり「行きなさい」「頑張りなさい」「普通にしなさい」と言われても、子どもは動けません。動けないどころか、自分には無理だ、どうせわかってもらえない、という感覚だけが強くなることがあります。

しかし、そうはわかっていても色々言いたくなるのが私たち大人です。だから私はこの「成長の順番」を単なる知識ではなく、技術だと考えています。なぜなら、知っているだけでは使えないからです。頭ではわかるのです。「まず信頼が先なんだよな」「ここで正論を入れても意味がないんだよな」ただ、言うは易し、現場では焦りが生まれます。

子どもが泣き叫ぶ。学校に行けない。将来が不安になる。周囲の目も気になる。そうすると親の中に、自分の主張や押しつけや焦りが必ず出てきます。この順番を「知っている」ことと、「その場で思い出して対応できる」ことの間には、大きな距離があります。

だから技術と呼んでいます。大変難しい話をしていることは重々承知です。けれど本当に困ってどうしようもない方へ、少しでも手札の一枚として届けられれば幸いです。

▶「引きこもり」だった長女が食事を一緒にとれるように

自室から出てきて食事を一緒にとれるように。Aさんと長女に起きた変化とは

これまでAさんは、「どうすれば良くなるか」をずっと考えてきました。学校に行けるようになること。社会に出られるようになること。親として当然の願いです。けれど、「成長の順番」という考え方を知ってから、Aさんは関わり方を少しだけ変えてみることにしました。最初に意識したのは、「まず信頼から」ということでした。

長女が落ち込んでいるとき、以前なら「大丈夫」「またやり直せるよ」と励まそうとしていたそうです。しかし、その日からAさんが口にしたのは、まったく違う言葉でした。「つらいんだね」それだけにとどめるようにしたそうです。正解を教えようとするのではなく、まず受け止める。すると長女は、少しだけ話し始めたといいます。劇的な変化ではありません。けれど、それまでより会話が続くようになりました。

Aさんはそのとき、はじめて気づいたそうです。「私はずっと、この子を無理やり前に進ませようとしていたんだ」と。

その後、Aさんはもう一つのことを意識するようになります。大きな課題を一度に求めないこと。代わりに「ちょっと頑張ればできそうなこと」を探すようにしました。

例えば、長女が外出することを嫌がるとき、以前なら「少しでも外に出ないと」と言っていたそうです。

その日からこのように声をかけ続けたそうです。「大丈夫。まずはいつかご飯を一緒に食べられたら嬉しいよ」と。ご飯は自室に引きこもって食べていたので、このように新しい枠を設けたのです。強制の空気を漂わせないように。すると長女は1週間後から、リビングに出て一緒に食事をとるようになったそうです。外から見れば、小さな出来事かもしれません。けれど、本人が自分で選び、動き、枠をクリアした。その視点を、Aさんは少しずつ理解していきました。もちろん、順調な日ばかりではありませんでした。調子が良い日もあれば、また落ち込む日もある。

以前のAさんなら、その揺れを見るたびに不安になっていたそうです。「このままで大丈夫なのかな」と。それでも、Aさんは思い出すようにしていました。

成長には順番がある。

今は、信頼を作る段階なのかもしれない。今は、承認の段階なのかもしれない。そう考えると、関わり方も少し変わってきました。長女が落ち込んでいるとき、Aさんはただそばにいることも増えました。そして、ほんの小さな変化を見つけたときに言葉をかけるようにしたそうです。「さっきより顔が楽そうだね」「今日は少し話せたね」すると長女の表情が、少しずつ変わっていき、ある日、こう言ったそうです。

▶「成長の順番」を実践。長女が放ったひと言は

「前より、話すのが楽になった。外に出られる気がする」

そして現在、長女は就労継続支援のサービスを受けながら生活ができるようになりました。まだ課題がすべて解決したわけではありません。それでも普通の生活ができるようになった長女を見て、Aさんは、以前とは違う感覚を持っています。

「この子には、この子の順番があるんだなって思えるようになりました」

子育ては、ときに長い時間がかかります。でも関わり方が変わると、親の見える景色も、少しずつ変わっていくのかもしれません。今日はここまで。ありがとうございました。

今回の子育て手札

「成長の順番」

焦ったときほど、今、どの段階にいるのかを見直してみることがおすすめです。

◆プロフィール

1人も見捨てない子育て手札の提案者

きのぴー先生

公立小中学校にて10年間勤務。うち3年間を児童自立支援施設に併設された小中学校で勤務し、生徒指導主任を務める。さまざまな背景をもつ子どもたちと向き合う中で、子どもへの関わり方を技術として体系化。現在は教職を退き、1人も見捨てない子育て手札の提案者として、無料で技術を公開し続けている。現在は講演活動や個別支援も行いながら、感覚やセンスではなく、誰にでもできる関わり方を広めるべく、教育・福祉・家庭の垣根を超えて活動を展開中。Instagram @kinoppi30 (https://www.instagram.com/kinoppi30)/YouTube「きのぴー先生」/Voicy「きのぴーの子育て手札ラジオ」でも子育て技術を発信中。

◆公式サイト

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◆YouTube

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https://voicy.jp/channel/821466

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《OTONA SALONE》

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