
首都圏の中学受験が過熱するなか、「どうせ受験で苦労するなら早いほうがいい」と、小学校受験を選ぶ家庭も少なくありません。エネルギー系企業に勤務する彩子さん(仮名・49)と、同業者の夫・恭さん(仮名・49)夫妻も、1人娘のKちゃん(10)を小中高一貫校の私立小学校に通わせています。彩子さんと恭さんは、「声を荒げるようなケンカは数えるほどしかない」という物静かな夫婦ですが、Kちゃんの今後の進路をめぐり、産後以来の「10年ぶりの大喧嘩」をしてしまったそうです。
Kちゃんが入学したのは、近隣の小規模私立小学校。小学校受験した背景には、「保育園で私立小学校受験勢が多数派だったこと」と、「環境が良く共働きに手厚い私立が近隣にあったこと」だといいます。
◆内部進学をするか中学受験をするか
せっかく私立小学校に入ったのに「中学受験させる」という夫に唖然
「小学校受験をした理由はいろいろありますが、我が子は近視で4歳からメガネをかけているので、大人数のクラスではからかわれるのではないかという不安もありました。娘が合格した小学校は大学の付属ではなく、中学受験の偏差値もボリュームゾーン。ただ、都心ではないので敷地も広く少人数。先生もおっとりした方が多く、亀やメダカやうさぎを飼ったり、校庭で農作業をしたり。本人はのんびり楽しく過ごしています」
そんな環境のなか、友達に誘われて「なんとなく」4年生から塾に通い始めたKちゃん。
「本人が『お友達が通っていて、スライムを作ったりするイベントが楽しそうだから行きたい』と言い出しました。塾は複数教室を持つ中規模塾で、中学受験にも付属小学校の成績アップにも対応しています。私は苦手科目だけのコースだと思っていたのですが、夫は中学受験コースを契約してきて。
問題は学費です。ただでさえ私立に通っているのに、春期講習が7万円と聞いて、気が遠くなりました。夫は『バレエやピアノ、水泳を休ませればいいじゃないか』と言いますが、何のために小学校受験をしたのかと私は不満です」
◆夫と妻、それぞれの経験に基づく受験への思いとは
内部進学を望む妻と、大学付属中学を受けさせたい夫の食い違い
彩子さん自身は「勉強は得意ではない」と話しつつも、地方の公立高校から一浪して地方国立大学へ進学し、就職で上京した経歴の持ち主です。
「私としては、このまま高校まで内部進学して、ある程度心身が大人になってから大学受験を頑張ってほしい。芸術も運動も部活も楽しみながら、のんびり子供時代を過ごしてほしいんです。だからこそ小学校受験をさせた面もあります。でも、中学受験をして中学から大学までエスカレーターで進み、いわゆるMARCHの希望学部に進学した夫は、まったく違う考え方でした」
恭さんは、自称「得意科目は特になく、コツコツ努力して安定した成績を取り続けるのが苦ではないタイプ」。
「対する私は、高校時代はバレエに夢中で、成績はいまいち。体育なんて『足に変な筋肉がつくとバレエに支障がある』と休んで、留年寸前でした。学校には多少、推薦で進学できる大学もありましたが『お前には関係ない』と先生に言われる始末で現役受験は全滅。それでもバレエで鍛えた根性があるので、浪人中は予備校で必死に食らいついて、当時のセンター試験を経て、行きたい学校の切符を手にしました。
地方の学校なので夫の大学には偏差値では及びませんが、努力した経験は今も糧になっています。だから私は『今のまま内部進学をしていい推薦が取れるなら別だけど、そうではないなら大学入学共通テストくらい受けてもいいじゃない』と、当たり前に思っていたんです」
◆まだ親に決めて欲しい年ごろのKちゃんと考えが食い違う夫妻
穏やかな夫婦が「売り言葉に買い言葉」で激突。エスカレーター進学夫vs浪人も辞さない妻
Kちゃん本人の希望を聞くと、「親友のAちゃんが受験するから一緒にしてもいいし、Bちゃんは内部進学だからそれでもいい。バレエは好きだけど、ピアノと水泳はやめてもいい。塾も楽しい」と、曖昧。
「確固たる意思のある10歳のお子さんもおられるかもしれなせんが、うちの子の場合は、まだまだ親に決めて欲しい年頃なようで。私は、夫に『バレエを休ませる』と言われて、ついカチンときてしまって『じゃあ仮にD大学(夫の出身校)付属に受かったとして、D止まりで終わらせるの?』と言ってしまって……」
この発言については、彩子さん自身も反省しているといいます。
「言い過ぎたかなとは思います。夫は普段とても穏やかでめったに怒らないのですが、『D大学止まりで悪かったな』と激怒してしまって。私も『言い方は悪かった』と謝りましたが、『でもバレエは本人が好きなら続けさせたい』と譲らず、睨み合いになってしまいました」
◆夫が中学受験を望む背景にある、年齢的な事情とは
夫の「早く進路を固めたい」背景にあるのは、「大学受験の時はアラ還」
恭さんが中学受験を望む背景には、年齢的な事情もあるようです。
「夫は『アラ還になってまで大学受験や浪人でやきもきしたくない。若いパパとは違うんだよ』と、できるだけ早く娘の進路を固めたい気持ちがあるみたいです」
最終的に彩子さんは、バレエと塾は継続しつつピアノと水泳をやめ、春期講習は見送る形で折り合いをつけました。
「塾側も内部進学と迷っていることを伝えたら、理解してくれました。今はまだ、娘が私のような一発勝負型なのか、夫のようコツコツ型なのか分かりません。真ん中を取って、金銭的にも体力的にも無理のない範囲で、受験の可能性を残すことで落ち着きました。
正直、うちの子の成績は中の中なので、受験しても受かるのは内部進学と変わらない偏差値のボリュームゾーン校かなという気もします。大学付属中学に合格すらしていないのに、合格後に推薦を目指すのか、それ以上の進路を目指して大学入学共通テストも受けるのかなんて『取らぬ狸の皮算用』もいいところです。とはいえ、勉強して損になることはない。経済的にも無理のない範囲で、可能性を探っていきたいと思っています」
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