八大学工学系連合会は、「未来を創る女性理工系人材と博士人材を社会へ」と題した声明を2025年3月28日に発表した。声明では、少子高齢化や気候変動、貧困などの社会課題に対処するため、多様な価値観と新たな知恵をもって向き合う必要があるとし、イノベーション創出に不可欠な要素として女性と博士への期待が高まる中、これらの人材の育成を推進する方針を示した。 八大学工学系連合会は、北海道大学、東北大学、東京大学、東京科学大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の工学系学部・研究科で構成されている。声明によれば、産業界では工学系や数理・データサイエンス、AI系を中心とした女性理工系人材の採用意欲が高く、60%以上の企業が「積極的に採用したい」「今後採用を拡大する方向」と回答している。しかし、八大学における工学系学部の女子学生比率は13%にとどまっている。 この状況を改善するため、各大学では女子枠入試の導入や工学部に来やすい仕組みづくりを進めている。また、さまざまなイベントを開催し、最新の工学の幅広さや楽しさを発信している。これにより、女子の理工系学部への入学者数は徐々に増えているが、女子比率は依然として低い状況である。女性理工系人材の活躍が期待される分野は今後ますます拡大することが予想されるため、現役学生の声や卒業生修了生の活躍を紹介し、実際の理工系分野における女性を知ってもらう取組みを一層進めるとしている。 一方、博士号取得者については、主要国では増加傾向にあるが、日本では低水準かつ横ばい傾向にある。八大学における工学系修士の博士進学率は13%に留まっている。政府の施策により博士に対する経済的支援が充実してきており、トランスファラブルスキル教育やアントレプレナーシップの涵養について先進的な取組みが進んでいる。これらの展開や産学協創により、社会と大学の双方向教育を推進し、「専門を深堀する博士」だけでなく、「新しい価値を創造する人材」「イノベーションを創出できる人材」を育成し、博士人材の増強に努めるという。 女性の理系進路に関する偏った見方や先入観をなくし、博士の価値について評価を得るには社会の理解が必要となる。そこで、工学のいまを伝え、女子学生比率向上や博士学生の増強に向けた活動を全国各地域で展開していく。こうした取組みの情報発信のため、ジェンダーバランスと博士応援のための取組みをまとめたWebサイト「つながる工学ウェブ」を公開している。