
夫婦問題、モラハラカウンセラーの麻野祐香です。
今回は、昨年の秋から始まった「お金による支配(経済的DV)」に苦しむFさんのお話です。生活費を渡さないことで妻をコントロールしようとする夫。「こんなことが続くなら離婚しかない」と思い、動き出したにもかかわらず、その裏で「彼を見捨てられない」と涙を流してしまう女性の、切実な葛藤についてお伝えします。
「口答えするなら生活費は払わない」始まったお金の締め付け
30代のFさんの家庭で、ある日突然、経済的DVが始まりました。単身赴任中の夫が、ちょっとした意見の食い違いをきっかけに、「俺に逆らうなら、もう金は渡さない」と言い出したのです。
自己中心的な言動、何事も自分都合、機嫌の悪さを家族中に撒き散らすなど、モラハラ行動は以前からありましたが、生活費だけはきちんと入れていました。そのためFさんは、夫のモラハラに悩みながらも、自分ひとりでは生活費を稼げないこと、このままやり過ごしていれば夫も年齢とともに変わってくれるのではないか、そんな期待を抱いていたのです。
ところが、子どもの習い事に対する考え方の違いをきっかけに、夫は激怒しました。「お前たちのことなんて知るか」と言い残し、単身赴任先へ帰ってしまったのです。さらに夫は、それまでFさんが管理していた給与振込用の通帳とキャッシュカードを、無理やり赴任先へ持ち去りました。家賃や光熱費は通帳から引き落とされるものの、日々の食費や日用品を買うための大切なお金が、完全に止められてしまったのです。
「俺の考えに逆らう奴は、家族でもなんでもない。他人だ。だから生活費は渡さない」
そう突き放されました。
Fさんが「そんなに他人だと言うなら、もう離婚したほうがいいよね」と返しても、夫は不思議なことに離婚だけは拒みました。
夫の目的はただひとつ。お金を渡さないことでFさんを困らせ、自分の力を誇示し、「俺の言うことを聞かなければ生きていけないだろう」と分からせること。
それこそが、夫の目的だったのです。
「お金を渡さないこと」で妻を支配する夫の心理
生活費を断ち、通帳を取り上げる。こうした行動の裏には、お金を「家族を支えるもの」ではなく、相手を従わせるための「道具」として使う、歪んだ発想があります。
1.「お金」を盾に、妻の反論を封じる
モラハラ夫にとって、お金は相手を思い通りに動かすための最も強力な武器です。
「俺が稼いだ金で生活しているんだから、俺の言うことを聞け」
「金を止めれば、妻は逆らえない」
生活の命綱であるお金を握ることで、反論する気力そのものを奪い、言いなりにさせようとします。
2.「俺の機嫌を損ねた罰」として生活を脅かす
夫にとって生活費は、「妻が自分の期待通りに振る舞ったときだけ与える報酬」です。少しでも気に入らない態度を取れば、話し合いではなく「生活費を止める」という制裁に出る。相手が最も困る方法で脅し、従わせようとするのです。これほど冷酷なことをしながら、夫の口から出るのは「自分がどれほど可哀想な目にあっているか」という言葉ばかりでした。
「お前が俺を大事にしないから、金を渡したくない。俺のほうが被害者なんだ」
自分の行為が相手をどれほど追い詰めているかには目を向けず、傷ついた自分のプライドだけを被害者のように訴える。そこには、自分が加害者であるという自覚は一切ありませんでした。
家族カードも止められ、手持ちの現金が尽き欠けて
通帳とキャッシュカードを持ち去られた日から、Fさんの生活は一変しました。家賃や光熱費は引き落とされるものの、手元の現金は底をつきかけています。スーパーのレジで財布を開くたびに、「来週はもう何も買えないかもしれない」という恐怖に襲われました。
さらに夫は、家族カードの利用停止手続きも済ませていました。Fさんの手元には、自分の意思で使えるクレジットカードは一枚もありません。レジでカード決済をしようとした際、「このカードは現在お取り扱いできません」と表示された瞬間、血の気が引くような感覚に襲われました。
「俺に従わないなら、一枚のパンも買わせない」
夫の無言のメッセージに、悔しさが込み上げてきました。
スマホ決済も、紐づいているのは夫の口座。現金もカードも電子決済も、あらゆるライフラインを夫に握られ、Fさんが自由に使えるお金は完全に消え去っていたのです。
本編では、夫から生活費を止められ、通帳・カード・スマホ決済まで奪われるという、経済的DVの実態と、それでも「彼を見捨てられない」と感じてしまったFさんの葛藤についてお伝えしました。
▶▶ 「彼を見捨てられない」その思い込みが命取りに。生活費を止められても離れられなかった妻が、“自分の人生”を取り戻すまで
では、Fさんが“お金で支配される関係”から抜け出すために踏み出した具体的な行動と、心に起きた変化をお届けします。
※本人が特定されないよう、名前などを変えてあります
※写真はイメージです




