「最近なんだか疲れる気がする」「靴がキツいことがある」。働く40代50代ともなると、このあたりは誰もが日常的に経験しているかもしれません。では、「起きたら足がむくんでいたことがある」「尿が泡立った」「トイレの回数が増えた」などはどうですか?
「あれ、もしかして?」と思った方、あらためて健康診断の通知を出してきてください。「クレアチニン」と「eGFR」を確認してみて。基準値ギリギリじゃないですか? そもそもこれは何の数値かご存じでしょうか。……答えは「腎臓」に関する数値です。
実は日本の成人の7人に1人が慢性腎臓病患者。特に高齢になれば腎臓機能は自然と低下し、70歳代の3人に1人、80 歳代以上の2人に1人が腎臓病だとか。腎臓は沈黙の臓器。気づいたときにはもう手遅れ……なんて恐ろしいケースも。他人ごとではいられません!
では、健康診断結果から腎臓リスクに気づくには、どうすればよいのでしょう?
※本稿は『腎機能 自力で強まる体操と食事』(徳間書店)の一部を抜粋・再編集したものです。
健康診断結果を見てみて!「尿潜血」「尿たんぱく」「微量アルブミン尿」
尿検査では、尿にたんぱく質が出ていないか、血が混じっていないかを調べます。尿の状態は、尿を採取したときの時間帯や体調に左右されることがあります。激しい運動のあとや高い熱が出ているとき、あるいは女性であれば生理中は尿の状態が通常とは異なります。そうした条件のときには、検査を避けるべきでしょう。
腎臓に問題がある場合は、安静時にも異常が認められることが多いので、学校健診などでは朝いちばんのいわゆる早朝尿を検査します。自治体や一般の健康診断でも尿検査は行われますので、きちんと健診を受けていれば、少なくとも1年に一度はチェックすることになるでしょう。
●尿潜血
尿中に血が混じっていないでしょうか。腎機能が悪化すると、尿に血が混じることがあります。陰性「-」、偽陽性「±」、陽性「+」で判定します。腎臓や尿管、膀ぼ う胱こう、尿道から出血があると、陽性「+」になります。尿たんぱくや尿潜血の検査で陽性であると、「尿沈査(尿を遠心分離機にかけて調べる検査)」で成分をより詳しく調べます。
●尿たんぱく
健康診断の検査結果で、尿たんぱくの項目はマイナス「-」になっているでしょうか。腎臓の糸球体は、本来、たんぱく質などの大きな分子は通しません。しかし、糸球体のろ過機能が落ちると、たんぱく質が尿中に漏れ出てきます。
尿中にたんぱく質が検出されない状態が、陰性=「-」で、これが正常です。偽陽性が「±」。ほぼ正常ですが、経過観察が勧められます。そして、陽性が「+」です。含まれるたんぱく質の量が増えるにしたがって+の数が増え、「+(1+)」、「++(2+)」といったように示されます。
検査結果が「+」以上なら、日を変えて検査します。体調によって、腎機能に異常がなくとも、尿にたんぱく質や血が混じることがあるからです。再検査でも結果が変わらず、3ヵ月以上、たんぱく質が認められると、慢性腎臓病が疑われることになります。
●微量アルブミン尿
糖尿病の人は、尿検査で特にチェックすべき数値があります。一つが、「尿糖(尿に糖が出ているかどうかを試験紙で調べる検査)」。もう一つが、「微量アルブミン尿」です。
糖尿病ならば、尿たんぱくが「-」でも油断はできません。というのも、糖尿病の場合には、一度、腎機能が低下し始めると、悪化スピードが速くなります。このため、尿たんぱくがプラスになるまで気づかずに放置していると、わかったときには、既にその時点で腎機能がかなり悪化しているケースがあります。人工透析まであと数年という段階であることも少なくないからです。
糸球体が傷んでくると、尿中にたんぱく質の一つであるアルブミンが漏れ出ます(これが微量アルブミン尿)。この値を医療機関でチェックすることで、糖尿病による腎機能の悪化を早期発見することができます。
血液検査の項目では「血清クレアチニン値」をチェック
血液検査を受けたら、「血清クレアチニン値」にも注目してください。クレアチニンは、筋肉を使うことで発生する老廃物の一つです。通常は、腎臓でろ過されて、ほとんどが尿中に排出されます。しかし、腎機能が低下していると、尿中にろ過・排出されなくなり、血中にクレアチニンが溜まっていくことになります。
その血中に残っているクレアチニンの量が、「血清クレアチニン値」で、腎機能の低下の度合いを測る指標となっています。
・血清クレアチニン値の基準値
男性:0.65~1.09mg/
女性:0.46~0.82mg/
筋肉量に比例して血中のクレアチニンの量も増えるため、基準値も、男性のほうが高くなります。基準値を超えている場合、慢性腎臓病が進行している可能性があります。
血清クレアチニン値がわかったら、「年齢」「性別」と合わせることで、腎機能の状態を推定することができます。これが、eGFR(推算糸球体ろ過量)です。
eGFRは、腎臓の中の糸球体が1分間にろ過している(推定の)血液量です。この値が小さくなるほど、腎機能が低下していることになります。eGFRの値で60が基準値です。慢性腎臓病の一つの指標である尿たんぱくなどの腎障害がなくても、eGFRの値で60未満の状態が3ヵ月以上続くと、慢性腎臓病と診断されます。
自覚症状が出にくい腎臓だから、年に一度の健康診断は必須!
腎臓が「沈黙の臓器」で、機能低下の初期段階ではほとんど自覚症状が現れないことがわかっているからこそ、みなさんには、毎年、健康診断を受けることをお勧めしたいのです。
健診データの「たんぱく」「クレアチニン」「eGFR」の欄などを継続してチェックし、腎臓に関係する数値がどのように変化しているのかを見守っていくことが予防的な観点からも重要です。
『腎機能 自力で強まる体操と食事』上月正博・著 1,760円(税込)/徳間書店
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