女の役割は「政略結婚と人質」。都合が悪くなれば残酷に殺される時代に、絶世の美女「お市の方」が見た苦しみとは | NewsCafe

女の役割は「政略結婚と人質」。都合が悪くなれば残酷に殺される時代に、絶世の美女「お市の方」が見た苦しみとは

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女の役割は「政略結婚と人質」。都合が悪くなれば残酷に殺される時代に、絶世の美女「お市の方」が見た苦しみとは

*TOP画像/市(宮崎あおい) 浅井長政(中島歩) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』10話(3月15日放送)より(C)NHK

『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は戦国時代における「人質とお市の方の人生」について見ていきましょう。

戦国時代の名もなき女たち 「〇〇の妻」「〇〇の妹」として生きる

日本において女性が“一人の人間”として法的・社会的に扱われるようになったのは、長い歴史の中でつい最近のことだといえるでしょう。

左方郁子の『人質の歴史 陰の日本史』(1989年)には、戦国時代の女性の扱いに関する興味深い記述がありました。

「戦国の世の男たちにとって、戦争はみずからの生死を抵当にした賭けであった。男は生命を賭けたが、その男たちのかげで、女たちはまた異なる役割を演じた。女は生身の身体を抵当に入れることによって、男たちの世界に参加したのである。[中略]一般に、女性たちは誰それの母、あるいは妻、あるいは娘、あるいは姉、あるいは妹としてはじめて存在の意義をもつ。それが戦国の世の女たちの宿命であった。つまり、戦国時代の女たちは、公的には男の所有する財産であり、物であったのだ。」

引用:左方郁子『人質の歴史 陰の日本史』(29頁)

戦国時代、表舞台で戦ったのは主に男性でしたが、女性にも重要な役割がありました。それが、政略結婚や人質です。

1500年代半ば、一般庶民が娘を借金の担保にすることは珍しくありませんでした。親が借金を抱えたまま亡くなったり、返済できなくなった場合、娘は誰かの妻になっていても、夫が借金を返済できない限り、お金を貸している側の命令に従うのが合理的と考えられていました。夫は妻を守りたければ、返済額を工面するしかありません。

上流階層の女性については、庶民のように借金の担保にされることはほとんどありませんでしたが、『豊臣兄弟!』の市(宮崎あおい)のように政略結婚の相手として、あるいは敵対勢力の側室・養女として送り出されることがありました。

いずれのケースでも同盟関係が正常に機能している間は大切に扱われましたが、どちらかの家が裏切った場合や、同盟が破綻した場合、見せしめの意味を込めて残虐な方法で殺害されるケースも珍しくありませんでした。

織田信長に重臣として仕え、戦国時代の名将と称えられている明智光秀。彼の母(叔母・乳母という説もある)は、人質として悲劇的な最期を遂げたと伝わっています。1579年、光秀は「勝敗は分かっておろう。降伏し、信長に従うなら悪いようにはせん。その証として、母を人質にしよう」と、波多野秀治サイドに提案しました。しかし、織田信長は光秀の母が人質になっていることを知りながら、秀治らを殺したのです。光秀の母は八上城で報復として殺されました。

人権意識が乏しい戦国時代。裏切られた側は人質となっている女性に配慮することはほとんどなく、磔にし、“いかにして苦しめるか”を考えながら、じわじわと時間をかけて殺したといわれています。

家を守るため、何度も利用されたお市の方

信長の妹・お市の方は絶世の美女としても知られています。しかし、彼女の人生は兄や男家族の手の上で翻弄された悲しいものでした。

1564年、信長は近江の浅井長政のもとに妹・お市の方を嫁がせました。このとき、信長にとって美濃の攻略は最大の課題であり、浅井家との同盟が必要であったためです。

しかし、長政は信長を朝倉義景と結託して裏切っただけでなく、信長の信用を損なう動きを繰り返しました。複数回の裏切りに耐えられなくなった信長は浅井家の根拠地・小谷城(滋賀県長浜市)を攻めることを決めました。

織田軍が小谷城を焼き払った際、お市の方と三人の娘は城から出て、兄のもとに戻ることができました。お市の方と娘たちが救われたのは、長政が類まれな優しい男であったからだと言い伝えられています。

お市の方は兄が本能寺の変で亡くなった後、信長の家臣・柴田勝家に嫁ぎました。お市の方を勝家に嫁せようと企てたのが、信長の三男・神戸信孝。信孝は勝家と結束し、豊臣秀吉に対抗を企てており、お市の方をその証として必要としていたのです。

お市の方は農村地域の女性のように重労働を強いられたり、空腹に悩まされたりすることはなかったはずです。信長の妹として生まれ、戦国三英傑の血を引く姫君の生涯は、貧しき民のそれとは異なり、別の形の苦しみに満ちていたようにも思います。

本編では、戦国時代における女性の役割としての「人質」や政略結婚の実態、そしてお市の方が何度も家のために利用されてきた人生についてお伝えしました。

▶▶「嘘から出た真じゃ」兄を溺愛しながらも長政に嫁いだ「お市の方」、策略結婚から読み解く“戦国の愛と宿命”【NHK大河『豊臣兄弟!』10話】

では、実際に本編で描かれたお市の方の婚礼に注目し、その言葉や関係性から見えてくる戦国女性の生き方についてお届けします。

<参考資料>

黒田基樹『お市の方の生涯 「天下一の美人」と娘たちの知られざる政治権力の実像』朝日新聞出版、2023年

左方郁子『人質の歴史 陰の日本史』廣済堂出版、1989年

本郷和人『誤解だらけの明智光秀』 マガジンハウス、2020年


《OTONA SALONE》

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