
モラハラ・夫婦問題カウンセラーの麻野祐香です。
働く女性は、モラハラやDVをする夫から簡単に逃げられるのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。さまざまな事情から、支配的な配偶者との結婚生活を続けている方は少なくありません。オトナサローネ世代のモラハラ被害にフォーカスした本連載。今回は、自営業の夫から「妻なら家業を手伝うのが当たり前」と言われ、自分の仕事を辞めたことをきっかけに、夫からのモラハラがさらにひどくなっていったAさんのお話です。
※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。
※写真はイメージです
夫の圧で、大好きだった会社も辞めざるを得なくなって
Aさんは大学卒業後、第一志望の会社に就職することができました。
仕事はやりがいがあり、収入も悪くない。職場には気の合う同僚もいて、結婚しても仕事は続けたいと思っていました。夫にも結婚前からそのことを伝えており
「もちろん。仕事は続ければいいよ」
そう言われていたため、Aさんは安心して結婚を決めたのです。
ところが、結婚生活が始まると、夫の態度は少しずつ変わっていきました。
Aさんの帰宅が少し遅くなると、「仕事と家庭、どっちが大事なの?」と冷たい声で言われるようになり、会社の同僚との食事会に参加しようとすれば、「主婦のくせに、家事をしないで飲み会?」と嫌な顔をされるのです。
さらに、Aさんが仕事で評価されたことを話したときには、「そんなの誰でもできる仕事だろ」と見下すように言われました。夫は、Aさんにとって大切だった仕事を、夫は少しずつ価値のないもののように扱うようになっていったのです。
これは、相手が大切にしている仕事や人間関係を否定し、自信を失わせていくモラハラの特徴のひとつです。モラハラ夫は、自分の考えや価値観を基準にして、妻の仕事や友人関係まで評価しようとします。その中で否定されることが続くと、「私の仕事なんて大したことないのかな」「結婚したのだから、夫を優先するべきなのかな」と、妻は次第に自分の考えに自信が持てなくなってしまいます。
Aさんも最初は、「私はこの仕事が好きだから!」と言い返していました。
でも、夫が毎回口にする、「普通、旦那が自営業だったら、奥さんが手伝うものじゃないの?」という言葉を聞くと、胸の奥がずーんと重くなるようになってゆきました。
実は夫は、夫の父の代からの会社を経営していたのです。自分の会社を手伝うよう言ってくる夫に、Aさんが、「私にも仕事があるから」と答えると、「その仕事、お前じゃなきゃできないの?」「うちは家族でやってるんだから、普通は手伝うだろ」とため息交じりに言うのです。
何度も「普通は」と言われるうちに、Aさんは次第に迷い始めました。自分がわがままなのだろうか。夫の家族になったのだから、家業を手伝うのが当然なのだろうか。
自分の仕事を優先する私は、冷たい妻なのだろうか……。
上下関係をつくろうとするのは、モラハラの大きな特徴
そして結婚して4年目、Aさんはとうとう自分の仕事を辞め、夫の会社を手伝うことにしました。「ありがとう。助かるよ」夫からそう言われたとき、Aさんは少しほっとしたそうです。これで夫から責められなくなる。夫婦で一緒に仕事をすれば、夫も優しくなり、関係もよくなるかもしれない。そんな期待もありました。
しかし、現実は反対でした。Aさんが家業に入ったことで、それまで夫婦の間にあった上下関係に、「社長と従業員」という新たな上下関係まで加わってしまったのです。たとえば、Aさんが仕事のやり方について意見を言ったときのやりとりは、以下のようなものでした。
「誰に向かって言ってるの? 俺が社長なんだけど」
「でも、ここはこうしたほうが効率いいと思って」
「雇われてる立場で、経営に口を出すなよ」
夫婦として意見を言ったつもりでも、夫は「俺は社長だ」と上下関係を持ち出します。会社では夫が社長であっても、夫婦の間にまで上下関係が生まれるわけではありません。夫婦は平等です。
しかし夫は、「自分は社長で、妻は自分に雇われている」という立場を家庭にまで持ち込み、仕事に関係のない「Aさんの意見そのもの」まで、まったく聞こうとしなくなっていったのです。
夫婦の間に、仕事上の立場まで持ち込んでしまうと、対等な関係は崩れていきます。会社では社長と従業員であっても、家庭では夫婦です。本来、妻の意見や気持ちは、仕事上の立場とは関係なく尊重されるべきものです。それなのに「自分のほうが上だ」という意識が家庭にまで持ち込まれると、妻は少しずつ「何を言っても無駄だ」と感じ、自分の意見を口にすることさえ諦めてしまうようになります。
本編では、「妻なら家業を手伝うのが普通」と言われて自分の仕事を辞めたAさんが、夫の会社で働き始めたことで、夫婦の関係にまで「社長と従業員」という上下関係を持ち込まれていった経緯についてお届けしました。
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では、仕事だけでなくお金や時間まで夫に支配されるようになったAさんが、自分の置かれている状況に気づき、少しずつ自立に向けて動き始めるまでについてお伝えします。




