
原因のわからない不調が続き、病院では「ストレスですね」と片づけられてしまう——そんな経験はありませんか?その「謎の不調」を抱えている人は、もしかしたら「心身症」かもしれないと心療内科の専門医である釈 文雄氏は語ります。
釈氏によると心身症とは、心のストレスが身体にあらわれた症状の総称で、その原因となるストレスは「表面に見えるものだけではなく、カビの根のようにその人の心の奥深くに、複雑に絡み合って潜んでいる」のだそう。
そして心と身体が絡み合う不調には、実は自分の“内側の声”に向き合うシンプルな方法が役立つことがあるといいます。本記事では、30年以上にわたり心療内科の臨床医としてのべ10万人以上の患者と向き合ってきた釈氏の著書から、心身症の治療に用いられるセルフケア法のひとつ「つぶやきノート」について紹介します。
※本記事は書籍『わたしを「書いて」取り戻す 「謎の不調」から自分を救う本』(釈 文雄:著/かんき出版)から一部抜粋・編集したものです
身体の不調をセルフケアできる「つぶやきノート」とは?
心身症の治療のひとつに「感想文療法」という方法があります。これは、九州大学心療内科の深町建先生が、思春期や青年期の摂食障害の患者さんの治療にとり入れた方法です。私もこの療法を臨床現場で長年活用しています。摂食障害に限らず、さまざまな症例の心身症患者さんに実践していただいており、大きな効果を実感しています。
「感想文」をなぜノートと言い換えたのかというと、感想文に対して学校の宿題で書く読書感想文のような堅苦しいイメージを持つ方もいるからです。実際に患者さんにおすすめするのは、ノートにメモするような感覚で自由に書いてもらうものなので、あえてノートとしました。
これからご紹介するのは、読者のみなさんが自分だけの秘密のノートにつぶやくことで、原因不明の身体不調をセルフケアできるオリジナルの方法です。これを「つぶやきノート」と名付けました。
つぶやきノートは、文章が下手でも、文章を書くのが苦手でも大丈夫です。走り書きでも、殴り書きでも、箇条書きでもかまいません。書くことが思いつかないときは、1行だけでもいいのです。逆に言いたいことが山ほどあれば、どれだけ書いてもOKです。疲れたり、書くのがつらくなったら、いったんやめても問題なしです。難しく考えることはまったくないので、ご安心ください。
どんなに書くことが苦手な人でも、自然に書けるようになる書き方をご紹介しますので、まずはトライしてみましょう。つぶやきノートを書いていくうちに、だんだん心のモヤモヤが整理されて、身体の不調が引いていくのを実感するはずです。
心のつぶやきを書くだけで、身体の不調が改善するメカニズム
つぶやきノートに何か書くだけで、どうして身体の不調が改善するの?——と不思議に思う人も多いでしょう。その一連のメカニズムを集約すると、次のようになります。
1 思いつくまま書き出してみる
最近のできごとや、過去の思い出、家族のこと、何か気がかりなことなど、自分の気持ちを交えて思いつくまま書き出してみる。
↓
2 言葉で気持ちを吐き出す
抑圧されていた感情や欲求を言葉にして吐き出す。
↓
3 思考が整理されてくる
書いているうちに、身の回りのごちゃごちゃしたできごとやモヤモヤしていた思考が少しずつまとまってきて、心の中が整理されてくる。
↓
4 言語化することで見えてくる
整理したことを言語化することで、今まで見えていなかったことが客観的に見えてきたり、意識していなかったことに気づき始める。
↓
5 抑圧した自分の感情やストレスの背景に気づく
言語化による気づきをきっかけに、自分自身が今まで無意識に抑圧してきた感情や、それよって溜まっていたストレスの背景に気づき、心がスッキリして、身体のつらい症状も改善する。
このように、自分の気持ちを少しずつ言語化していくことで多くの気づきが得られます。さらに、抑圧したストレスを言葉にして吐き出してしまうことで、まるで〝毒〟が抜けていくように、身体のつらい症状がスーッと消えていくのです。
ルールはたったひとつ
ノートに書かなくても、スマホやパソコンに書くほうが手っ取り早いのでは?自分のみ閲覧可能な個人ブログに書けばいいのでは?ChatGPTのようなAIとの筆談や音声チャットでもいいのでは?——そう思われる方もいるかもしれませんね。
基本的につぶやきノートには何を書いても自由ですが、たったひとつだけルールがあります。それは「手書き」にすることです。その理由は、デジタルツールで文字を入力するよりも、ペンを握って一文字一文字手書きにするほうが、頭の中が整理されやすいからです。
人は何かを思い出そうとするとき、脳の海馬から記憶を引き出して言語化します。その際、手書きのほうが、脳がより活性化することが脳科学的にわかっています。
たとえば、「喉」という字を書くとします。キーボード入力なら、該当する漢字がほぼ一発変換で出てきます。でも、手書きだと一画一画思い出さないと書けないですよね。少し長めの文章を書くときも、入力の場合は何も考えなくてもフォーマット通りに文字が並びますが、手書きだと走り書きであってもノート内のバランスをある程度考えながら文字を連ねていきますよね。
つまり、同じ言葉でも手書きのほうが脳が働くのです。脳が活性化すれば、その分、古い記憶も蘇りやすくなります。思考も冴えて、頭の中を整理しやすくなります。
部屋が散らかっていると、どこに何があるのか見つけにくくなるように、脳の中が整理されていない状態だと、大切なことに気づきにくくなります。モヤモヤした頭の中を整理するためには、手書きのほうが文字入力より効率がよく、気づきも得られやすいのです。
※本記事で紹介している内容の効果には個人差があります。
※心身の状態によっては適さない場合があります。ご不安のある方や体調に配慮が必要な方は、無理のない範囲でお試しいただき、必要に応じて医師の指示のもとで実施してください。
■著者略歴:釈 文雄(しゃく・ふみお)
日本大学大学院総合社会情報研究科教授。心療内科学会専門医。旭川医科大学医学部医学科卒業。東京医科歯科大学(現・東京科学大学)大学院医歯学総合研究科博士課程修了。30年以上にわたって心療内科の臨床医としてのべ10万人以上の患者と向き合う。その経験から、近年、なかなか治らない「謎の不調」を抱える、働き盛りの世代と子育て世代の人たちが増加していることに着目。心身症に気づかず苦しんでいる人をひとりでも多く救いたいという一心から『わたしを「書いて」取り戻す 「謎の不調」から自分を救う本』 を上梓。
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