「育てやすい天使」と言われた息子が5歳で「IQ67軽度知的障害と自閉スペクトラム症」と診断されるまで | NewsCafe

「育てやすい天使」と言われた息子が5歳で「IQ67軽度知的障害と自閉スペクトラム症」と診断されるまで

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「育てやすい天使」と言われた息子が5歳で「IQ67軽度知的障害と自閉スペクトラム症」と診断されるまで

首都圏で中学受験が過熱する裏で、「面倒なことは早く終わらせた方が楽」と小学校受験を検討する家庭も少なくありません。

広告代理店で働く広子さん(仮名・45歳)は、自閉スペクトラム症(ASD)と軽度知的障害を併せ持つ息子のA君(仮名・年齢非公開)を、インクルーシブ教育を理念に掲げる私立小学校に通わせています。

今回は、自閉スペクトラム症の子供を私立小学校に通わせることのメリットとデメリットについて、お話を伺いました。

「おそらく私たちも特性ありかも」、個性の強いクリエーター同士が結ばれた夫婦

広子さんと、写真好きで通信教育系企業に勤める夫・真太さん(仮名・42歳)には、クリエイターという共通点があります。

「夫も私も、会社ではデザイン系の仕事をしています。プライベートでは、私はイラストレーター、夫はカメラマンとして副業も。お互い、定期的にアウトプットしないと落ち着かないタイプなんです。ネット上の素材販売サービスに投稿したり、私は書籍にイラストを描いたり。典型的なクリエイター気質で、夫婦ともにいわゆる『特性』に近いものがあるタイプだと思います」。

広子さん自身、自分にADHDもしくはASDの傾向があると感じており、30代後半、A君を妊娠して産休中に関連書籍を読み漁ったそうです。

「聴覚が過敏だったり、独自のこだわりやルーティンがあったりと、特性がある自覚はあります。ただ、気合を入れれば社会生活は送れてしまうので、“グレーゾーン”なのか、正式に診断がつくものなのかはわかりません」。

いつも傘をなくしてしまう真太さんにADHDの検査を勧めたこともありますが、「今まで普通に社会でやってきたし、必要性を感じない」と断られたそう。広子さん自身も、「困りごとがあって薬が必要になったら検査しよう」と考え、今に至るまで未診断だといいます。

「夫はアメリカ人とのハーフで見た目にも個性が強い。私は美大時代からイラストの仕事をしていて、今の会社でも個性の強いクリエイターたちに囲まれてきました。だから、あまり困らずにここまで来ましたが、30代半ばになってやっと『通院するかどうかは別として、発達障害についてもっと知っておきたい』と思うようになりました」。

泣かない、一人遊びが得意、おとなしい…とにかく育てやすい、天使のような赤ちゃんだったが

広子さんは妊娠中、自閉スペクトラム症の子供の特徴や育児について描かれた本を何冊か読んでいたそうです。

「当時は別に何かに備えていたわけではなく、興味のままに読んでいました。あえて言えば、『うっかり者の自分でも子育てができるんだろうか?』という不安から、発達障害を勉強しようと思いたったのかもしれません。でも今思えば、そのときの知識が息子の自閉症にいち早く気づく助けになりました」。

埼玉県の実家に里帰り中に生まれたA君は、父親譲りの茶色い巻き毛が印象的な赤ちゃんで、とても育てやすかったといいます。

「赤ちゃんの頃から泣くことが少なく、夜泣きにもあまり悩まされませんでした。よく眠るし、幼児期になっても一人遊びが好きで、『いい子で助かるなぁ』と単純に思っていたんです」。

実家の母も「こんなに大人しくてかわいい子が生まれて幸せね。寝ない子は大変よ。うちのお兄ちゃんの時なんて……」と語り、「親ばか&祖母ばかかもしれないけど、私は楽をさせてもらってるんだろうな」と思っていたといいます。

 

「『あれ?』と思い始めたのは、3歳くらい。ほかの子に比べて身体能力が低いことが気になり出した頃です」。

3歳のころ「逆さバイバイ」に気づいて「ピンときた」が、「気にし過ぎよ」と言われてしまい

A君は歩き始めるのが遅く、同じ月齢の幼なじみが10ヵ月で歩いていた頃も、まだずり這いがやっとという状態。2歳半で保育園に通い始めてからは、「あまり目が合わない」「視線が定まらない」といった様子も見られるようになりました。

「4歳になっても、他の子と同じようにお遊戯ができないのも気になって。もちろん泣いてしまう子もいる年齢ですが、うちの子は泣きもせず、上半身だけねじって後ろを向いたままフリーズしていたり」。

クリスマス会のビデオを見ていた真太さんも、「『全身で嫌がってる子がいるな』と思ったら、うちの子だった!」と驚いたそうです。

「決定打は、『逆さバイバイ』と呼ばれる特有の手の振り方を繰り返し始めたとき。『あ、これは』とピンときてしまいました」。

広子さんは、近所のママ友に相談することもありましたが、3歳の段階では「気にしすぎじゃない?」という反応がほとんどだったそうです。

「中でも多かったのが、『顔立ちから受ける印象では、障害じゃないんじゃない?』という声。顔立ちに特徴がないケースもあるという知識は、意外と身近では知られていないと感じました」。

そんな中、埼玉県で保育士をしている姉が、「安心を買うと思って」と、児童発達支援事業所での相談を勧めてくれたそうです。

「当時、3歳児健診はクリアしていたので、内心では『気にしすぎです、大丈夫です』という言葉を聞きたくて相談に行ったんです。でも結果は、『療育に通ってみましょうか』。そのとき、『ああ、やっぱり』と納得できた自分がいました。意外にも落ち込むことはなくて、運動能力の遅れも気になっていたので、療育がいい刺激になればと思いました」。

結果的にIQ67、軽度知的障害&自閉スペクトラム症の診断が下りた

 後から聞いたところ、真太さんは「最初はショックだった」と言っていたそうですが、その場では「そうなんだ。じゃあ、まず何をすればいい?」と、冷静に受け止めているように見えたといいます。

「発達支援センターに通ううち、同じように特性のあるお子さんを持つママ友もできました。その中にはすでに療育手帳(愛の手帳)を取得している方もいて。言語発達の遅れと運動能力の低さがあって、でも他害はないというお子さんでした。『ああ、うちの子に似てる。就学前に検査を受けた方がいい』と、自然に思うようになっていきました」。

A君は5歳で知能検査を受け、結果はIQ67。広子さんの予想通り、軽度知的障害と自閉スペクトラム症の診断が下りました。

「一般的に知能指数(IQ)が50〜70程度が知的障害とされるので、夫は『ギリギリ不合格ってこと? だったらまた受けさせたら?』なんて言ってました。でも私はむしろ『ギリギリ合格で手帳がもらえる』という感覚でした。当時は夫に『なんで?』と首をかしげられましたが、今は『手帳がもらえてよかった』と納得してくれています」。

関連記事では、広子さんが「障害が分かって安心した」と語る理由についてお届けします。

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※本作は取材に基づいたストーリーですが、プライバシーの観点から、個人が特定されないよう随時事実内容に脚色を加えています。


《OTONA SALONE》

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