乃木坂46「40thSG アンダーライブ」の最終公演が12月21日、東京・日本武道館にて開催された。11月にリリースされた乃木坂46の40thシングル「ビリヤニ」のアンダー楽曲「純粋とは何か?」歌唱メンバーによる今回のアンダーライブは、12月19日から3日間にわたり、2020年12月の「乃木坂46 アンダーライブ2020」以来5年ぶりとなる日本武道館で実施。初めてアンダーセンターを務める5期生・五百城茉央を中心としたメンバー14人で、クリスマスシーズンにちなんだ企画も交えながら、冬の寒さを吹き飛ばすような熱気溢れるステージを展開した。なお、今回は3公演すべてがインターネットにて生配信され、チケットを手に入れることができなかった多くのファンが彼女たちの熱演を目撃することができた。
今回のアンダーライブでは、年内をもってグループを卒業する4期生・松尾美佑&矢久保美緒の最後のステージでもあった。19日公演のアンコールでは松尾の卒業セレモニーが実施され、松尾のペンライトカラーであるターコイズ&白で染まった客席を前に、淡いブルーのドレスを着た彼女がファンへの感謝の気持ちをしたためた手紙を読み上げる。そして、「ずっと歌いたかった曲」として「君は僕と会わない方がよかったのかな」をメンバー全員で歌唱。さらに、自身が初選抜入りを果たした「人は夢を二度見る」を、同じく同曲で初選抜入りした同期の佐藤璃果とのダブルセンターで披露する一幕もあった。
続く、20日公演のアンコールでは矢久保の卒業セレモニーが行われ、薄ピンクのドレスを着用した彼女は自身のペンライトカラーである黄色&ピンクで染め上げられた客席を見渡し、10年前に武道館で行われたアンダーライブが初の乃木坂46ライブだったことを告げ、同じ場所で卒業を迎えられる現実を噛み締める。その後、尊敬する先輩・松村沙友理の卒業ソング「さ~ゆ~Ready?」を、自身の名前にちなんで「み~お~Ready?」と変えて披露したほか、同期であり親友でもある林瑠奈と「友情ピアス」を、お揃いのイヤリングを付けて歌唱するなど、実に彼女らしい愛のこもったセレモニーが展開された。
そして乃木坂46にとって年内最後のライブとなる21日のステージは、「ここにいる理由」からスタート。逆光を浴びながらひとりステージに登場した五百城が堂々とした歌声を響かせると、彼女に続くように松尾&矢久保をはじめとするメンバーが加わり、眩い照明が飛び交う中スクリーンを一切使わない環境下で、没入感の強いパフォーマンスが繰り広げられる。間奏では長尺のダンスパートも用意されるなど、歌とダンスにスポットを当てた演出で観る者を惹きつけると、曲のクライマックスでいよいよステージ後方&左右の巨大LEDスクリーンにメンバーのアップが映され、その圧倒的な美しさに客席からは歓喜の声が沸き起こった。
何かの始まりを告げるように場内に心音が響き渡ると、「生まれたままで」にてそれまでの空気は一変。弾けるような笑顔で歌い踊ると、会場は幸福感で充満していく。さらに、「狼に口笛を」では五百城の「一緒に踊ろう!」を合図に爆発的な盛り上がりを見せ、ライブは早くも最初のクライマックスへと到達する。
最初のMCでは、今回の座長である五百城は「(緊張で)震える……」とこぼしながらも「ついにこの日が来たんだなと嬉しい思いと、終わってしまう寂しい気持ちもあるので、どんな瞬間も楽しんでいきたいです」と意気込みを口にする。その後「さざ波は戻らない」でライブが再開すると、伊藤理々杏&林のダブルセンターを中心に切なさを際立たせた表現で観客を魅了。「落とし物」では存在感の強い奥田いろはの歌を軸に、情熱的な世界が繰り広げられる。また、松尾のセリフからスタートする「その女(ひと)」ではクールさを醸し出し、矢久保のアイドル性が遺憾なく発揮された「涙がまだ悲しみだった頃」、センターの岩本蓮加の呼びかけで会場がひとつになってシンガロングをする「~Do my best~じゃ意味はない」と、新旧のアンダー楽曲が次々に届けられていく。
続くユニットブロックは意外性の強い組み合わせと選曲で連日ファンを楽しませ続けたが、この日は五百城&奥田のギター弾き語りによる「サルビアの花を覚えているかい?」にて幕開け。2人の息の合ったハーモニーで客席に優しい風を注ぎ込むと、2人は「1年前は路上ライブで、10人の前で披露していたのに、今度は武道館だよ?」と素直な感想を告げる。続く「欲望のリインカーネーション」では佐藤をセンターに迎え、伊藤や黒見明香、冨里奈央、林、松尾、吉田綾乃クリスティーとともに、ミラーボールがキラキラした光を放つ中で艶やかなダンスを提示。「乃木坂饅頭」では金川紗耶を中心に岩本、柴田柚菜、田村真佑、矢久保がキャッチーな掛け声とともに、軽やかに歌い踊る。
五百城がラジオDJを務める「のぎくりラジオ」がスクリーンに流れ始めると、ここからはクリスマスブロックに突入。田村の個性が存分に発揮された寸劇を経て「初恋の人を今でも」が始まると、ピンクのペンライトで染め上げられた客席とともに武道館がクリスマスイルミネーションへと一変する。このパートはファンから募ったリクエストをもとに選曲され、初日は「ここにはないもの」「全部 夢のまま」、2日目は「気づいたら片想い」「雪が降る日にまた会おう」が披露されたが、最終日は金川&松尾のダブルセンターによる「Monopoly」や、奥田を中心に据えた「やさしさとは」が用意され、メンバーからのリクエストメールと曲タイトルが読み上げられるたびに客席からは驚きと喜びの声が沸き起こった。
そして、ステージ後方に用意されたクリスマスツリーに華やかな灯りが点灯されると、雪のように白い衣装に身を包んだメンバーが「歩道橋」を歌唱。五百城の切なげな表情と繊細な表現を前面に打ち出し、観客を魅了してみせた。その後、メンバーが2,000円の予算でそれぞれ購入したクリスマスプレゼントの抽選会も実施され、クリスマスブロックは大きな盛り上がりのうちに幕を下ろした。
ライブ後半戦は、冨里がセンターに立つ「それまでの猶予」からスタート。赤基調の衣装で華やかに歌い踊る彼女たちに、客席からは惜しみない声援とコールが送られる。曲中にはコール&レスポンスパートも用意され、一体感はより高まることに。黒見&吉田が笑顔を振り撒きながらパフォーマンスする「思い出が止まらなくなる」、柴田が圧倒的なボーカルで存在感を発揮する「交感神経優位」と、直近のアンダー楽曲で熱量を上げ続けると、「真夏の全国ツアー 2025」や「39thSG アンダーライブ」で日々進化を続けた「不道徳な夏」では、金川を中心としたメンバーが感情を爆発させるようなアクションでオーディエンスを煽り、盛り上がりは最高潮へと近づいていった。
五百城のインタビュー映像に続いては、いよいよアンダーライブも最終ブロックへ。今回はアンダーライブ初の試みとなるバンド編成でのステージが用意され、躍動感の強い生演奏を背に「『じゃあね』が切ない」にてパフォーマンスを開始させる。「純粋とは何か?」MV衣装に身を包んだメンバーは、いつも以上に熱の伝わる五百城のボーカルを軸に、しなやかさと力強さを織り交ぜたダンスで存在感を発揮。また、リズミカルなアコースティックギターのストロークに乗せて、矢久保が満面の笑みで「風船は生きている」を生き生きと歌唱する。
バンドメンバー紹介を経て始まった「踏んでしまった」では、バンドの疾走感溢れる演奏に導かれるように、松尾を中心にパワフルな歌とダンスでライブを牽引。さらに、「日常」では五百城が不敵な笑みを浮かべながら圧巻のパフォーマンスを見せ、新たな試みを交えたアンダーライブをネクストステージへと到達させた。
最後の曲に入る前、座長の五百城は現在の素直な心境を観客に告げていく。彼女は「今夢中になるものがたくさんある中で、乃木坂46を好きになって、好きでい続けてくれてありがとうございます」と感謝を伝える。そして、「私はこの40枚目の期間で、これまで以上に乃木坂46のことが大好きになりました。先輩や同期からのさりげない優しさだったり、ひとつの作品を作るうえで関係する皆さんがひとつになって、一生懸命なっている時間、普段は言葉にはなかなか言い表せない感情を、たくさん乗せて伝えることもできる楽曲がたくさんあるところ、そしてこんなに皆さんが応援してくれて、皆さんと気持ちの共有ができる時間があること。乃木坂46は乃木坂46にしかない魅力がたくさんあると、改めて気づきました」と素直な思いを続ける。
さらに、「私は正直、乃木坂46に訪れる、年末にある幸せな発表を聞いたとき、素直に嬉しいという感情が出てくるのは少し難しかったです。この結果をいただく前に、何かグループに貢献できたのだろうかと考えてしまっていて。それがすごく悔しかったです。なので、私は結果をいただいたときに『素直に自分は頑張ったんだ』と認めて受け止められる、そんな人間になっていきたいです。そして、乃木坂46にこの子がいてよかったと思ってもらえる、そんな人になりたいです」と本音を吐露。最後に「続いての曲に私たちの集大成を見せます。そして、私の全部をぶつけます。見ていてください!」と覚悟を決めて、「純粋とは何か?」を力強く歌い上げながら、すべの感情を解放させてライブ本編を笑顔で終えた。
全身全霊のステージ本編を終えたあとは、「Am I loving?」にてアンコールを開始。続く「僕だけの光」とともに、客席に向けたファンサービスを交えながら、幸福感満載のパフォーマンスを届けてくれた。そして、岩本や田村がライブに対するそれぞれの思いを、涙を浮かべながら伝えたあとに、ライブの締めくくりとして「乃木坂の詩」をファンに送り、3日間におよぶアンダーライブ武道館公演を完遂した。
これが最後のライブとなった松尾が「最後のライブっていうこと以上に、ひとつのライブとして今回は構成や披露する曲、全部が楽しくて。この場所に最後に立てて幸せでした」と口にし、五百城に向けて「頑張ったね」と伝えると、五百城が感涙。すると、隣の松尾と矢久保が寄り添い、そのまま全員が彼女のもとに駆けつける場面も。また、矢久保は「最後のライブが私の大好きなアンダーライブで、それがとても嬉しかったです。先輩からつないできた魂をぶつけてきたアンダーライブを、みんなに託します。これからもアンダーライブを好きでいてください」とファンやメンバーに語りかける。そして、最後に五百城が「2026年の乃木坂46にも期待していてください!」と宣言して、ステージをあとにした。
予定していた演目はこれでにて完了したものの、アンコールを求める声援は鳴り止むことはなく、これに応えるようにステージに再登場したメンバーは「私たちの思いはすべてライブにぶつけたので、挨拶だけさせてください!」と、肉声で挨拶をして3日間のステージを完結させた。
これまでの歴史を大切に守りながら、常に最高を更新し続けるアンダーライブ。この公演で2025年のライブ活動を最良の形で締め括った乃木坂46。12月30日は「第67回日本レコード大賞」、大晦日に控えた「第76回NHK紅白歌合戦」へ向けてこれからも走り続け、2026年も1月14日リリースのニューアルバム「My respect」から華々しい幕開けを飾ることになる。
(文/西廣智一)




