全国の中高生を対象にしたスマートフォン向けアプリコンテスト「第15回アプリ甲子園」の決勝大会が2025年11月16日に開催された。審査の結果、一般開発部門は高校2年の宮崎航大さんによる「Paper CAD」、AI開発部門は高専2年の南大地氏さんの「Mathmosis」がそれぞれ優勝に輝いた。 「アプリ甲子園」は、次世代を担う若手クリエーターの発掘と健全な育成支援を目的に、2011年より開催している中高生向けのアプリ・サービス開発コンテスト。「試そう。今の自分も技術も、アイデアも。」をテーマに、全国の中高生が開発したスマートフォン向けアプリやWebアプリを広く募集し、企画力と技術力の観点から優秀な作品を選出・表彰する。 部門は、企画力と技術力を競う「一般開発部門」、AIをコア機能とした企画・技術力を競う「AI開発部門」、協賛企業から提示された課題をテクノロジーの力で解決するためのアイデアを企画・提案する「アイデア部門」の3部門。 決勝大会では、二次予選を勝ち抜いたファイナリスト12組が公開プレゼンテーションを実施。さまざまな分野で活躍する審査員がアプリの企画力を審査し、端末上で実際にアプリを操作したり、ソースコードを確認したりしながら実装力を採点し、優秀な作品を選出した。 2025年は一般部門でもLLM(大規模言語モデル)を活用したアプリが多数登場。身近な課題に向き合う個人の情熱や、ユニークな着眼点をもとにした作品が多く、AI時代に中高生が生み出す新たな価値を実感する大会になったという。決勝大会のようすは、YouTubeのアーカイブ動画で視聴できる。 一般開発部門の優勝は、高校2年生の宮崎航大さんの作品で、紙の建物模型制作を直感的・効率的に自動化するWeb CADアプリ「Paper CAD」。3Dで設計した建物を自動で2D展開図に変換し、熟練技術が必要だった展開図設計を誰でも簡単に行えるようにする。初心者から経験者まで、模型制作を「苦しい試練」から「ワクワクする創造」へと変えることを目指したアプリだ。「Paper CAD」は、技術賞とCygames賞も同時受賞した。 準優勝は2作品が選ばれた。1つ目は、高校2年生の吉田香音氏さんの作品で、保護犬猫マッチングアプリ「わんにゃんマッチ」。AI診断やAR機能を活用し、最適な里親探しをサポートする。ミスマッチによる飼育放棄や殺処分という社会課題に対し、ペットの個性や飼い主の環境を詳細に把握することで、双方にとって幸せな出会いを創出する。 もう1つの準優勝作品は、高校2年生の室山結子さんの作品「monoful」。日常の風景を特別な写真として記録し、自分だけのカレンダーを作れるアプリ。写真の中の特定の色だけが鮮やかになり、ほかの色はモノクロになる機能を通じて、自分だけのカレンダーを作成できる。色を探しに行くことで、いつもの景色を見る目が変わり、1つの思い出として記録できるという。 AI開発部門の優勝は、高等専門学校2年生の南大地さんによる、タブレット向けの数学学習アシスタントAIアプリ「Mathmosis」。問題集を撮影して取り込み、スタイラスペンで解答しながらAIに質問や採点を依頼できる。AIが苦手を分析し、自動で復習問題やアドバイスを生成。1人では解きづらい数学の問題も、AIと共に学ぶことで自力で解けるようになることを目指す。 準優勝は、高校1年生の西島賢太朗さんと高校2年生の冨山翔太さんによる知識発見・共有ツール「InfoNode」。GraphとLLMを中核に、対話で選んだノードやカテゴリを文脈としてAIに渡し、知識を芋蔓式にたどることができる。ノートやチャット、資料を自動で関連付けて可視化し、ユーザーとAIが同じ情報空間を参照しながら思考・創造を進められる。 協賛企業賞のうち、江崎グリコ賞は、中学3年生の大平直輝さんの作品「Neureka!」が受賞。教科書やノートの写真をアップロードするだけで、AIがポッドキャストやフラッシュカードを自動生成し、学習の基本となる「理解」を効率化するアプリとなる。 マイナビ賞は、高校3年生の菊地桃々さんの作品「Bellmy」が受賞した。1990年代に流行したポケベルをスマートフォンで体験できるアプリで、デジタル化が進む現代であえて不便さを楽しむことで、世代を超えた体験を提供する。 協賛企業からの課題を受け、テクノロジーの力で解決できるアイデアを企画書形式で募集する「アイデア部門」の表彰式も行われた。