電通総研と同志社大学の池田研究室は、2024年7月から8月にかけて「第8回世界価値観調査」の日本調査を実施し、その結果を12月19日に公表した。調査結果によると、「仕事」の重要度が低下する一方で、「余暇時間」が存在感を増していることがわかった。 この調査は、1981年に始まり、現在では約120か国・地域の研究機関が参加する国際的な調査である。今回の日本版調査では、政治観、経済観、労働観、教育観、家族観など、約70問228項目にわたる質問が行われた。調査の目的は、日本人の価値観の変化を時系列で分析し、国際的な比較を行うことである。電通総研は1990年の第2回調査からこのプロジェクトに参画し、2010年以降は同志社大学と協力して調査を進めている。今回の調査では、特に「仕事」と「余暇時間」に関する意識の変化が顕著に現れた。 調査結果によると、「仕事」の重要度が低下する一方で、「余暇時間」が存在感を増していることがわかった。「家族」「友人・知人」「余暇時間」「仕事」についての質問では、「非常に重要」と「やや重要」と回答した割合が変化しており、「仕事」は78.5%と1990年以降でもっとも低くなった。一方、「余暇時間」は91.6%ともっとも高くなっている。 また、「経済成長と雇用」重視が増え、「環境保護」重視とほぼ同スコアとなった。環境保護と経済成長・雇用のどちらを優先すべきかを尋ねた質問では、経済成長と雇用の創出を最優先すべきだとする意見が31.8%に達し、過去最高となった。 さらに、日本の「文化・芸術」は良い方向へ向かっているとの認識がある一方で、「経済競争力」や「国際的な政治力」は悪い方向へ向かっていると考える人が増えている。特に「経済競争力」は56.4%が悪い方向に向かっていると回答し、前回比で26.1ポイント増加した。 科学技術については、過半数が「世界はより良くなっている」と捉えているが、悪影響への懸念も増加している。科学技術によって良い変化が起きていると回答したのは64.8%で、前回比で4.4ポイント減少した。 これらの結果から、日本社会における価値観の変化が浮き彫りになった。特に、新型コロナウイルス感染症の影響で生活様式が変わり、余暇時間の重要性が増したことがうかがえる。また、経済成長と環境保護のバランスをどう取るかについての意識が変化しており、今後の社会変革の必要性を求める声も高まっている。