注目の「介護美容」なぜ人気?「徘徊がなくなった」「病気の早期発見」たかがメイクの範疇では全くないそのパワー | NewsCafe

注目の「介護美容」なぜ人気?「徘徊がなくなった」「病気の早期発見」たかがメイクの範疇では全くないそのパワー

社会 ニュース
注目の「介護美容」なぜ人気?「徘徊がなくなった」「病気の早期発見」たかがメイクの範疇では全くないそのパワー

2025年、いわゆる「団塊の世代」が一斉に75歳以上に突入し、国民の5人に1人が後期高齢者となります。「介護や医療の需要に供給が追い付けるのか?」といった懸念もある中、ここ数年、高齢者の生活を明るく豊かにするとして注目を集めているのが「介護美容」(介護を必要とする方へ美容を通じて心身のケアを行うこと)です。

「介護」と「美容」。一見異なる2つの分野が結びつくことにより、高齢者の自立支援やQOL(生活の質)の向上など、あらゆる効果が見られるそう。

私(ライター小林)は認知症の義母の介護を始めて数年になりますが、ふとした時に「ちょっとした美意識の高さ」を感じて驚くことがあります。義母がずっと探していたお気に入りの帽子が見つかって、それを被るとご機嫌で出かけてくれたり、拒否し続けていた洗髪も、シャンプーの香りとボトルの色(ピンク)が気に入った途端、応じてくれるようになったり……。そういった経験から、私も「介護美容」に期待を寄せる一人です。

一般社団法人日本介護美容セラピスト協会(株式会社ナリス化粧品100%出資)は、2014年4月の設立以降、心と体の美容療法®を創出。全国で、介護と美容の手法を取り入れたセラピスト(ビューティタッチセラピスト®)の養成と認定講座を開催し、2025年3月末でセラピストの認定数は3000名を突破しています。

そこで今回は、講座の卒業生であり、認定セラピストとして10年ものキャリアを持つ小川 真由子さんに、仕事を始めたきっかけや大事にしていること、「介護美容」にまつわるエピソードなどについてお話をうかがいました。

トップ画像/© 2025 Naris Cosmetics CO.,Ltd

コンプレックスがあっても飛び込んだ美容の世界。その先には「介護美容」が待っていた!

――小川さんは、もともと美容の仕事に興味があったのでしょうか?

どちらかというと、美容は自分がするよりも、してもらう方が好きで(笑)。私、手が小さくて、それがずっとコンプレックスだったんです。だから、まさか自分が(手を使う)美容の仕事に就くとは思いませんでした。

――ところが変化が訪れた?

夫は柔道整復師で接骨院を経営し、私もサポートしながら働いていました。「自らの手で痛みや不安を和らげる。素晴らしい仕事だな」と感じつつ、そんな姿を見るうちに「私も何か手に職を!」という想いが強くなったんです。

そこで目指したのは、エステティシャン。資格を取得してからは、自宅サロンで「子育てママに向けての癒し」としてサービスを提供するようになりました。そのうち、接骨院の患者さんから「エステをしてほしい」という声を頂くようになり、高齢の方への施術を始めた形です。

やがて、接骨院はデイサービスへと変化。小川さんはエステのサービスを続けることを決めますが、当時は(高齢者への施術について)参考にできる事例が少なかったとか。そこで「30分間、肌に触れる」を軸にして、メニュー作りから始めたそうです。

――まさに「介護美容」の走りですね。苦労された点はありますか?

技術に関しては比較的スムーズでしたが、施術を受けるのは高齢の方。介護の知識がないことで、戸惑うこともありました。実は施術中、利用者の方がベッドから落ちてしまったことがあったんです。そこで「通常のエステとは異なる高齢者への美容技術や接し方について、一から学ぼう」と決意しました。

認定セラピストとして活動開始。認知症の方の施術では「触れる」難しさを実感した

デイサービスでメイクセラピーを行う小川さん  © 2025 Naris Cosmetics CO.,Ltd

――その後、一般社団法人日本介護美容セラピスト協会が主催する「ビューティタッチセラピスト認定基本講座」を受けたんですね。

介護の基礎も学べるということですぐに受講し、2015年8月に認定セラピストとなりました。特に認知症の方への接し方を学べたことは、自分にとって大きかったと思います。

――受講後は、どのような場所で活動を始めたのでしょうか?

私の場合は自営のデイサービスがあったので、引き続きそこで施術していましたが、しばらくして閉じることになったんです。そこで営業活動を始めたところ、現在も定期セラピーで訪問しているデイサービスに出会って。気付けば9年目になりました。

――長いお付き合いになりますね。でも当時、「介護美容」の認知度は低かったかと。デイサービスの担当者には、すぐに受け入れてもらえましたか?

うれしいことに、「介護に美容を取り入れよう」という考えのデイサービスだったんです。実際、お風呂あがりにマッサージや軽いパックなどもしていたようで。ただ、職員の方は他にも食事や入浴介助など、やることがたくさんあります。そこで「プロに任せてみよう」という流れから、私が担当することになりました。

――現在はこちらのデイサービスに加え、個人宅への訪問、ご自身で開いたサロンでも施術を行っているそうですが、高齢の方と接するうえで心がけていることはありますか?

何よりも、最初のコミュニケーションの部分を大事にしています。私たちが提供している「ビューティタッチセラピー®」は、スキンケアやメイクを通して肌に触れることで心と体の健康維持を促す美容療法なのですが、「触れる」ことは信頼関係がないと難しいんです。セラピストを信頼し、身を委ねてもらわないとできないことなので。

――確かに! 私も義母の着替えをサポートすることがありますが、最初のうちはスムーズにいきませんでした。今思うと、しっかりコミュニケーションが取れていなかったと感じます。

特に認知症の方は「触れる」ことへの抵抗感が強いので、あえて動作もゆっくりと。私の場合はまず目を合わせ、その目をそらさないようにしながら、雑談を交えたコミュニケーションの時間を設けます。

そこから一つひとつ説明しながら進めてゆきますが、認知症の方にとって「顔に触れる」は驚かれることも多くハードルが高いので、まずはハンドセラピーから。そこでマッサージの心地よさを感じていただき、慣れてきたら次の機会にフットケア、フェイシャルといろいろな施術にチャレンジする方が多いです。

つづき>>>施術したことそのものを忘れる認知症の患者がとった「ある行動」に胸が熱くなる


《OTONA SALONE》

特集

page top