こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。
【アラフィフライターの介護体験記】#14
◀◀前のエピソード 「最近怒りっぽいな」。性格かと思いきや「認知症の初期症状」だった!どちらか判断するポイントは
▶お義母さんから朝一番できた電話の内容とは
そんな「田舎に帰りたいモード」が続いていたある日、お義母さんから朝一番で連絡がありました。「K子さんが心配だから、今すぐ田舎に行くわ」と、電話越しに興奮している様子が伝わってきます。
K子さんとは、田舎に住んでいるお義母さんの親せき(お義母さんの従姉の娘さん/80歳・1人暮らし)で、私も一度お会いしたことがあり、お義母さんのことを「お姉ちゃん」と呼んで慕っていた姿が印象的でした。
そんなK子さん、数年前に心臓を患ったのですが、退院後は友人のサポートや介護サービスなどを利用して穏やかに暮らしているそう。それを毎回聞いては忘れてしまうお義母さんだったのですが、最近になりその事実をメモしたことで、認識できたようです(夫も一度、K子さんに連絡をして確認済み)。
それにより、『人の役に立ちたい』が信念のお義母さんは奮い立ったようで、「身内である私がお世話をするべきなのよ。早く帰らなきゃ」と言い、「引っ越し準備が大変だから、もうデイサービスには行かない」と駄々をこねる始末……(涙)。
週末、夫がお義母さんのもとを訪ねた際も、まったく同じやりとりだったため(夫も聞き流したようですが)、私はさっそく介護ヘルパーの資格を持つ叔母に相談することにしました。
▶認知症による「帰宅願望」。その原因は?
義母の「田舎に帰りたい」が止まらない! 介護のプロはどう見たか?
叔母曰く、「おそらくそれは認知症による「帰宅願望」(※)で、その根底にあるのは『不安』。お義母さんが親戚の方を心配する気持ちは本当かもしれないけれど、今の環境に何かしらの『不安』があり、そこから抜け出したい気持ちが大きいと思う。まずは、少しでも『不安』を取り除いてあげることが大事。一度ゆっくり話を聞いてみてはどうか?」とのことでした。
(※)認知症が原因で起こるBPSD(行動・心理症状)の一つで、「家に帰りたい」と言ったり、自宅や施設を出ようとしたりする行為。家とは実際の住まいだけでなく、実家や故郷、親しい人そのものを意味することもある。
叔母の話に「なるほど~」と納得したものの、「つい最近まで食堂でのイベントに参加したり、デイサービスでも友だちが増えたと喜んだりしていたのに、なんで?」と、今お義母さんが「不安」を感じるような要素をいくら考えても、思いつきません。
やっぱり一度、お義母さんの話をゆっくり聞くしかないのか。でも本音を言うと、「田舎に帰りたいモード」全開のお義母さんと話すのは、けっこうなストレス。できれば、じっくり向き合うのは避けたいところ。夫とも意見が一致し、とにかく平穏な状態になることを願いながら数日が過ぎ……。
▶プロのアドバイスを無視した結果、事態が悪化
「田舎にはいつ帰る?」と問い続ける義母。叔母のアドバイスを無視し、私がとった行動は?
しかし、この時点でお風呂やデイサービスへの拒否が続いていたため、このまま放っておくわけにもいきません。そこで私は、これまでに乗り越えたいくつかの経験を改めて振り返ります。
お義母さんが認知症と診断されてから、「妄想」や「幻覚」に始まり、『お風呂に入らない』『髪を切らない・洗わない』問題など、本当にいろいろなことがありました。
今までは、想像もつかないような行動や発言に戸惑いながらも、介護のプロたちからのアドバイスも受け、何とか一つずつクリアすることができた。『優しい嘘を取り入れる』『発想力と演技力を用いる』などを実行したことで、比較的スムーズに解決できた問題もあった。それなら、今回もこの感じでいけばよいのでは?
今の段階でお義母さんの話をゆっくり聞いたとしても、結局は「いつ帰るの?」の話題になる。ここは、最初から「田舎に帰りたいモード」に合わせ、『優しい嘘を取り入れる』のスタイルで、ひとまず楽しい気分になってもらおう。そのうち気持ちも収まるはず!
そんな考えに至った夫と私。翌日、頼まれていた買い物を届けがてら、お義母さんのもとへ。さっそく「田舎にはいつ帰れるの?」と聞かれたため、「そうですね、来月早々にでも帰りましょうか~? 帰ったら、行きたいところありますか? 楽しみですね~」とゆるめに返答。
▶険しい顔で激しく怒り出した
するとお義母さんは険しい顔になり、「ねぇ、いつ帰るの? いつ引っ越すの? 段ボール、なかなか用意してくれないじゃない! もうココにはいたくないから、早くしたいのよ!」と激しく怒り出したのです。
これには私も動揺し、咄嗟に返す言葉がありませんでした。もしかするとこのとき、私は完全に対応を間違えたのかもしれません。叔母の言うように、お義母さんにとって何か「不安な出来事」があり、まずはそれを聞くのを最優先にするべきだった……?
それにしても、認知症の家族の介護はやっぱり難しすぎる(涙)。気を取り直し、早々にリベンジする必要がありますが……。この続きは、また次回お話ししたいと思います。