更年期症状を悪化させる背景とは。30年前は「家庭を維持するストレス」だったが、2026年は?メノポーズカウンセラーが語る「変化」 | NewsCafe

更年期症状を悪化させる背景とは。30年前は「家庭を維持するストレス」だったが、2026年は?メノポーズカウンセラーが語る「変化」

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更年期症状を悪化させる背景とは。30年前は「家庭を維持するストレス」だったが、2026年は?メノポーズカウンセラーが語る「変化」

東京・銀座の女性医療専門医院「小山嵩夫クリニック」は、更年期医療の草分けのひとつ。黎明期の1996年に開院し、以降30年に渡ってカウンセリング重視の治療を行ってきました。

1997年、オープン2年目の小山嵩夫クリニックに参画したのがメノポーズカウンセラーの江藤亜矢子先生です。看護師・公認心理師・メノポーズカウンセラーの3分野にまたがる専門性を生かし、更年期カウンセリングという分野を切り開いてきた江藤先生が、30年に渡って見つめてきた「更年期医療の変化」を伺います。

26歳女性が更年期世代の女性に「心を寄せる」、そんなことができるの?

新卒で入職した大学病院の3年目で、看護師としてのキャリア形成に思い悩んだという江藤先生。

「当時は男女雇用機会均等法の施行から約10年、女性の社会進出も進む中、落ち着いた成熟女性である更年期世代の医療を専門にしたいとは思っていたのですが、当時はまだ更年期という言葉自体が広く知られていなかった時代です。そんな中、新聞記事をきっかけに、先進的な更年期医療を手掛ける小山先生のクリニックに97年に飛び込みました」

小山嵩夫クリニックは96年の開業初年度、すでに1年待ちになるほど多くの女性が訪れていました。まだいくつかの大学病院にしか更年期外来のない時代、クリニックで専門的な更年期診療をうけられることが先進的な取り組みだったのです。しかし小山先生は「理想の更年期医療のためにはカウンセリングに時間をかける必要がある」と、結果的に2年目で自費診療へと切り替えました。江藤先生の参画はこの変革のタイミングですが、当時はまだ26歳。親世代である更年期女性の気持ちに心を寄せるのは難しかったのではないでしょうか?

「確かに、ごく最初のころは迷いもありました。しかし、医療では『同じ体験をしていること』がマストではないんです。例えば老年看護を考えてみても、ご高齢の方の気持ちをすべて理解することが難しくても、加齢によって体と心がどう変化するのかを学べば、その知識をもとに不自由さに心を寄せることはできますよね。おそらく医療に限らずどの分野も同様だと思うのですが、こうした『専門的理解』を深めていけば、どのような場合も自分の役割を果たせることに気づきました」

特に役立ったのが、人間の健康や不調を、体だけでなく、その方の気持ちや生活環境なども重なり合って影響しあうものとして捉える考え方でした。この「生物・心理・社会モデル」が示すのは「不調の原因は1つではない」ということ。かつて更年期医療の現場では医学的対応が中心でしたが、徐々に、心理的側面や生活背景も含めて捉える重要性が認識されるようになり、現在では更年期の不調を理解するうえで欠かせない考え方になっています。

「まさに更年期症状は、身体のホルモンの変化だけでなく、その方の性格や気質、日常生活などがからみあって現れます。でも、ご本人にとっては突然の変化ですから驚き、混乱してしまう。だからこそ、こうした考え方をもとにいま起きている状況を整理し、いっしょに最適な治療へと進んでいくんです。この、『ともに考え、いっしょに進んでいく』という関わり方は今もずっと変わらず大切にしています」

たとえば、勤務数年で江藤先生のお母様にも昼夜問わずホットフラッシュが現れ始めていたものの、当初は更年期とは認めず、「部屋が暑いだけ」「冷房が効いてない」など受け入れてくれなかったそうです。気分の落ち込みやいら立ちも強くご家族との関係にも影響が出ていました。お母様の中では、それらをひとつの変化として結びつけて捉えることも知りませんでした。そこで、いま何が起きているのかを共有した結果、まだ更年期での受診が一般的ではない時代に、お母様を定期的な通院と投薬治療につなげることができたといいます。

「そんな具合で、当時は私たち医療者側も、患者さんも、更年期というものに対して手探り状態でした。でも、手探りしながらも1つ1つ積み上げながら前に進んでいる手ごたえがありました」

30年前の女性は「家族のため」に来院した。いまは「仕事と家庭が回せない」から来院する

この30年でのいちばんの変化は「更年期にまつわる情報を入手する方法」だと江藤先生。1990年代に普及が始まったインターネットは2000年代に加速、2010年ごろからは誰もがスマホを手にしてネット検索をできるようになりました。

「2000年初頭の女性医療ブームを経て、2010年ごろからは更年期の情報を取りやすくなったぶん、来院する世代が少し若くなり始めました。さらに、医療関係者による啓発やメディアでの発信を通じて、女性の健康を生涯にわたって捉える『ライフコースアプローチ』という考え方が広まったことで、ご自身の変化を早い段階から意識する女性が増えたことも受診行動の変化につながったと思います。その流れに続くのが2020年頃からのフェムテックの広がりです。来院する女性の更年期に対する捉え方や受診のきっかけも変わってきているように感じます。ただ、世代が変わっても来院される方の訴えや不安はそこまで変わらないのも特徴です」

訴えは変わらなくても、訴えの「背景にある内容」が変化してきていると江藤先生。それはどういう意味でしょう?

「痛み、ストレス、イライラ、うつうつとした気分、そういった訴えは昔も今も大きく変わりません。しかし、なぜそうした不調が現れているのかという背景が変わってきたのです。例えば30年前ならば来院は家庭を支える専業主婦がメインで、ご自分のためではなく家族のための来院でした。『自分の体をどうにかしないと家庭が回せない』、このストレスが体に出ていたのです。しかし、いまは働く女性がメイン。『自分のために自分の体をどうにかしないと、仕事も家庭も回せない』と受診するのです」

似たような症状でもその背景にある要因が異なるため、医療サイドのアプローチも変わるのだそうです。じつは2010年ごろまで、まだまだ女性のライフコースは「仕事と結婚、どちらを選ぶ?」という選択でした。

「それまでは家庭に入った主婦に加えて、仕事を選んだ一部の女性たちが『キャリアを選んだのだから自分の体は自分で守る』という意識のもと、時間や費用も含めて主体的に健康増進に取り組もうと来院されていました。しかしその後はこうした意識がより多くの女性に広がっていったように思います。日々コツコツと努力をしながら環境に適応していく、女性のしなやかな力を感じています」

更年期を機に「手放すもの」を一緒に考える。更年期支援とは「生き方の自己決定」を支えること

2022年、江藤先生は看護師業25年の節目にこれまでの経験をとりまとめ、カウンセリング室「メノスマイル」を設立しました。更年期専門のカウンセリングをメインに、看護師としての医療連携も続けます。また、現在は臨床と教育の中で培った知見を社会に実装していく取り組みとして、更年期女性のヘルスリテラシー向上にも力を注いでいます。

「『美容室はまちの保健室』というプロジェクトでは、美容師の方々に『更年期ヘルスケアアドバイザー』という資格を取得していただくための講座を担当しています。美容室は更年期世代の女性が定期的に訪れ、『髪が細くなった』『ボリュームが減った』など、悩みを自然に相談できる場所。こうした変化も女性ホルモンのゆらぎに関連していると知っていただきたいのです。このように、更年期世代の女性が気軽に頼れる先を1つでも増やしていくことを、同じ思いを持つ方々とともに広げていくことが、これからの私のライフワークのひとつだと考えています」

江藤先生は自分に合った治療を納得して選ぶ「意思決定支援」の実践に早くから取り組んできた専門家としても知られています。中でも代表的な取り組みは日本で初めて開発した「HRT(ホルモン補充療法)意思決定ガイド」。

「『HRT意思決定ガイド』は、更年期の不調に悩む女性がメリットとリスクを正しく理解し、ご自分の価値観に照らしてHRTを受けるかどうかを考えるためのコミュニケーションツールです。日本の更年期医療でも、近年は医療者と女性が治療について話し合う『シェアードデシジョンメイキング(協働意思決定)』という考え方が注目されています。『自分はどのような状態を目指したいのか』を軸にしながら、治療選択について一緒に考えていきます。また更年期の支援は薬物治療に限られたものではなく組み合わせることでも効果は高まります。カウンセリング、運動、栄養、リラクセーションなどあらゆる要素が役立ちます」

前述のとおり、クリニックを初診で訪れる女性の年齢にも変化が見られます。20年以上前ならば更年期症状がピークとなる50歳前後の方が中心でしたが、いまはできる限り対策を取りたいとやや早い段階でご相談に来られる方も出てきています。

「その一方で、更年期を過ぎて身体がラクになったみなさんは、生涯現役の気持ちがより強くなり、さらにいきいきと暮らしている印象があります。実際に80歳代の女性が『いま私は元気だから、もっと元気になりたくて』と受診する時代なのです。60代以降はそれまでどのように自分の身体と向き合ってきたかによって健康状態に差が出やすくなりますし、30年前の70代女性といまの70代女性は健康状態も、健康意識も大きく変わってきていると感じます」

更年期は「乗り越える」より「再調整」する時期です!

以前は更年期に対して「乗り越える」という言葉を使っていたのですが、最近は表現を変えました、と江藤先生。

「再調整と呼ぶようになりました。更年期は、これまでの過ごし方とこれからの生き方の違いを見極めて整え直していく時期なのです。私が『メノスマイル』を『更年期コーディネーションルーム』と名づけたのも、その思いからです。これからは女性が自分の状態に合わせて再調整を重ねながら、自分にあった選択をしていくことを支える意思決定支援が、より重要になると考えています。これまで多くの女性がどこか受動的に『自分がやらないと家庭も職場も回らないから』と引き受けてきた役割がたくさんあると思うのです。更年期はそれらを整理して、自分らしいあり方や役割を自分自身で選び直していく機会でもあります。そのような選択が尊重される社会に変えていきたいのです」

更年期は決して怖いものではなく、この先の人生をいかに過ごすかを見つめる時期。どうすれば健やかな日々を続けていけるのか、そのために積み重ねていく習慣を考え、不要な習慣を手放していくタイミングだと言います。

「こうして調整を重ねながら人生の質を高めていく。そんな時代に変わってきているのです」

つづき>>>更年期に「自分の人生の再調整」をする方法とは?カウンセラーが教える「とっておきのポイント」


《OTONA SALONE》

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