岡山大学は2025年7月22日、新型コロナウイルス感染症流行前後における小児の院外心停止に対する蘇生法の変化と影響を検証した結果を公表した。コロナ禍で人工呼吸の実施が減ったことなどにより、本来救えたはずの子供が年間約10人亡くなっていた可能性が示唆されたという。 今回の発表は、総務省消防庁が管理する「All-Japan Utstein Registry」を用いて、コロナ流行前後における小児の院外心停止に対する蘇生法の変化と、それが死亡や後遺症に与えた影響を検証したもの。コロナ流行前(2017年~2019年)とコロナ禍(2020年~2021年)にかけて発生した17歳以下の小児の院外心停止7,162例について、解析を行った。 その結果、もともと減少傾向にあった人工呼吸の実施率は、コロナ流行前(2017年~2019年)に33.0%だったものの、コロナ流行期(2020年~2021年)には21.1%にまで減少と、コロナの流行をきっかけに約12%も低下していることが判明。一方で、増加した胸骨圧迫のみの蘇生法は、子供の死亡や重い後遺症のリスクと関係しており、コロナ禍には年間10.7人の子供が、本来助けられたはずの命を失っていた可能性が示された。 子供の病院外心停止は、窒息や溺水など呼吸障害が原因となることが多く、「人工呼吸」を含む蘇生法(CPR)が必要とされ、その実施が推奨されている。今回の研究は、子供の院外心停止における人工呼吸の重要性をあらためて裏付けるものであり、今後の小児蘇生法の教育のあり方や、感染対策を講じたうえでの普及啓発、ポケットマスクなど人工呼吸補助具の開発・整備など、社会全体で取り組むべき課題であることを示しているという。 研究成果は7月5日、オランダ Elsevier社の「Resuscitation」に掲載された。研究内容の詳細は、岡山大学のWebサイト等で読むことができる。なお、この研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)地域救急・災害医療学講座の小原隆史講師(特任)、同学域救命救急・災害医学の内藤宏道准教授、中尾篤典教授、および学術研究院医療開発領域(岡山大学病院)高度救命救急センターの塚原紘平講師(小児救急科長)らの研究グループと、学術研究院医歯薬学域(医)疫学・衛生学分野の松本尚美助教、頼藤貴志教授らにより、共同で実施された。