6月11日より、いよいよ「FIFAワールドカップ2026」が開幕する。今年は初の試みとして、カナダ・メキシコ・アメリカ合衆国の3か国が共同開催。出場国は過去最多の48チームへと拡大され、史上最大規模のワールドカップとして各国が熱戦を繰り広げる。各チームや試合への注目が高まっている一方、話題を集めているのが、7月19日(米国時間)にニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで開催される決勝戦でのハーフタイムショー実施だ。これはFIFAワールドカップ史上初の試みで、ショーの模様は世界に向けてライブ配信されるという。そこで本記事では、今年初めて導入されたハーフタイムショーに着目。ヘッドライナーを務めるアーティストや「スーパーボウル」のハーフタイムショーとの比較なども交え、今年のワールドカップと音楽の繋がりについて考えてみたい。
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【サッカー×ハーフタイムショーを巡る近年の動き】
FIFAワールドカップの歴史上初めて決勝戦に導入されるハーフタイムショーは、世界的ロックバンド・Coldplay(コールドプレイ)のChris Martin(クリス・マーティン)がキュレーターを務める。ヘッドライナーは、Madonna(マドンナ)、Shakira(シャキーラ)、BTSの3組。世界を代表するアーティストが揃い踏みだ。さらに、「セサミストリート」の仲間たちやウォルト・ディズニー・カンパニーの映画「ザ・マペッツ」の個性豊かなキャラクターも加わり、ハーフタイムショーを盛り上げるという。
ここで近年の国際的なサッカー大会がハーフタイムショーを導入した事例を振り返ってみると、2024年の「コパ・アメリカ」決勝戦では、大会史上初のハーフタイムショーとして、シャキーラがライブパフォーマンスを披露。また、2025年には、「FIFAクラブワールドカップ」決勝戦で、こちらも同大会史上初となる公式ハーフタイム・パフォーマンスが実施され、Doja Cat(ドージャ・キャット)やJ Balvin(J・バルヴィン)、Tems(テムズ)といった世界的アーティストがヘッドライナーを務めている。今回の「FIFAワールドカップ」へのハーフタイムショー導入は、こうした近年の動きを見れば、自然な流れと見ることができるだろう。
世界的なアーティストがパフォーマンスを披露するスポーツイベントという点で連想されるのは、やはりNFLの頂上決戦「スーパーボウル」だ。スーパーボウルのハーフタイムショーは試合本編と並ぶほど世界中が注目するショーで、これまでに数々のスターが人々の記憶に刻まれる伝説的なパフォーマンスを残してきた。圧倒的な演出とスケールを誇るショーは、まさに世界最高峰の音楽エンターテインメント。マドンナ、シャキーラ、BTSをヘッドライナーに据えた「FIFAワールドカップ」のハーフタイムショーも、こういったエンターテインメント色の強い内容となることが予想される。
なお、今回のハーフタイムショーは、世界中の子供たちが質の高い教育とサッカーにアクセスできる機会を広げるために1億米ドルの資金調達を目的とした取り組み「FIFA Global Citizen教育基金」の一環。今大会の試合の全チケット売上から1枚につき1ドルが寄付される仕組みだという。マドンナ、シャキーラ、BTSの3組はそれぞれ公式コメントで子供たちの教育支援の重要性を説いており、そういった観点から見ると、ハーフタイムショー導入に込められた社会的なメッセージも感じ取れる。
【マドンナ、シャキーラ、BTSという人選の意味】
「Like A Virgin」「Material Girl」「La Isla Bonita」「Hung Up」など数々の世界的ヒット曲を持つマドンナは、“クイーン・オブ・ポップ”と称される、まさに音楽界の頂点に君臨する存在だ。今年7月3日には、約7年ぶり通算15作目のオリジナル・アルバム『CONFESSIONS II』をリリース予定で、40年以上のキャリアを経てなお進化を止めない精力的な活動を見せている。2012年にはスーパーボウルのハーフタイムショーに登場し、その豪華絢爛なパフォーマンスで観衆を魅了した姿が印象に残っている人も多いことだろう。今回のワールドカップのハーフタイムショーでも、実力と経験に裏打ちされたパフォーマンスで眩いほどの存在感を放つことが期待される。
Madonna – 2012 Super Bowl Halftime Show
母国コロンビアから世界的なトップスターへと上り詰めたラテンポップの女王・シャキーラは、FIFAワールドカップとの関係性が深いアーティストと言えるだろう。2010年のFIFAワールドカップ・南アフリカ大会公式ソングに起用された「Waka Waka (This Time for Africa) 」は大ヒットを記録。今年のFIFAワールドカップのテーマソングにも、現代のアフロビーツシーンを牽引するBurna Boy(バーナ・ボーイ)とコラボレーションした「Dai Dai」が決定し、5月24日に公開されたMVが現時点で7000万回以上再生されるなど高い注目度を誇っている。思わず踊り出したくなるようなラテンの魅力にあふれる音楽は幅広く支持されており、ワールドカップの舞台でも多くの人々の心に響くはずだ。
Shakira, Burna Boy – Dai Dai (Official Video)
そんな押しも押されもせぬ2人の歌姫と並び、新しい風を吹かせるのがBTSだ。2013年にデビューし、韓国を代表するトップクラスのボーイズグループからグローバルスターに躍り出た彼らは、メンバー全員が兵役を終え、今年3月から本格的に活動を再開。同月にリリースした5thアルバム『ARIRANG』のタイトル曲「SWIM」が、グローバルな音楽配信プラットフォーム・Spotifyで累計再生回数5億回を突破するなど、その勢いは留まることを知らない。2022年のFIFAワールドカップ・カタール大会では、メンバーのJung Kook(ジョングク)が公式サウンドトラック「Dreamers」を担当した繋がりもあり、今回はグループとしてその音楽がどのように接続されるのか注目だ。
정국 Jung Kook (of BTS) featuring Fahad Al Kubaisi – Dreamers | FIFA World Cup 2022 Soundtrack
今回のヘッドライナー3組は、グローバルポップス(マドンナ)、ラテン(シャキーラ)、K-POP(BTS)と、それぞれ異なる音楽ジャンルを象徴するようなアーティストであることが興味深い。FIFAワールドカップはサッカーを通して世界中を熱狂させ、人種や国境を越えたコミュニケーションを生み出す。そんな場所だからこそ、より多くの人々に音楽を届けるべく、異なるステージで活躍するアーティストが選ばれたのではないだろうか。もっとも注目が集まる決勝戦のハーフタイムショーで、ヘッドライナーの音楽は世界に向けて響き、観る者に一体感をもたらすだろう。
【ワールドカップが“音楽フェス”に?】
ところで、音楽ジャンルの垣根を越えてアーティストが共演を果たす場と言えば、フェスをイメージする人も多いだろう。ワールドカップとフェスには他にも共通点があるように思う。サッカーでは、サポーターが応援歌を歌ったり、コールをしたりする“チャント”が特徴的。チャントを通して一丸となって声を出すことで、サポーターは熱い応援の気持ちを選手に届けると共に、一体感や臨場感を味わえる。一方、フェスでも、アーティストと客席が曲を大合唱する“シンガロング”の気持ちよさがある。音楽を通して観客が一つになるという点で、両者には通じるものがある。
音楽の力で一つになるというメッセージは、FIFAワールドカップの公式アルバムからも伝わってくる。今年のサッカー・FIFAワールドカップ2026公式アルバムには、アメリカ・アトランタ出身のラッパー・Future(フューチャー)と南アフリカ出身のTyla(タイラ)によるヒップホップ・アンセム「Game Time」や、LISA(リサ)、Anitta(アニッタ)、Rema(レマ)による楽曲「Goals」などを収録。異なるルーツを持ち、それぞれ別のジャンルで活躍するアーティストが一堂に介したアルバムは、まさに各国の多様な文化や個性を尊重し合う象徴的な舞台であるFIFAワールドカップを体現している。
決勝戦でのハーフタイムショー実施については、通常のハーフタイムである15分を超える恐れがあり、選手のコンディションに影響が出てくるという観点から、疑問を呈する声があがっていると報じられている。確かに、決勝戦の主役である選手が後半戦も万全のパフォーマンスを発揮できるよう、ショーのあり方については充分な議論がされるべきだ。だが、FIFAワールドカップで初めてハーフタイムショーを実施することは、フェスのように音楽を通して人々が結束を深める、意義のある試みだと言えるだろう。FIFAワールドカップは世界最大のスポーツイベントであると同時に、“世界最大の音楽フェス”へ近づいているのかもしれない。




