
2回に渡り「子どものこと」について。今回は子どものスマホ依存に親はどう向き合うかのお話をしています。
【心理学者が教える「8割がんばらない」生き方】#3後編
じつは制限でなく「一気に禁止」がベストだった!? ポイントは「禁止」と言わずに…
子どものスマホ依存症を治したいと思うのなら、少々荒っぽいやり方ではありますが、「制限」でなく「禁止」をおススメします。
同じ「依存症」ということで、アルコール依存症について考えてみましょう。
アルコール依存症の治療では、「吞む量を減らす」(減酒)と、「一滴も吞まない」(断酒)という2つの方法があるのですが、もっとも確実な治療法は「断酒」。最初は辛いと感じるかもしれませんが、少しずつ減らすのではなく、思い切って一切お酒を止めてしまったほうが確実に依存症を断ち切ることができます。
スマホ依存症もそうで、ちょっとずつ「制限」するよりも「禁止」のほうが、結局は依存症から立ち直るまでの期間も短くてすみます。どうしようもないときにだけ(学校からの連絡を確認するときなど)、子どもにはSNSを使わせましょう。
ただし、子どもに向かっては「禁止」でなく、「お休み」という形で持ちかけてください。親から「禁止」と言われると、子どもは感情的に反発します。就学前の小さなお子さんなら禁止でもいいのですが、ある程度の年齢になった子どもは、親からの禁止命令にはむやみに反抗するものですから。
「禁止」も「お休み」もどちらも同じことを言っているのですが、子どもにとっては「お休み」のほうがまだしも受け入れやすいのではないかと思われます。そしてSNSをしばらく「お休み」させると、制限したときと同じように、「なんだ、SNSなんて時間のムダだし、気分もスッキリしていいじゃん」と気づいてくれるはずです。
デンマークにあるコペンハーゲン大学のモーテン・トロムホルトは、1095名の参加者を対象に、1週間、フェイスブックを「お休み」してもらうという実験をしてみました。
では、お休みの結果はどうなったでしょうか。何と、人生満足感とポジティブ感情が高まったのでした。フェイスブックをやっているときには、他人からの目が気になったり、嫉妬を感じて疲れたりしていたのに、1週間のお休みをすると、いちいち敏感な反応をせずにすみ、幸せな気分でいられるのです。
ポジティブな使用法を考えるという手がある。子どもを情報の「発信者」にさせる
最後にもうひとつだけアドバイスをしておきます。子どものスマホ利用を制限、禁止させるのではなく、むしろ積極的に利用させるという解決法もあります。「これまでのお話を全部ひっくり返している!」と思われるかもしれませんが、そういう解決策もあるのです。
オランダにあるマーストリヒト大学のフィリップ・ヴェルデュインは、SNSが私たちの感情に与える効果を調べた論文を総合的に分析し、幸福感を高めたりというポジティブな結果をもたらす場合と、逆に、気分を滅入らせたりというネガティブな結果をもたらす場合があることを指摘し、両者を区別するものは情報の発信者であるかどうかであることに気づきました。
自分からどんどん積極的に情報発信をする場合には、SNSの利用はポジティブな結果をもたらしてくれます。ところが、他の人が発信する情報を受け入れるだけの人は、SNSを利用することでネガティブな感情になっていたのです。
というわけで、子どもには「あなたは情報の受信者ではなく、発信者になりなさい」とアドバイスしてあげるのも悪いことではないのです。
子どもが積極的な情報発信者になってくれるのなら、子どもは毎日、イキイキとした生活を送ることができるでしょうし、喜びや楽しみを感じることも増える結果として、家庭内の雰囲気も明るくなるかもしれません。
子どもにSNSを止めさせるのが難しいのなら、逆に、積極的にやらせてみるのもひとつの手であることを知っておくとよいでしょう。
つづき>>>「子どもがスマホをずっと見てる」「制限を断固として受け入れない」改善のための奥の手、ベターなのは実は…?
(出典)
Hunt, M. G., Marx, R., Lipson, C., & Young, J. 2018 No more FOMO: Limiting social media decreases loneliness and depression. Journal of Social & Clinical Psychology ,37, 751-768.
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