
リモートワークや副業、AIの進化など、これまで当たり前だった「仕事」の在り方が変わりつつあり、変化するスピードの速さに「このままで大丈夫?」「今後も同じように働けるのかな」と不安になることはありませんか?
しかし、総資産“数百億円”を築いた実業家・投資家・映画プロデューサーの嶋村吉洋氏は非対面のコミュニケーションが台頭する現代においても、「人は、誰かとのつながりの中でしか本当の力を発揮できない」と指摘します。
実際のところ、働き方や会社はどのように変化して、私たちはこれからどんなスキルを高めるべきなのでしょうか。本記事では、嶋村氏のビジネス論をまとめた著書から、「これからの時代に求められる働き方」を紹介します。
※本記事は書籍『人生100年時代を生き抜くための億万長者のコミュニティ資本論』(嶋村吉洋:著/プレジデント社)から一部抜粋・編集したものです
「会社」という集団の意味は、これから変わっていく
人は、誰かとのつながりの中でしか、本当の力を発揮できない生き物だと私は思っています。
これまでは、その「つながり」を「会社」という枠組みの中で築いていくのが一般的でした。ただし、こうした時代は少しずつ変わりつつあります。理由はいくつかありますが、私が最近特に強く感じるのは、仕事の進め方が「同期型」から、「非同期型」へと大きくシフトしていることです。
聞き慣れない言葉だと思う読者もいるかもしれませんので、少し説明します(図1)。
かつての会社では、社員が同じ場所・同じ時間に集まって働く「同期型」が当たり前でした。会議も新製品・サービスのプレゼンテーションも、メンバー全員が顔を合わせて意見を出し合いながら進めていくのが普通だったわけです。
ところが、コロナ禍で社員間の非接触が奨励されるようになったことをきっかけに、非同期型の働き方が急速に広がっています。
これは「アシンクロナス・ワーク」とも言われ、メンバーが場所も時間もバラバラの状態で、「Slack」や「Google ドキュメント」「LINEオープンチャット」などの機能を活用して、仕事を進めていくスタイルです。
「非同期型」のほうが結果を出しやすい
もう少し具体的な例を使って説明してみましょう。たとえば、レストランの新デザートメニュー開発のプロジェクトを想像してください。
まず料理長が自分の考案したメニューのコンセプト案を作成し、それを「Googleドキュメント」を使って共有します。そして、パティシエや仕入れ担当者、マーケティング担当者など、関係するメンバー全員が自分の都合の良い時間にコメント機能で意見を書き込みます。
試作品の写真や材料の分量は「Slack」の専用チャンネルで共有し、各自が気づいた点や改善点をスレッドでフィードバックします。日々の進捗はLINEのオープンチャットで報告し、メンバーはリアクション機能で確認済みであることを伝えます。
このように、メンバー全員が同じ時間帯・同じ場所に集まらなくても、ドキュメントやチャットを通じて各自が作業を進められるため、店舗の営業時間やメンバーのスケジュールにとらわれず、効率的にプロジェクトを進行することができるのです。
コロナ禍が過ぎ去った今も、こうした非同期型のコミュニケーションが、ビジネスの世界では定着しつつあるように感じます。実際、本記事の原稿も「Google ドキュメント」上で私のコミュニティの複数のメンバーに共有し、皆の意見を出してもらいながら仕上げています。
もっとも、このような「非同期型」の仕事の進め方を大会社の年配社員にお願いすると、いまだに「Google ドキュメントを使ったことがありません」とか「SNSは苦手です」といった反応が返ってくることも少なくありません。
関係するメンバー全員がリアルタイムで同じ場所に集まって打ち合わせしようとすると、メンバーが多ければ多いほど、日程調整だけで何日もかかってしまうことがあります。何事もスピードが重視される現代にあって、非同期型のほうが結果を出しやすいのは自然な流れかもしれません。
実際、ハーバード・ビジネス・スクールの教授で、『Remote Work Revolution』の著者であるセダール・ニーリー氏は、非同期型の働き方は「デジタル経済に沿った、まったく新しい考え方だ」と述べています。
▶ AIやロボットに置き換わる職種って?
「株主優先」の時代へ
もう一つの大きな変化は、上場会社が「社員のもの」から「株主のもの」へと性質を変えつつあることです。会社の経営者や実務家を対象とした独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の調査では、会社の主権(誰のための会社か)に関する意識が変化しています。
具体的には、会社の主権を「株主派」「従業員派」「中間派」の3つに分類し、過去10年間での変化を評価しています。この調査によると、株主を重視する「株主派」の割合が増加傾向にあり、従業員を重視する「従業員派」の割合が減少しています。
会社は本来、株主が資金を出し合って成り立っているので、株主の利益を最優先するのは当然だと思います。
どんなに社内の結束が強くても、利益を出せない組織は解体されるし、効率や生産性が重視され、仕事仲間の新陳代謝も激しくなっていく傾向が強まっています。古き良き時代の「家族経営」的な温かい人間関係を会社に求めるのは、これからの時代は難しくなっていくはずです。
もちろん、非上場会社や中小企業で働く選択肢もありますし、自身の技術やスキルを高めて「あなたがいないと困る」と思わせることができれば、これまでどおり働いていける業界も残るでしょう。
世界の労働者「約4分の1」の仕事がなくなる?
ただ、「高めるべきスキル」自体にも大きな変化が起きています。AI(人工知能)技術の進歩によって、多くの仕事が人間からAIやロボットに置き換わろうとしています。
大和総研の2024年の分析では、とりわけ生成AI(文章、画像、音声、動画などの新たなコンテンツを生成する人工知能の一種)の発展により、全体の約20%の仕事が「代替グループ」に分類されると指摘されています。
この「代替グループ」に該当する職種は、主に定型的でルールベースの業務が中心となるものです。具体的には、以下のような職種が挙げられます。
・一般事務職……データ入力や文書作成など、定型的な業務が中心であり、AIによる自動化が進んでいます。
・パラリーガル(法律事務職員)……契約書の作成補助や法律文書の整理など、ルールに基づいた作業が多く、AIによる代替が可能とされています。
・プログラマー……特定のルールに従ったコーディング作業は、生成AIによって自動化される可能性があります。
・データ入力作業者……大量のデータを手作業で入力する業務は、AIによる自動化が進んでいます。
・秘書……スケジュール管理や会議の調整など、定型的な業務が多く、AIによる代替が進む可能性があります。
・経理事務……仕訳や帳簿の作成など、ルールに基づいた作業が中心であり、AIによる自動化が進んでいます。
・貿易事務……輸出入の手続きや書類作成など、定型的な業務が多く、AIによる代替が可能とされています。
これらの職種は、業務内容が定型的であり、自動化が比較的容易であるため、AIに代替される可能性が高いと言われています。特に、金融業や不動産業では、代替グループの割合が協働グループを上回る傾向が見られ、雇用にマイナスの影響が示唆されています。
また、国連の専門機関の一つ、国際労働機関(ILO)の2025年の報告書によると、世界の労働者の約4分の1が、将来的に生成AIによって、仕事の一部または大部分を代替される可能性があるとされています。
では、AIにはできず、人間にしかできない仕事とは何でしょうか。これはよく議論になるテーマですが、一般的には創造性や共感力、倫理的な判断といった、人間特有の能力はAIで代替できないとされています。
こうした人間特有の能力を発揮するには、やはり他者とのリアルなつながりが不可欠です。たとえ従業員として会社に所属していたとしても、これからは「何らかのコミュニティに属していること」がますます重要になっていくはずです。
ここまでの記事では、主に「これからの時代に求められる働き方」についてご紹介しました。つづく関連記事では、嶋村氏の過去と「コミュニティ」の考え方をお届けします。
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著者:嶋村吉洋(しまむら・よしひろ)
実業家。投資家。映画プロデューサー。10代で起業し、現在はさまざまな分野で多角的に活躍中。投資家としては、阪急阪神HD、サイバーエージェント、テレビ東京、朝日放送HDなど数社の大株主となり、2025年9月末時点における総資産は数百億円に上る。また、ソーシャルビジネスコミュニティ「ワクセル」を発足。1,500名に及ぶコラボレーター(協力者)が参画し、100以上のプロジェクトを創出している。さらに、ワールドセールスを狙った映画製作においても、エグゼクティブプロデューサーとして関わった作品が、アメリカやヨーロッパ、韓国などの国際映画祭で受賞を重ね、最新作はネットフリックスで6か国の1位と2位、アメリカの配信で初登場第1位にランクインしている。著書に『となりの億万長者が17時になったらやっていること』(PHP研究所刊)など。





