
冬野菜の代表格ともいえるのが「白菜」。鍋料理には欠かせません! 旬の今は1/4カットや1/8カットなどもあって、手を伸ばしやすくなっています。「かさまし」野菜としても定番です。
ところが、料理家ウー・ウェンさんに言わせると、「日本の白菜は気の毒」。生まれ育った中国ではキャベツよりも白菜をよく食べるそうです。白菜は中国原産の野菜。さすが本場!
今回はウー・ウェンさんの「白菜愛」ともいえる、白菜に寄せる想いやおいしい食べ方を教えていただこうと思います。
※この記事は『』 ウー・ウェン 著
写真:木寺紀雄
「白菜は家族を守ってくれる」。なのに日本の白菜はかわいそう!
白菜は家族を守ってくれる――。私の好きな言葉です。この言葉の意味をみなさんにお伝えしたいです。
私が生まれ育った中国では、野菜にはそれぞれの効用があると考えられています。野菜の中でも白菜を本当によく食べます。中国ではキャベツよりもだんぜん白菜です。
白菜の何がいいって、体調を選ばないことです。どんなときにもからだにやさしい野菜なのです。いつ食べてもからだに負担がない。胃が痛いときも、疲れているときも、逆に元気なときでも大丈夫。さまざまなビタミンやミネラルを含む白菜を冬に食べていれば、風邪をひかない。風邪をひいても、白菜を食べれば回復が早い。
そんな、やさしさと強さの両方を持っているのが白菜という野菜です。家族みんなの健康を守ってくれる、お守りのような野菜。あると安心、なければ不安で、私の母は冬になると白菜を山ほど買ってベランダに常備していました。
だから日本に来た当時、白菜がかわいそうと思いました。お鍋をするときのかさ増し? あまり大事にされていない気がして。買ってきて、ザクザクと適当に切って、鍋にポンと入れられて……白菜は雑に扱われている気がしました。
よくスーパーで、2分の1や4分の1に切って売られていますが、カットしてあると切り口から酸化して傷みやすいですし、数日使わないと切り口の葉が盛り上がってきたりしますよね。気の毒に、と思います。野菜は私たちが食べるまで生きているのですから、土に生えていたときとなるべく同じ姿で買ってきて、保存するのがいいと思うのです。
丸ごとの白菜は保存がききます。ちなみに中国では収穫したての白菜はおいしくない、と言います。水っぽすぎる、と。それで丸ごとの白菜をいくつも買って、ベランダなどの屋外に置いておく。1か月ぐらいたったころ、ちょうどお正月ぐらいの白菜がいちばんおいしい。余計な水分が飛んで、甘さが増して、香りもよくなっていて。
白菜は「丸ごと1個」で買うのがコツ。同じ白菜でも、外側と内側、葉先と軸では、味わいがまるで違って楽しい!
白菜は、ぜひ1個丸ごとを買っていただきたいです。私は丸ごと買ってきたら冷蔵庫には入れずに、新聞紙で包むか紙袋に入れて、そのまま台所の隅に放置しています。頻繁に使わないといちばん外側の葉は乾燥しますが、それをむけば内側はみずみずしいです。白菜の外側の葉は〝自然のラップ〞です。
丸ごとの白菜を、1枚1枚はがしながら食べていきます。そうすると同じ白菜でも、外側と内側のおいしさが違うのがわかります。白菜を毎日食べたとしても、外側と内側、葉先と軸とでは味わいがまるで違うので飽きることがありません。それに白菜は部位によって食べかた、つまり向く調理法が違うので、1個の白菜でいろいろな料理を楽しめます。家族2人だったら、白菜1個で1週間暮らせると思うほどです。
外側のほうは、茎の部分がかたいので、葉と茎に分けて使います。茎は食べやすい長さに切り、細切りにして炒め物にして食べます。この部分の茎は正直それほどおいしくはないので、うまみのある鶏肉や豚肉と一緒に炒めるのがおすすめです。
もう少し内側の茎は甘みが出てきておいしいですから、ぜひ単品で炒めて食べてください。厚みを薄くするように斜め削ぎ切りにして、甘酢炒めにすると本当においしいです。
葉は、お鍋に入れてサッと火を通すぐらいで食べるのがいちばんです。しゃぶしゃぶのような食べ方ですね。水分がたくさん出てしまうので長時間煮込むのは禁物です。
白菜の芯は「宝物」! ぜひ試してほしい、生のままで楽しむ超シンプルレシピ
そして、白菜の中で特別おいしいのが芯の部分です。むいて、むいて、むいて、やっと出てきたいちばん内側のやわらかいところ。これはもう、宝物です。生で和え物にして食べます。
味つけはなんでもおいしい。塩、こしょう、ごま油でもいいし、レモンを搾って、塩をパラパラとふって食べてもいい。白菜のこの部分はビタミンCを多く含むので、風邪をひきそうな人にぜひ食べさせたいです。

芯はごちそう。子供が食べるときは豆板醤は入れなくても
【白菜の芯の和え物】
■材料(2人分)
白菜の芯の部分 200g
[たれ]
豆板醤 小さじ1/2
はちみつ 小さじ1
黒酢 大さじ1/2
ごま油 大さじ1/2
■作り方
1
白菜の芯は繊維を断ち切るように2幅に切る。
2
ボウルにたれの調味料を混ぜ、白菜の芯を入れて箸でよく和える。
1/4カットの白菜を買ったとき、使いきれずに残ったときの「おすすめ料理」は?
ところで、1/4にカットされた白菜を買うことが、実は私にもあるのです。そういうときは、葉も茎も全部を細かく切ります。細かく切って、水からコトコト煮てスープを作る。
こうすると外側と内側の違いも、葉と茎の違いもなくなって、白菜すべてのおいしさが味わえる。白菜はすごくだしの出る野菜です。量をたくさん入れれば、鶏がらスープなどのだしは不要。塩、こしょう、ごま油の風味で十分おいしくいただけます。丸ごと買った白菜が使いきれないときも、こんなふうにスープで食べるのがおすすめです。
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■BOOK:『』ウー・ウェン 著
■著者:ウー・ウェン
中国・北京で生まれ育つ。ウー・ウェンクッキングサロン主宰。1990年に来日。友人、知人にふるまった中国家庭料理が評判となり、97年にクッキングサロンを開設。医食同源に根ざした料理とともに中国の暮らしや文化を伝えている。著書に『ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理』『ウー・ウェンさんちの定番献立』『大好きな炒めもの』(いずれも高橋書店)、『シンプルな一皿を究める丁寧はかんたん』(講談社)、『料理の意味とその手立て』(タブレ)など。




