「認知症なんてまだまだ先の話」と他人事のように考えている40代‐50代が多いのでは?そんなあなたに知ってほしい『認知症』にまつわる最新研究のお話です。身に覚えはない? 更年期になると認知機能が衰え始める!
「最近、物忘れが増えた」「立ち上がった瞬間に、やろうとしていたことを忘れた」と、認知機能に衰えを感じ始めている方はいませんか。当てはまる方は、認知症予備軍かも?あらゆる病気と同じように「認知症」になってからでは遅いんです。
オトナサローネでは今からできる対策を探るべく、株式会社明治が行った研究成果(メディア)発表会を取材しました。
『お酒のおつまみにも最適なアレ』を適切な量を食べるだけで、なんと認知機能の低下を予防できるかもしれません!登壇されていた国立長寿医療研究センター理事長特任補佐/桜美林大学客員教授 鈴木隆雄先生に、詳しく解説していただきました。
◀◀前のページ え!まさか!「ただの物忘れ?」いいえ、「40代で」認知症予備群である「軽度認知障害(MCI)」になっている⁉
▶▶カマンベールチーズで記憶力が向上するってホント⁉
カマンベールチーズの「オレイン酸アミド」で、脳の栄養成分が増えるってホント!?
桜美林大学、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター、株式会社明治では、カマンベールチーズと認知機能の関係について、10年以上前から研究を重ねてきました。そして、カマンベールチーズを日常的に食べると、認知機能の低下を予防できる可能性があることが分かったのです。
そのカギは、カマンベールチーズに含まれる「オレイン酸アミド」。オレイン酸アミドとは不飽和脂肪酸の一種で、年齢とともに低下する記憶力や認知機能に関わる脳の栄養成分「BDNF」を維持する可能性があることが分かったのです。
ぜひ知っておきたい! 認知症予防が期待できる「BDNF」ってナニ?
BDNFは、脳の中でも記憶を司る海馬などにたくさん存在するタンパク質です。これが増やせれば記憶力や気力が向上し、認知症の発症を遅らせることが期待できます。
ただし、BDNFは年齢を重ねるごとに減る傾向が……。その対策として、カマンベールチーズを食べるだけでBDNFが増えるなんて、朗報だと思いませんか。
2019年の研究でも証明された!カマンベールチーズを食べるだけでBDNFが増える
ここで、2019年に私たちの行った研究をご紹介します。この研究では、MCIと判断された71人の女性を対象として、
・白カビ発酵した「カマンベールチーズ」を食べる人たち
・「カビ発酵していないプロセスチーズ」を食べる人たち
の2つに分け、それぞれ1日2ピースずつ3ヶ月間摂取してもらい、血中BDNF濃度を測定したのです。さらに摂取する食品を入れ替えるなどして得た結果が、以下のグラフの通り。
カマンベールチーズを摂取した人たちの方が、BDNF濃度が高くなったのです。このことから、MCIの人が、カマンベールチーズを毎日2ピース食べるだけで、BDNFが上昇することが分かりました。
▶▶「アレ」をしながら「歩く」だけで、さらに認知症予防に!
やるしかない!「物忘れ」と「運動不足」を同時に解決できる運動があるんです
カマンベールチーズのほかにも、認知機能の維持や低下の予防のために日常生活でできることがあります。運動、睡眠、食事の面から、「これならできそう」と思ったアプローチから始めてみませんか。
運動……運動をすると、BDNFが増えて認知機能の低下予防や維持に役立ちます。また、骨を強くしたり、脂肪を減らしたりする効果のほか、脳の神経細胞に栄養を与えることも最近明らかになりました。
オトナサローネ読者には有酸素運動がおすすめですが、国立長寿医療研究センターで開発された「コグニサイズ」を試してみてください。「コグニ」は認知機能、「サイズ」はエクササイズのこと。「コグニサイズ」とは、頭を使いながら行う運動です。 「運動不足が気になっている」という方には、物忘れと運動不足を一挙に解決できるコグニサイズが便利です。
コグニサイズの例
・100から4ずつ引き算をしながら、ウォーキングをする
・2人以上でウォーキングをするときは、しりとりをしながら
など。
脳のゴミを掃除して、栄養を蓄える。認知症予防に良質な睡眠と食事は外せない
睡眠……アルツハイマー型認知症の原因のひとつと考えられている「アミロイドβ」は、脳内のタンパク質の一種。通常は、脳内のゴミとして睡眠中に分解・排出されます。しかし質の悪い睡眠が続くと、脳内にゴミが溜まってアルツハイマー型認知症を引き起こす可能性があるのです。「忙しくて、睡眠時間を削りがち」という方も多いかもしれませんが、適切な睡眠時間と質の良い睡眠をとることを心がけましょう。
食事……脳と体の基本的なエネルギー源となるごはんなどを主食に、血液や筋肉・強い骨を作るタンパク質、しっかり動くためのエネルギーになる油脂、体の調子を整えるビタミンとミネラルなど、毎日いろいろな食品をまんべんなく食べましょう。すべてが脳への栄養となり、認知機能の維持などに役立ちます。脳が適度に刺激されるように、きちんと噛むことも忘れずに。
認知機能の衰えは、オトナサローネ読者世代なら、まだ抑えられる可能性があります。カマンベールチーズはそもそも、タンパク質、カルシウム、ビタミンなど栄養豊富な食品です。毎日食べることで、将来の認知症への不安を軽くするだけでなく、体や骨の健康維持にも役立つでしょう。同時に、運動、睡眠、食事にも配慮しながら、将来の認知症予防の対策を今から始めてみてください。
▶▶次のページ チャチャっと1分でできるレシピもあります!カマンベールチーズの「意外な」おいしい食べ方とは
【監修者】
国立長寿医療研究センター理事長特任補佐/桜美林大学 客員教授 鈴木隆雄先生
札幌医科大学医学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了。国立長寿医療研究センター研究所長や桜美林大学老年学総合研究所所長等を経て現職に。著書に『超高齢社会のリアル』(大修館書店)など。