
もうすぐ夫の誕生日。「今年は何をあげよう…」とカレンダーを見ては、ため息をついている方はいらっしゃいませんか?
毎年のプレゼント選びって、正直プレッシャーですよね。家計やお小遣いから捻出するのも痛手だし、一生懸命選んだのに「あ、ありがとう」くらいの薄い反応だと、正直ガッカリしてしまいます。
さらに辛いのが、自分の誕生日のとき。期待して待っていたのに、夫からのプレゼントが微妙だったり、そもそも忘れられていたり……。「私はあんなに頑張ったのに!」と、悲しみはやがて怒りに変わり、夫婦喧嘩の原因になってしまうことも。
義務感で贈るプレゼントが、夫婦の溝を深めているとしたら本末転倒です。思い切って「プレゼント交換をやめる」ことが、実はお互いのためになるかもしれません。
「えっ、そんなのアリ?」と思ったあなた。 そんなあなたに紹介したいのが、行動経済学博士である相良奈美香氏が著書で紹介している「プロスペクト理論」と夫婦円満の関係です。難しそうなこの理論が、夫婦の関係とどう繋がるのでしょうか?
※本記事は書籍『ポジティブアフェクトで幸せの仕組み化』(相良奈美香:著、須山奈津希:イラスト/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
家族や友人との円満のコツは「誕生日プレゼントを贈らない」
先日、夫の会社の招待でカリブ海のリゾートホテルに宿泊しました。
日本の会社にも「社員旅行」のようなものはあるかもしれませんが、これは会社に大きく貢献した社員に対して「パートナーもいっしょにリフレッシュしてね」という特別なプレゼント。
私も夫に同行させてもらい、美しい海、すばらしいディナー、ラグジュアリーな部屋を堪能しました。しかもマッサージつき(笑)。思いっきり癒やされました。
これは一種のボーナスのようなものです。合理的に考えると現金支給のほうが適切かもしれませんが、人間は非合理なものです。
自分では「贅沢すぎる」とためらうようなものにお金を出してもらうと、現金支給以上の感動が生まれるのです。会社に対するポジティブアフェクトも上がりますよね。
日本の場合、一般的に年に2回のボーナスが最初から約束されていますから、ボーナスが出るのが当たり前と感じてしまいます。しかし、ボーナスは業績に左右されるものです。
だから「去年は50万円出たから、今年は55万円くらいもらえるかな?」とベースアップ分の増額を期待してしまうと、実際のボーナスが45万円だったときのショックが大きいのです。
心理的には「銀行口座の残高が45万増えた」ではなく、期待値に比べて「10万円ぶんの損失!」と感じてしまいます。
「プロスペクト理論」では「人は得したときの喜びよりも、損したときのショックが約2倍大きい」とされています。
つまり「50万円だったボーナスが55万円にアップした」という喜びより、「45万円に下がった」というガッカリ感は2倍だということです。
特に日本の企業ではそれが給与の一部になっているので、「大物家電などはボーナスで買おう」とすでに予定の中に入っています。もらって「当然」という感じで、スペシャル感は少ないのではないでしょうか。
ちなみに私の会社では、定期的なボーナスはありません。その代わり、業績がいいときにはサプライズボーナスを支給します。もらえると思っていないので、スタッフはめちゃくちゃ喜んでくれます。
予期しない贈り物は相手にも自分にも負担にならない
それはプライベートでも同じです。私は夫や親しい友人に誕生日プレゼントを贈りませんし、私ももらいません。クリスマスもバレンタインデーも何も贈りません。
これは大人のカップルが円満であるための、意外に大事なポイントだと思っているのです。
それぞれが収入を得ていれば、欲しいものは自分で買えます(買えないものはそれなりの値段なので、プレゼントとしてはもらいにくい)。
それにある程度の年齢になれば、好みだってはっきりしています。そんな相手にあげるプレゼントを選ぶのはストレスがかかり、ネガティブアフェクトになるかもしれません。
しかも「プレゼントがもらえる」と思うと期待値が上がり、その期待値に達しないとガッカリが大きくなってしまうのです。
プレゼントしたほうだって、相手がさほど喜んでいないことくらいわかりますよね。ネガティブアフェクトの伝染です。せっかく時間も手間もお金もかけて選んだのに!
ということで、私は誕生日プレゼントを誰かに贈ることはしません。
その代わり、「彼が前から欲しいと言っていたものにぴったり」と思うものを偶然見つけたら、迷わず購入してプレゼントします。
思いがけない贈り物ですから、期待値から下がることはないし、誕生日プレゼントのように、お返しをする必要がないので相手への負担も少なくてすみます。
ネガティブアフェクトが入り込む余地はありません。
〈プロスペクト理論〉
人が利益や損失をどのように評価して意思決定を行うかを説明する、行動経済学の代表的な理論。損得の感じ方を「価値関数」と呼ばれるグラフで表現し、人は得をしたときの喜びよりも、損をしたときのショックを2・25倍強く感じるとしている。同じ金額でも損失のほうが心理的な影響が大きいため、合理的な判断や選択ができなくなることもある。
■著者略歴:相良奈美香(さがら・なみか)
行動経済学博士・コンサルタント。日本とマレーシアで育ち、オレゴン大学で行動経済学の修士・博士号を取得後、デューク大学でポスドクを務める。起業しサガラ・コンサルティングを設立、世界最大級のマーケリサーチの会社Ipsos行動科学センター代表などを経て、現在は米国を拠点に、ビヘイビアル・サイエンス・グループ代表として、世界各国で幅広い業界の企業に行動経済学を提供。著書『行動経済学が最強の学問である』は16万部超のベストセラーとなり、日本における行動経済学の認知度を広げる大きなきっかけとなった。
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