子どもの自立を妨げる「心のへその緒がつながっている」状態とは?母親が越えがちな「心の距離感」の保ち方【公認心理師が解説】 | NewsCafe

子どもの自立を妨げる「心のへその緒がつながっている」状態とは?母親が越えがちな「心の距離感」の保ち方【公認心理師が解説】

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
子どもの自立を妨げる「心のへその緒がつながっている」状態とは?母親が越えがちな「心の距離感」の保ち方【公認心理師が解説】

子どもが不登校や行き渋りの状態になると、「このままで大丈夫なのだろうか」と親のほうが不安を抱え込みやすくなります。心配だからこそ、先回りして声をかけたり、何とかしようと動いたりして、かえって苦しくなってしまうこともあるのではないでしょうか。

こうした親の揺れについて、公認心理師として20年以上不登校支援に携わってきた植木希恵氏によると、特に「母親は、子どもを自分の延長として感じやすい」と言います。

本記事では植木氏の著書から、子どもの自立にとって大切な「バウンダリー(自他境界ライン)」の考え方を紹介します。

※本記事は書籍『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』(植木希恵:著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋・編集したものです

まずは、バウンダリー(自他境界ライン)を認識することから

バウンダリーと言われて、感覚的に「ああ、あれのことね!」とパッと理解できる人はまだ多くないと思います。

これまでの日本では、「私とあなたは違うよね」と、わざわざ言い合うことは少なかったですし、そこに線を引くことは、「家族なのに」「友だちなのに」「同僚なのに」「近所なのに」水くさい、他人行儀でむしろ失礼というイメージを持たれてきました。

しかし近年、「多様性」として違う生き方を認め合うことが良いとされる社会へと変わってきています。一人ひとりが違った考え方や趣味嗜好を持っているので、どんな考えを持っているかは本人に聞いてみないとわかりません。ある程度は人に合わせられるとしても、自分の生き方を曲げてまで人に合わせる必要はない、という方向に風潮が変わってきています。

その結果、これまではわざわざ断りを入れたり、確認をしたりしていなかった事柄についても、「これまでは聞かなかったけれど、念のため確認しておこう」という態度が、これからはより一般的になっていくでしょう。

私たちは一人ひとりバウンダリーを持っています。それを知ったうえであえて越えるのと、知らずして「人と人とは気持ちや状況を共有するものだ」とか「子どもであるあなたのことを親が決めるのは当然だ」とか「コミュニティの雰囲気に合わせるものだ」と言って、断りもなしに強行突破で踏み越えていくのは違うのです。

母親は、子どもとの間にバウンダリーを認識しにくい

子どもの成長は、親子のバウンダリーがないところから出発します。いわゆるイヤイヤ期はバウンダリーができはじめてきたことを確認できる時期ですし、思春期にはバウンダリーが明確になって、親からの自立が明らかになります。

親から見たら、言う通りにならなくて手を焼く時期なので、「反抗期」なんて不名誉な名前をつけられていますが、子どもにとっては「自我の芽生え期」ですし、「アイデンティティ(自分らしさ)確立期」でもあります。

自分と親は違う人間だと認識できるのは、本来とても素晴らしいことなのです。子どもはどんなときも自立を目指して成長しているので、親はそれを認識して、離れていくのを喜んで支援してあげることが大切です。

つい、子どもが成長しているのを忘れて、子どもを親である自分の付属品のように考えていると、いつまで経っても心のへその緒がつながっている状態になり、子どもの自立を妨げてしまいます。

基本的に子育ての中でバウンダリーを意識していれば、子どもが不登校になったとしてもそこまでお互いにしんどくないですし、行き渋りの兆候が出たときも悪化させなくてすむと私は考えています。

母親にとって子どもは、最初は自分の体の一部です。そのため、子どもを自分自身の延長のようなものと感じてしまうのも仕方のないことかもしれません。何もできない赤ちゃんのころは、泣いたり、目が合ったりといったわずかな反応を親が察知して世話をするという、親子の間にほとんどバウンダリーがない状態です。

ここでしっかりと養育者(多くの場合、親)との間に、目で見えるわけではないけれど、きちんとつながりがあるという実感を持てたからこそ、離れてもつながりが失われることがないと確信できるようになり、その後気持ちよくバウンダリーをつくることができるのです。

つまり、「私とあなたは違うんだよ」の前には、「私とあなたはほぼ一緒だよ」という深くつながる時期が必要だということ。その時期に安心・安全を感じることができたからこそ、離れても1人で進んでいけるようになります。なので、バウンダリーを意識することは、前提としての「深いつながり」を感じることでもあります。

そう思うと、バウンダリーを子どもが強く主張してくる思春期が、愛おしいものに思えてきませんか? もうつながる必要がなくなるくらい、十分に密着したということなのですから。

「自立」とは、子どもが自分で決めて、自分でやってみて、自分でその責任を取ること。親は、あくまで子どもの自立を応援する立場です。応援ということは、実行するのは親ではなく、子ども自身。親は、自分ごとではなく、あくまで他人ごととして、子どもの自立へのプロセスを扱わなければなりません。

そのためには、親子の間にバウンダリーを引く必要があります。そのファーストステップとして、親である保護者のみなさん自身が、まずは自分のバウンダリーを認識してみることからはじめましょう。

自分自身のバウンダリーをすでにあるもの、大切なものとして意識できるようになると、子どものバウンダリーも認識し、尊重できるようになります。

ここまでの記事では、「バウンダリー(自他境界ライン)」が子どもの自立にどう影響するか、その重要性についてご紹介しました。つづく関連記事では、バウンダリーを引くための「じぶんゾーン」という考え方についてご紹介します。
つづき>>子どもの不登校・行き渋りに「干渉しすぎ」はNG!親も子も「じぶんゾーン」がわかるとラクになる⁉【公認心理師が解説】

著者略歴: 植木希恵(うえき・きえ)
公認心理師。20年以上、不登校・発達障害の子どもたちとその家族にかかわる。カウンセラー・心理スタッフとして勤務したフリースクール併設のカウンセリングルームで、多くの不登校の子どもたちにソーシャルスキルトレーニングや心理カウンセリング、進路相談を行う。その後、中学校で講師として勤務した際に不登校や発達障害の子どもと接する機会が増えたため、2014年、広島市にて「不登校・発達障害傾向の子どものための個別指導塾 きらぼし学舎」を開業。1人の子どもに長くかかわるのが特徴で、小学生から高校、大学、専門学校、社会人になってからもカウンセリングを継続しているケースもある。子どもの心理・学習サポートを行うと同時に、母親に子育ての視点を提供する人気講座「お母さんのための心理学講座」をオンラインで開講中。受講生の方から「もし受講していなかったら、不登校の子どもへの対応を誤ったり迷ったりしていたはず」「不登校だから、発達障害だからではないもう一つ上の視点を学び、子どもとの関係が良くなった」という報告が届いている。著書に『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』(主婦の友社)がある。


《OTONA SALONE》

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