先生に言われてるから。「しんどくなったら、何があってもやめなさい」って。絶句する大助の心中【なにわ介護男子#3】 | NewsCafe

先生に言われてるから。「しんどくなったら、何があってもやめなさい」って。絶句する大助の心中【なにわ介護男子#3】

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先生に言われてるから。「しんどくなったら、何があってもやめなさい」って。絶句する大助の心中【なにわ介護男子#3】

日本を代表する夫婦漫才・宮川大助さん・花子さん。2019年に花子さんに血液のがんである「多発性骨髄腫」が発覚、今もなお闘病生活を続けています。

今年6月末に『なにわ介護男子』(主婦の友社刊)を上梓。完治しないこの病気を抱えながら生きる花子さん、そして自身の体調も芳しくない中でも懸命に支える大助さん。花子さんはそんな大助さんを「なにわ介護男子」と命名し、大変な闘病と介護の日々にもクスッと笑えるスパイスを忘れません。本連載では、おふたりのお話から、「生きる意味とは?」「夫婦とは?」を考えていきます。また、介護をする側・される側の本音にも迫ります。

『なにわ介護男子』宮川大助・花子 著 1,650円(税込)/主婦の友社

多発性骨髄腫と診断されて以降、心肺停止寸前という危機を経験したり、さらには心臓カテーテル手術や抗がん剤治療などに臨んだりと、さまざまな出来事を経て迎えた2023年。ここでは、漫才界で第一線を走り続けてきた花子さんが、「芸人」から「患者」へと変わった日のお話をお届けします。

先生に言われてるから。「しんどくなったら、何があってもやめなさい」って。

2023年5月9日。いよいよ夢にまで見た聖地・なんばグランド花月での漫才復帰の日がやってきたお二人。3年半前の記者会見で、花子さんが「大目標」として掲げたことがいよいよ実現するのです。そのため、万全の体調で臨みたかったものの、依然、週1回のステロイド投与、月1回の抗がん剤治療を受け、1日約20錠の薬を飲んでいる状態。当日のコンディションが読めないため、スケジュールはずっと仮予定のままで、前日になってようやく「よし、いける」と正式に決定したのでした。

「記念すべき復活の日、じつは珍しく大助くんと気まずくなる出来事がありました。きっかけは、現場に向かう車中で私が発したひとこと。『大助くん、あのな、ごめんやけど、もし舞台でしんどくなったら、漫才の途中でもやめるよ』と言ったんです。それを聞いた大助くんは、これまでと打って変わって厳しい口調で『そんなこと言うたら、あかんやないか。お客さん、楽しみに見に来てはるのに途中でやめるなんて絶対あかん!』」。

 

そんな大助さんの言葉に驚いた花子さん。大助さんは「そうやな。しんどかったらやめたらええがな」と言ってくれるんじゃないかと思っていたためです。でも、考えてみれば、大助さんは最愛のお母さんが危篤のときも、舞台を優先して死に目に会えなかった悲しみを黙ってこらえた人。舞台を命よりも大切にする芸人魂の持ち主。漫才を途中でやめると言われて、怒らないはずがないと納得したのだそう。

「でも、そんな大助くんに『うん、わかった。どんなことがあっても最後までやる』とは言えませんでした。その代わり、こう続けたんです。『先生に言われてるから。「しんどくなったら、何があってもやめなさい」って。そやから、そうさせてもらう』。大助くんは前を見たまま黙っていました」

 

妻は芸人「花子」であり、同時にひとりの患者「美智代」でもある。大助の苦悩

静まり返った車の中で窓の外を眺めながら、自分が芸人ではなくて患者になったことを悟ったという花子さん。「芸人」だった自分への名残惜しさと「患者」として生きる覚悟を決めた自分へのいとおしさが入り交じったなんともいえない気持ちだったと言います。今思い出しても少し泣きそうになるとか。

 

「大助くんは複雑な思いをかみ締めていたに違いありません。漫才に妥協したくない、でも嫁の体は心配。そんな胸の内が痛いほど伝わってきました。じつは『明日の舞台、少しでもしんどくなったら、すぐにやめてくださいね』とアドバイスしてくれたのは、あの熱男先生でした。そう、私の姿勢を変えてくれたひとことというのが、この言葉なんです」

 

熱男先生とは、心臓カテーテル手術でお世話になった循環器科の上田友哉先生。どんなことにも熱心になる「ザ・熱い男」なので、花子さんが「熱男」と命名したのです。その熱男先生がフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』の密着取材中に、きっぱりとあの言葉をかけてくれたのだそう。

「もし舞台で倒れるようなことがあったら、芸人としての花子ではなく、患者としての美智代が恥ずかしく感じるだろうと思いました。先生方をはじめ、支えてくださるすべての医療スタッフの皆さんに恥ずかしてくて顔向けできない、と」

誰もが知る人気漫才師として活躍してきた花子さん。このような心境に変化するまでには私たちが想像もできないほどの葛藤があったに違いありません。でも、すべては命があってこそ。そんな大切なことを私たちに改めて教えてくれているような気がします。続く後編では、そんな花子さんの心境の変化に対する世間の反応や芸人としての底力、大助さんとの感動秘話などをお伝えします。

次の話>>>>「花子さんは舞台で死にたい人だと思ってた」死の淵をさまよった経た芸人が「生き証人」に伝えた言葉は

前の話<<<<「地獄やあ、地獄やあ」進行する多発性骨髄腫、不意の骨折。痛みのあまり寝返りも打てず

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