
「会社を辞めたい」と思ったとき、多くの人が真っ先に不安を感じるのが、収入が途切れる期間の生活ではないでしょうか。次の仕事がすぐに決まるとは限らない状況で、どのくらい貯蓄を用意しておけば安心なのでしょうか。
本記事では、元転職エージェント勤務で「退職学」の研究家として活動する佐野創太氏が監修した書籍から、安心して退職・転職に踏み出すために必要な生活費の目安と考え方を紹介します。
※本記事は書籍『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本』(佐野創太:監修/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
安心して辞められる貯蓄額は?
退職を考えるとき、不安なのは収入がなくなることです。次の仕事が決まるまでは貯蓄を取り崩すことになるわけですが、どのくらいの蓄えがあれば気持ちのゆとりを持って無収入生活に入れるのでしょうか。
目安になるのは、1年分の生活費の蓄えがあるかどうかです。「転職するのに1年もかかるの⁉︎」と思う力もしれませんね。早い人なら1カ月ぐらいで転職をかなえることもありますから、確かに1年は長い。
けれども、安心して辞めることを考えるなら、ある程度まとまったお金が必要です。
お金の不安からあわてて転職すると、またすぐに辞めたくなる悪循環に陥ってしまうかもしれません。
目安は200万円前後
たとえば20〜30代で都市部に住んでいて、独身の一人暮らしと想定してみましょう。総務省の家計調査(※)では1カ月の生活費ば約16万5000円となっています。さまざまなデータでも目安は15〜20万円。必要な貯蓄額は180万〜240万円になります。
実家に住んでいて家賃がかからない、転職先が見つかるまでは近所でアルバイトをするつもりなど、人によって生活費として必要な貯蓄額は違ってきますが、目安として心に留めておきましょう。
※総務省家計調査:総務省統計局が毎月行っている調査。全国約9000世帯を対象に、家計の収入、支出、貯蓄、負債額などを調査している。単身世帯の調査結果は、四半期ごとに公表されている。
1年分の生活費があれば心強い

都市部に住む若年独身一人暮らしの想定で、1カ月の生活費はこのくらい。家賃を払い、きちんと食べて、水道光熱費や通信費などのインフラにかかるお金も計上しています。15万円だとギリギリ、20万円は比較的ゆとりのある生活イメージ。
10年勤めた会社を辞めたときの退職金が350万円。貯蓄も300万円ほどあり、無収入になることに不安はありませんでした。
(36歳・小売りバイヤー→コンサルティング会社)
実家住みでした。貯蓄は150万円ぐらい。それまで実家に月5万円入れていましたが、転職活動中は免除に。仕事が決まり、親に高いお酒を贈りました。
(29歳・営業職→営業職)
退職したときの貯蓄は30万円あるかないか。安月給にほとほと嫌気がさして辞めてしまいましたが、あっという間にお金がなくなり親に泣きつきました。
(26歳・設備保守→営業職)
※取材リサーチ時のコメント。
▶「無収入」の間の生活費の内訳は?
無収入の間の生活費の内訳
2大支出は家賃と食費。通信費も絶対必要な支出です。20〜30代・独身1人暮らしの生活費15万〜20万円の内訳を、もう少し詳しく見ていきましょう。
総務省家計調査によれば、34歳までの単身世帯の1カ月の支出平均は16万6480円となっています。その内訳は下のグラフに示したとおりです。この調査対象は全国ですが、都市部ではもう少し住居費の割合が高くなるのではないでしょうか。若年層の一般的な生活費の内訳は、次のようなイメージです。
・家賃7万5000円
・食費4万円
・水道光熱費1万円
・通信費1万円
・その他3万〜6万円
家賃の負担はなかなか大きいですが、無収入だからといって支払わないわけにはいきません。安いところに引っ越すとしても、引っ越しにはそれなりにお金がかかります。
食費、水道光熱費、もはやインフラとも言える通信費(スマホ代)も、大幅な減額はむずかしい。無収入の間、引き締める余地があるとすれば「その他」の部分ということになりそうです。
娯楽費・その他は引き締めの余地あり?
貯蓄を取り崩しながらの転職活動は心細いもの。支出はなるべく減らしたいですね。外食やデリバリーですませていた食事を自炊にする、習いごとを一時的に休むなど、「娯楽・その他」の項目を見直して、貯蓄の目減りを抑えましょう。
ここまでの記事では、「無収入期間の生活費の目安」についてご紹介しました。つづく関連記事では、「未経験職種に挑戦したい」場合の方法についてお届けします。
つづき>>未経験職種への挑戦は、何歳くらいまでなら可能?専門家が教える「成功のカギ」と「転職以外の選択肢」
■佐野創太(さの・そうた)
「退職学®(resignology)」の研究家/メルマガ「キャリアの研究室」編集長
1988年、静岡県浜松市生まれ、神奈川県横浜市育ち。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、2012年に大手総合人材系企業に新卒入社。転職エージェントとしてベンチャー企業から大手企業の中途採用と求職者の転職を支援する。その後シンクタンクに転職するも1カ月で早期退職。前職に契約社員として出戻り、正社員になった後に新規事業の責任者として求人プラットフォームを立ち上げ、Webメディアの編集長と採用担当を兼務する。介護離職を機に2017年、退職学®の研究家として独立。自身が「会社辞めたい」ループに陥った経験と、のべ1500 名以上のキャリア相談から「退職後も声をかけられる最高の会社の辞め方」を体系化した。
ミュージシャンや経営者へのインタビュー、大手結婚相談所のオウンドメディア編集長、キー局の新サービス立ち上げなど、メディアと編集の現場を渡り歩くなかで生成AIの可能性に注目。 自分の仕事をAIに自ら置き換える「AI退職」を実践しながら、2022年からAIコンサルタントとしても活動。地方新聞社の新規事業開発、地方銀行のAI導入、出版ゼミのAIサービスの立案、大手人材系企業の採用広報AI制作などを手掛けることで、人間らしい働き方を探る実験を続けている。
著書に『脱 会社辞めたいループ 辞めたいけど辞めたくない人のための転職思考法』 (サンマーク出版)、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)、『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)、『「考えているのに進めない」がなくなる 思考渋滞から抜け出す方法』(あさ出版)、監修書に『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)がある。妻と子どもの3人暮らし。GLAYが好き。





