元国税職員さんきゅう倉田です。好きな年末の行事は「棚卸し」です。
賢い人の友達は賢いし、賃金の高い会社員の友達は賃金が高いし、普通の人の友達は普通である。不良の友達は不良かもしれない。
自分の知り合いの中にはいなかった人と知り合ったとき、あるいは、その人の持つ常識に触れたとき、自分のいる世界とは全く異なる世界が存在することに気づく。
そのような機会がなければ他の世界があることにすら気づかない。
だから自分の無知や非常識に気づくためにも、多様な人と出会い、その人の世界に触れることが重要である。
東大の友人のところに同じ幼稚園だった知人から電話があった話を聞いたときも、ぼくたちの知らない世界がまだまだあるのだなと思ったものである。
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▶「童貞なの?」と聞かれて
10年ぶりの電話で「童貞なの?」と聞かれた友人の話
「もしもし、久しぶり。ユウコだけど、ねぇ、◯◯くんって童貞なの?」
この女の声を聞くのは10年ぶりだ。
同じ街に住んでいて時折顔を合わせるが、ほとんど会話をしていない。
最後に話したのは10歳の頃だから、声は変わっているはずだが当時の様子は全く覚えていなかった。
そもそもこの女の連絡先は知らなかった。
表示されていた名前は共通の友人であるタカシのものだった。タカシと話すのも久しぶりだったので、どのような要件か気になっていたが、電話に出るなり問われたのは、とても個人的な内容だった。
10年以上話していない知人に電話をしてわざわざ聞くことなのだろうか。
そもそも、他人に聞いて良いことなのだろうか。
東大に入っておよそ2年経つが、女性経験があるか否かを友人と確認しあったことはない。知られたくない者もいるだろうし、そんな話をすることさえ憚られる。
ましてや異性にそんな話はできない。
この女はどういうつもりなのだろうか。
友人の電話を借りているということは、電話の前に俺が童貞かどうか話したに違いない。
なんて下品なやつらなんだ。
他に話すべき重要な話題がないのだろうか。
イランやウクライナの人々に思いを馳せたりしないのだろうか。
後になって怒りが湧いてきたが、突然聞かれて深く考えることができず答えてしまった。
「童貞だよ」
▶彼女の返答は
「あはは、やっぱり東大生って童貞なんだ」
聞いたことのないステレオタイプである。偏見甚だしい。はっきりと不快感が込み上げてきた。
「あはは、やっぱり東大生って童貞なんだ。ねえ今度飲みに行かない?」
「うん、いいよ」
「あとで日程送るね」
「そういえば、どうして童貞かどうか聞いてk」
ガチャ。そこで電話は切れてしまった。
なんて自分本位な人間なんだ。10年ぶりに電話がかかってきて、「ねえ、君って処女なの?」と聞かれたら激しく嫌悪するだろう。
君がやっているのはそういう品性のかけらもない行為だぞと罵ってやりたかった。
後日、別の友人に確認したところ、俺が東大に入ったことを聞きつけた彼女の母親が俺との結婚を強く勧め、本人も前向きになり童貞かどうかを確認するに至ったらしい。そういう行為を平然とやってのける世界の人間と結婚などできるわけがない。
友人が彼女と会うことはもうないだろうが、他の世界の存在を知る機会となったようだった。
自分のコミュニティでは当然の考え方や行動でも、他のコミュニティでは異常かもしれない。
自分の誤った言動や行動を修正するために、新たな環境に飛び込んで、他者を知り受け入れることが重要である。
■編集部より
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