「俺たちもう、夫婦じゃないのか?」出産から7年、夫婦生活ゼロ。男としての自信をなくした45歳夫が静かに決めた覚悟とは | NewsCafe

「俺たちもう、夫婦じゃないのか?」出産から7年、夫婦生活ゼロ。男としての自信をなくした45歳夫が静かに決めた覚悟とは

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「俺たちもう、夫婦じゃないのか?」出産から7年、夫婦生活ゼロ。男としての自信をなくした45歳夫が静かに決めた覚悟とは

日本では夫婦間のレスが深刻な社会問題のひとつです。夫婦生活の頻度が月1回未満(一般的にこれを「レス」と定義します)の夫婦は年々増加しており、リクルートが運営する『パートナーシップ調査2024』など、多くの調査で既婚カップルの5~6割が該当すると報告されています。夫婦で性的な触れ合いがない状態は、お互いの心にも少なからず影響を及ぼすもの。パートナーへの愛情や自己肯定感にも関わるため、その悩みは深刻です。

今回お話を伺ったのは、都内在住の会社員・村田さん(仮名・45歳)。結婚10年目、小学生の子どもが一人いるご夫婦ですが、実はここ7年以上、夫婦間に営みがないといいます。

何が、夫婦の関係に起きたのか……。夫である村田さんの視点から、レスの現実とそこに潜む葛藤を語ってもらいました。

※本人が特定できないよう変更を加えてあります

※写真はイメージです

出産を機に“自然消滅”した営み。気づけば7年が経っていた

「子どもが生まれた直後は、正直、それどころじゃなかったんです。妻も寝不足でヘトヘトでしたし、しばらくは仕方ないなって思っていました」

村田さんによれば、レス状態の始まりは“出産”でした。もともとは月に何度か夫婦生活があったものの、育児と家事の疲れで、次第に減少。産後しばらくして、完全に途絶えることになったといいます。

「最初は“半年もすれば元に戻るだろう”と思っていました。でも、気づけば1年、2年……まさかここまで長くなるとは」

当初、村田さんは妻の体調や育児の負担を思いやり、不満を口に出すことはありませんでした。「無理させたら悪い」と、自分に言い聞かせ、夜の誘いを控える時期もあったといいます。けれど、月日が経つにつれて、夫婦の営みは「一時的な中断」ではなく、「恒常的な不在」へと変わっていきました。

誘うたびに傷ついて。「同居人みたいな夫婦」に変わってしまった

出産を機に始まったレス状態は、数年経っても変わりませんでした。その間、村田さんは何度かさりげなく妻にスキンシップを試みたといいます。たとえば肩を揉んでみたり、記念日にホテルディナーを予約して“いい雰囲気”をつくろうとしたことも。

けれど、いざ夜になると、妻からは決まって「ごめん、今日は疲れちゃって…」と申し訳なさそうな一言が。

「断られるたびにガクッと落ち込むし、情けなくなって……。だんだん“また断られたらどうしよう”って思って、誘うのが怖くなってきたんです」

そう語る村田さんの表情はどこか寂しげでした。いつの間にか、夫婦のあいだで“夜の話題”は完全にタブーに。触れることすらはばかられる、張り詰めた空気が出来上がっていったのです。

「最近は、男友達との飲み会で『もう夫婦じゃなくて同居人だよな』って冗談っぽく言うこともあります。でも、全然笑えないんですよね……」

苦笑しながらそう語る村田さんの目には、7年という歳月の重さがにじんでいました。

「男としての自信がなくなっていく」レスが心をむしばんでいった

営みがない状態が続く中で、村田さんは次第に「男としての自信」を失っていったといいます。

「求められていないということは、自分に魅力がないってことなのかなって。誰かにそう言われたわけじゃないけど、やっぱり気にしてしまいますよね」

妻から直接否定されたわけではなくても、求められない時間が長くなると、自尊心がじわじわと蝕まれていく。その影響は、想像以上に深く、重いものでした。

「男性だって、傷つくんです。本当は」

妻の前では強がりながらも、心の中では「自分の何がいけないんだろう」と問い続ける日々。営みについて誰かに相談することもできず、一人で抱え込みやすいのは、男性に多く見られる傾向かもしれません。村田さんも、親しい友人にさえ、この悩みは打ち明けられずにいました。

追い詰められるような気持ちから、ネットで「レス 解消」と検索したり、匿名掲示板の体験談を読み漁る夜もあったといいます。「うちだけじゃない」と少し安心しながらも、中には「いっそ他の女性と…」という誘惑が頭をよぎったこともゼロではなかったそうです。

それでも村田さんは実際に不貞に走ることはありませんでした。

「実際に不倫に走ったら、たぶん戻れなくなる気がして……。僕は、妻も家庭も大切にしたいんです。だからこそ、踏みとどまってるんだと思います」

寝室も別、会話も最低限。「仲は悪くない」が意味する夫婦の現実

村田さん夫婦は、現在寝室も別々で過ごしています。子どもが幼い頃、奥さまと子どもが同じ部屋で寝るようになったのがきっかけで、それがいつしか“当たり前”になってしまったといいます。

「気づけばもう何年も、“おやすみのキス”どころか、同じ布団で寝たことすらありません」

そうぽつりとこぼす村田さんの表情は、どこか寂しげです。日常の会話も、今ではすっかり減ってしまいました。子どもの学校行事や家計に関するやり取りなど、“生活のための連絡”は交わしているものの、それ以上の雑談やスキンシップはほとんどありません。まるで、同じ家に住む“仕事のパートナー”のように、必要最低限のことだけを共有する関係。

「仲が悪いわけじゃないんです。ケンカもしないし、協力して子育てもしてます。でも……夫婦っていうより“同盟関係”って感じですね」

大きなトラブルが起きていないからこそ、気づかれにくい。けれど、そのぶん根深く、解消しづらい。
今のふたりの関係には、そんな“静かな亀裂”が横たわっています。

スキンシップの不足は、心の距離にもつながります。触れ合わない日々に慣れてしまうと、今さら照れくさくて手もつなげない。抱きしめることもできない。そうやって、 “もう一歩”が踏み出せないまま、時間だけが過ぎていっている……。

「最後に手をつないだのがいつだったか、もう思い出せないですね」

そうつぶやく村田さんの横顔には、愛する妻へのさみしさと、それでも諦めきれない思いが、静かににじんでいました。

「仕方ないよね」と話し合わないまま、心はすれ違っていく

夫婦の営みがなくなることは、単なる身体的な問題ではありません。実際には、それが“心のすれ違い”にも深く関わってきます。本来、夫婦の営みとは「欲を満たすための行為」ではなく、「お互いを大切に思っていることを確認する時間」であり、“心のつながり”を実感するひとつの手段でもあります。しかし現実には、出産や育児、仕事の忙しさなど、生活の変化によって夫婦の営みが途絶える夫婦は少なくありません。

特に日本では、いまだに「家事や育児は主に妻の役割」とされがちです。そのぶん妻に心身の負担が集中し、結果として性に向き合う余裕がなくなってしまう……。こうした流れから、レスに移行するケースも多く見られます。

さらに問題を複雑にするのは、夫婦のどちらか、あるいは両方が「まぁ、仕方ないよね」と心の奥で諦めてしまうことです。レスは、話題にしづらく、恥ずかしさや気まずさが先立つテーマ。

だからこそ、なかなか本音を口に出せない。でも、本音を出さなければ、状況は何も変わらない。

村田さんは、自分の気持ちを口にできず悶々と悩み続け、一方で奥さまは、日々の疲労とストレスで性的関係に気が向かないまま。そのまま月日だけが流れ、お互いに「本音を言えなかった時間」が積み重なっていきました。

それこそが、今の夫婦関係に横たわる、“心の距離”の正体なのかもしれません。

「母になった私に、そんな余裕なんてなかった」妻の心と体に起きていた変化

ここで忘れてはならないのが、村田さんの奥さまの気持ちです。レス状態について、奥さま自身も「まったく気にしていない」というわけではないかもしれません。

ただし、女性にとって“出産”は人生を大きく揺るがす転機。身体的にも心理的にも、見えにくい変化が多く起きているのです。

●ホルモンバランスの変化

出産後や授乳期は、ホルモンの状態が大きく変化します。この影響で、性欲が大きく減退する女性も少なくありません。個人差はあるものの、これは決して珍しいことではなく、むしろ自然な生理現象として理解が必要です。

●育児と家事の“重なり疲労”

慣れない赤ちゃんの世話に加えて、洗濯・食事・掃除といった日常の家事も加わります。物理的な疲労はもちろん、「全部やらなきゃ」という精神的な緊張も続き、夜にはただ“ひたすら休みたい”という状態に。「夫婦の営みどころではない」そんな気持ちになってしまうのも、無理はないことです。

●「母親になった自分」への戸惑い
出産を経て、 “母”という社会的役割を背負うと、周囲からは「お母さんなんだから」「子ども優先が当たり前」といった期待が自然と押し寄せます。その重圧の中で、自分を“ひとりの女性”として意識することに戸惑いを覚えたり、罪悪感を抱いたりする人も少なくありません。

結果として、夫との性的関係に踏み込む“心の余白”を持てないまま、時間だけが過ぎてしまうことがあるのです。

こうした要因が重なり合えば、奥さまが無意識のうちに夫婦のスキンシップから距離を取ってしまうのは、ごく自然な流れともいえるでしょう。

もちろん、一時的なものであれば問題にはなりません。しかし、夫からの働きかけがなく、妻も自ら言い出しづらい状況が続くと、そのまま“無言のすれ違い”が固定化され、レスが長期化する原因となってしまうのです。

夫婦にとって、スキンシップとは「お互いを大切にしている」と伝え合うための、心の言語のようなもの。それが長く途絶えたままになれば、やがて会話も減り、笑顔も減り、“もう夫婦じゃないのかもしれない”という思いが心を蝕んでいきます。

本編では、出産をきっかけに始まった7年間のレスと、夫・村田さんが抱えてきた孤独や葛藤についてお伝えしました。

▶▶「同居人のままなんて嫌だ」夫が7年目に選んだ“やり直す覚悟”。妻との再出発は叶うのか?

では、夫婦のすれ違いにどう向き合い、どんな希望を見出せるのか、その再生への一歩を追います。

《OTONA SALONE》

特集

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