
夫婦は「最も近い他人」と言われます。一つ屋根の下で暮らし衣食住を共にしますが、育ってきた環境も違えばモラルも異なります。法務省の司法統計によると、家庭裁判所に調停を申し立てた妻の離婚理由のうち「性格が合わない」「精神的に虐待する」が約7割を占めており、多くの女性が夫のモラルハラスメント(モラハラ)に苦しんでいます。今回ご相談に来られた高井琴音さん(42歳)も、夫の特殊なモラハラによって心身を蝕まれていた一人でした。
※画像はイメージ写真です。
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:高井浩平(44歳) → 会社員(年収650万円)
妻:高井琴音(42歳) → 無職(パートタイマーを辞めたばかり)☆今回の相談者
夫婦の子:高井天音(8歳)→ 小学生
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #25】
4人に1人が被害に…妻を混乱させ追い詰める「あまのじゃく型モラハラ」の恐怖
夫婦間のモラハラに関する実態調査によると、モラハラを受けた経験のある妻は28%と、およそ4人に1人にのぼります。具体的には人格否定や大声での威圧、会話の拒否などが挙げられますが、琴音さんの夫の場合は「妻の希望や行動と真逆のことをする」という極めて厄介な「あまのじゃく型」でした。
夫は現状維持を好む保守的な性格で、食生活においても変化や新しい味付けを嫌い、琴音さんの配慮をことごとく踏みにじりました。例えば、夫の疲労を気遣った琴音さんがAIで調べたバルサミコ酢を使った手作りドレッシングをサラダに出すと、食べ慣れない味に「こんなもの食べられるか!二度と出すな!」と激怒。そこで後日、豚バラ肉をバルサミコ酢と醤油で煮込んだ料理を作った際には、前回の反省を生かして夫の分を作らなかったところ、今度は「なんで俺の分がないんだ!」と逆上したのです。
「何をやっても怒られる」…洗濯の片付けで見せた夫の理不尽な態度
理不尽な嫌がらせは料理だけに留まりません。ある日、琴音さんが夫の負担を減らそうと、ベランダから取り込んだYシャツをクローゼットへ片付けると、夫は「そこじゃない!」と一喝。仕事用とプライベート用の収納場所が違っていたためですが、琴音さんが素直に謝罪すると「お前には任せておけない」と突き放されました。
そこで琴音さんが衣服の片付けを夫に任せてそのままにしておくと、今度は「ホント、お前は何もできないんだな」と呆れ顔で吐き捨てる始末。良かれと思ってやっても怒られ、手を出さなくても責められる。逃げ場を失った琴音さんは疑心暗鬼に陥り、夫に話しかけることすらできなくなってしまいました。
▶「実家へ帰って」…妻が胸に秘めていた真の狙いとは?
「実家へ帰って」の打診から一転……妻が胸に秘めていた真の狙いとは?
常に夫の存在に怯えるようになった琴音さんは、心身のバランスを崩してパートも退職。呼吸が激しくなりパニックを起こしそうになる限界の中で、夫に「しばらく実家に戻ってほしい」と頭を下げました。すると夫は「そんなことを言われて一緒にいられるか!」と激怒し、自ら家を飛び出していったのです。
取り残された琴音さんと8歳の息子。一見すると冷却期間のようですが、琴音さんの真の狙いは別にありました。「戻ってきてほしくない。このまま息子と二人で暮らしたい」と、最初から離婚を見越して夫を家から追い出していたのです。
しかし、現実は甘くありません。自宅マンションの所有者は夫であり、住宅ローンも夫名義。パートを辞めて無職となった琴音さんに毎月8万円のローンを支払っていく余裕はどこにもなかったのです。
ここまでは、あまのじゃくなモラハラ夫に追い詰められた琴音さんが、自宅から夫を排除するまでをお届けしました。続く後編では、無職の妻が夫名義の家に住み続け、住宅ローンを払わせながら離婚を有利に成立させた「法的な逆転手腕」について、行政書士の露木幸彦さんに詳しくお聞きします。
>>後編につづく
『「夫名義の4200万円マンション」からモラハラ夫を追い出し、離婚成立! 無職の妻が、実質タダで住み続けるためには【行政書士が解説】』




