酒乱夫に骨折させられたまま出産、勝手に自宅解約。壮絶な離婚後、DV前夫からの養育費6万円の振込が停止! どうしたら支払ってもらえる?【行政書士が解説】 | NewsCafe

酒乱夫に骨折させられたまま出産、勝手に自宅解約。壮絶な離婚後、DV前夫からの養育費6万円の振込が停止! どうしたら支払ってもらえる?【行政書士が解説】

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酒乱夫に骨折させられたまま出産、勝手に自宅解約。壮絶な離婚後、DV前夫からの養育費6万円の振込が停止! どうしたら支払ってもらえる?【行政書士が解説】

筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、養育費の振込が途中で停止する理由は様々。そこで今回、取り上げるのは元妻が再婚した場合です。今回の相談者・松本杏里さんは当時0歳だった息子さんを引き取り、元夫が毎月6万円の養育費を支払うことで離婚が成立。

最初の5年間は約束した金額が振り込まれたのですが、6年目に突然、振込が止まったのです。あわてて元夫にLINEを送ると「再婚したんだろ?それなら養育費は必要ないな」と言われ、途方に暮れてしまったのです。実際、杏里さんは離婚4年前に再婚したのですが、息子さんと再婚相手は養子縁組をしていません。

「主人(現夫)のお給料が3分の2に下がってしまって生活が苦しいんです。何とか元ダン(元夫)に養育費を払わせる方法はないんですか?」と訴えかけますが、0歳児を抱えて離婚に踏み切るなんて、よほどの事情があってのことだったはず。どうして元夫と別れざるを得なかったのでしょうか?

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢や年収、子どもの年齢、DVの経緯や怪我の症状、離婚の条件(親権、養育費、面会など)、再婚のタイミングや養子縁組の有無などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は相談時)>

夫:松本健斗(42歳)会社員(年収500万円)
妻:松本杏里(41歳)パートタイマー(年収110万円) ☆ 今回の相談者
長男:松本翔也(6歳)桔平と杏里との子
元夫:羽田桔平(45歳)会社員(年収500万円)

【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #19 】

養育費を天引きできる、「法定養育費」って?

2026年4月1日から「法定養育費」という新しい制度が始まりましたが、ご存じでしょうか?誤解を恐れずに言えば、子どもの養育費を国が勝手に決めてくれる制度です。どういうことでしょうか?ここでは子どもの母親が(単独)親権を持っている前提で説明しましょう。

例えば、父親の財産を差し押さえて養育費を取り立てるには金額や期間などを取り交わす必要があります。しかし、今回の制度では離婚するにあたり何の約束もしていなくても、毎月2万円なら養育費を回収することが認められるようになりました。具体的には父親が会社員の場合、会社が父親(従業員)に給料を支払う前に、会社が直接、母親の口座に養育費を振り込んでくれます。残った分は父親の口座に振り込まれます。いわゆる、給料の天引きが養育費でも可能になったのです。しかも一度、手続をふめば最終回まで(例えば、子どもが成人するまで)自動的に天引きされてくるので非常に便利です(民事執行法151条)。

統計上(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、養育費の取り決めをしたのは全体の46%、約束を書面化したのは35%、強制執行が可能な書面に残したのは28%です。強制執行というのは元夫が約束した養育費を支払わなかった場合、元夫の財産を差し押さえることができるという意味です。養育費の取り決めをせずに離婚した過半数の人々にとって、法定養育費は朗報です。

このような法改正が行われたのは今まで養育費を回収する難易度が高かったからです。上記の統計によると母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%。
一方、養育費を一度も受け取ったことがないのは57%に達しています。つまり、半分以上の父親は養育費を支払ったことがないことを意味するのです。親としての責任を果たすために交わした約束だと考えると、とても低い数字ですよね。

配偶者からの暴力は10年で2割も増加

杏里さんの場合、妊娠をきっかけに結婚を決める、いわゆる「授かり婚」でしたが、そのことを後悔していなかったようです。ある出来事が起こるまでは…「元ダン(元旦那)は最初、いい人でした。つわりが酷いときは『大丈夫?』って気づかってくれるし、家のことも代わりにやってくれるし、産婦人科にも付き添ってくれました」と振り返ります。

しかし、夫には「いい人」と言い切れない事情がありました。それは、酒を飲むと別人に豹変するからです。例えば、居酒屋で同僚と飲んだくれて帰宅したときは大変です。杏里さんが何も悪いことをしていないのに「ふざけるな、調子に乗るなよ!」「誰のおかげで生活できていると思っているんだ、俺のおかげだよな!」「俺がどんな思いで頑張っているか、お前に分かるのか!」などと罵声を浴びせてくるのです。

夫が悪態をつくのは初めてではなく、何度か同じことがあったようです。そのため、杏里さんは「はいはい、わかったわかった」と、いつもはなだめることでどうにか難を逃れていたのですが、その日は違いました。

夫は両手で杏里さんのことを付き倒し、杏里さんの足を力いっぱいに踏んづけたのです。杏里さんは「お腹はやめて、お腹は!」と胎児をかばうことしかできませんでした。それなのに夫が心配するのは自分のことばかり。「警察を呼ぶなよ、救急車も!どうなるか分かっているんだろうな!!」と、倒れている杏里さんを責め立てたのです。「勤務先の会社や実家の両親にこのことを知られたら困るのでしょうね」と筆者が口をはさむと、杏里さんは悔しそうに大きくうなずきました。そして、「私のことを心配する素振りは全くありませんでした」とポツリ。
結局、救急車を呼ぶことが許されず、タクシーを呼んで足を引きずりながら乗車したそうです。夫と顔を合わせるのはこれが最後になりました。

配偶者暴力相談支援センターへの相談件数ですが、2024年は127,796件。10年前(2014年)は102,367件だったので2割も増えているのは現状です(内閣府の男女共同参画局調べ)。

夫の暴力で妊娠中に骨折、入院。なのに、まさかの仕打ち!

不幸中の幸い。胎児に影響はなかったものの、右足腓骨が折れており、そのまま入院。かかりつけの産婦人科では妊婦が骨折した状態で分娩することが難しく、結局、入院先の大学病院で分娩せざるを得なかったようです。

しかも杏里さんは骨折が治るまで、そのまま入院し続けなければいけませんでした。杏里さんは「こんなことをする夫に赤ちゃんを預けるなんて危険すぎます!」と訴え、退院するまでの間はなんとか病院のNICU(新生児集中治療室)で赤ちゃんをみてもらえることになったようです。
「もしもこの先、彼と一緒にいたら息子を守り切れる自信がありません。もう『父親』はいないものとして育てていこう、そう決めました!」と当時の心境を振り返ります。

出産後に離婚を決意したものの、急に入院したため杏里さんの私物は自宅アパートに置かれたままでした。そして杏里さんが退院する頃、驚くことが判明します。なんと夫が勝手に、すべての私物を処分したうえにアパートを解約し、報告もなく退去していたことが明らかになったのです。つまり、夫も杏里さんとやり直す気はさらさらなかったのです。

産後、退院してすぐ離婚調停を申し立てたものの…

その後、退院した杏里さんは家庭裁判所に離婚調停を申し立てました。しかし未成年の子がいる場合、夫婦のどちらが親権を持つのかを決めなければ離婚は成立しません(民法819条)。今回の場合、当然のことながら杏里さんが親権を持つことに。

そして非親権者は親権者に対して子どもの養育費を支払わなければなりません(民法766条)。今回の場合、夫が杏里さんに毎6万円を毎月末日、息子さんの口座に支払うことを約束しました。とはいえ、夫は赤ちゃんの父親です。杏里さんは「顔を見たいって言い出したらどうしよう」と怯えていたのですが、夫は何も言わなかったので、面会(回数や頻度、場所や送迎方法など)は何も決まらずに調停が成立。そして、そのまま離婚届を提出することになりました。

きちんと振り込まれていた養育費が6年目で止まった!

そして離婚から5年間、毎月6万円が欠かさず、振り込まれていました。そのため、離婚6年目に届いた元夫からの「再婚したんだろ?それなら養育費は必要ないな」というLINEは青天の霹靂だったのです。元夫と接点を持つのは酒乱の状態で暴力を振るわれ、右足を骨折して以来でした。今まで元夫が息子さんに会わせて欲しいと言ってくることもありませんでした。
ちなみに統計上(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、母子家庭で面会交流の取り決めをしているのは全体の30%。取り決めをしない理由として相手と関わりたくない(26%)、相手が面会交流を希望しない(12%)子どもが会いたがらない(7%)が多いです。

元夫からのLINEメッセージを受け取ってから、手をこまねているうちに月末をむかえ、とうとう毎月6万円の養育費の振込が止まってしまったのです。杏里さんが筆者の事務所へ相談しに来たのは、そんな絶望的なタイミングでした。

筆者は「どうして再婚したことを知られたのですか?」と尋ねると、杏里さんは「養育費の振込口座を息子名義にしていたのが失敗でした」と唇を噛みます。離婚当時、振込先は杏里さんではなく息子さん名義の口座のほうが、元夫が愛情を持ち続けてくれるかもしれないと期待していたためです。そして再婚した際、息子さんの口座名義を現夫の苗字に変更したそう。

元夫がATMで養育費の振込手続をする際、振込先の名前が表示されます。おそらく、そこで表示された苗字が変わっていたので、杏里さんの再婚に気付いたのでしょう。今となっては後の祭りです。

関連記事『42歳女性「再婚したけど、前夫からの養育費がないと生活が苦しい」現夫と養子縁組してないなら、養育費はもらえる?【行政書士が解説】』では、杏里さんが養育費をもらえたのかどうか、その理由について引き続き、行政書士の露木幸彦さんに解説していただきます。

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