3月は「自殺対策強化月間」です。長年続いていた年間自殺者数3万人ですが、12年以降は3万人を下回り、昨年はバブル崩壊による影響で急増する以前の数値を下回っています。ここ数年は自殺者数の減少とともに、自殺者急増期と比べると、行政からの情報発信や報道も少なくなっているように感じます。
警察庁によりますと、16年の自殺者数は2万1898人(男性1万5123人、女性6775人)。17年1月の自殺者数は1761人(男性1251人、女性510人)で、16年1月の1851人(男性1271人、女性580人)よりもさらに108人(男性28人、女性80人)減少しています。
自殺者数の減少は、自殺したいほとの苦しい状況から脱している、と解釈もできるかもしれません。その意味では、かつての経済危機のときほどの状況ではないのでしょう。たしかに、目に見えるとことでは失業率も減っています。大卒の就職率も上昇傾向です。リーマンショック前の08年調査を上回っています。その意味では、不安定な労働環境ではなくなってきていると言えなくはないでしょう。
ただ、自殺者の増減を都道府県別にみると、そこは差異があることがわかります。増加率でワースト1は石川県。8人から21人に増えた。前年比でいうと。162.5%。ついで島根県が7人から13人に。率では85.7%。広島県が33人から46人となった。率は39.4%。鳥取県と佐賀県が同じでは8人から10人に。率では25.0%となっています。
一方、減少率では京都府は38人が12人となり、マイナス68.4%でトップ。ついで奈良県。18人が9人になり、半数(マイナス50%)となった。山形県は16人が9人となり、マイナス43.8%。沖縄県が25人が15人に減り、マイナス40%。そして大阪府が104人から69人となり、マイナス33.7%です。
これまでは日本全体で減らすことに力を入れてきましたが、今後は、こうした地域差に注目したながらの自殺対策となっていきます。昨年、自殺対策基本法が改正されました。その結果、これまで都道府県位は義務でしたが、市町村にも自殺対策の計画づくりが義務となりました(ただし、地方分権との関連もあることから、“強制的な"義務ではありません。そのため、温度差は必然的に生まれます)。
現在は、自殺総合対策大綱の改正についての議論が進んでいます。もちろん、「自殺は個人的な問題ではなく、社会的な問題だ」という基本的な視点、または他職種による連携といったことは変更されることはないでしょう。しかし、最近では、いじめや学校での指導による自殺、または、過重労働などによる勤務問題から派生する自殺がクローズアップされています。そのため、より、はっきりとした対策が必要とされるでしょう。
もちろん、自殺が起きないための環境づくりも大切です。一方で、自殺が起きたとき、その周囲のケアと同時に、何があったかの調査も重要になります。たとえば、現在の、いじめ防止対策推進法によって調査委員会が立ち上がった場合、その調査の方法(遺族の知る権利をどこまで認めるかなど)は委員会ごとで違っています。友人や恋人、親族を含めた遺された人たちへのケアやサポートも求められるでしょう。
自殺念慮者、自殺未遂者、自死遺族...当事者としては「困っている」問題があれば、どのように頼ればよいのかわからない場合もあります。それぞれどの段階にあるのかで必要としているものは変わります。事前教育も必要となりますが、より具体的な情報提供や情報公開が求められているのです。
[執筆者:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》
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