
腸内環境が整うと、美肌や全身の健康などにもいい影響を及ぼすことはすでに周知の事実です。腸活というと、食物繊維や乳酸菌などが真っ先に頭に浮かぶかもしれませんが、実は「ポリフェノール」にも腸活効果があるんだとか。
今回はいま改めて注目されているポリフェノールの機能や可能性について、一般社団法人ウェルネス総合研究所が開催した「ポリフェノール研究セミナー『知られざる紅茶ポリフェノールの働き』最新知見」に参加して、甲南女子大学医療栄養学部医療栄養学科准教授の川畑球一先生にお話を伺いました。川畑先生は食品機能学を専門とし、腸内フローラとポリフェノールの機能的相互作用に関する研究に従事されています。
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▶40代50代女性に嬉しい。更年期症状が緩和!?
エストロゲンの働きを高める!?女性ホルモンを気にする更年期女性こそポリフェノール!
また、腸内細菌がポリフェノールにいい作用をもたらすことも分かっています。まず、ポリフェノールを摂取することで腸内バランスが整います。そして、その腸内細菌によってポリフェノールがより強い物質に変化し機能が高まるという、お互いにいい影響を与える相互的機能作用が起こると考えられているのです。
例を紹介しましょう。たとえば大豆ポリフェノールである「ダイゼイン」が腸内細菌によって「エクオール」に変化し、エストロゲンと似た働きをします。またポリフェノールの一種である「イソフラボン」も、腸内細菌によってエストロゲンの効果を高めることがわかっています。
このようにポリフェノールは、腸内細菌との相互作用によってエストロゲンの効果を高めることから、女性の美容と健康に欠かせないと言えます。更年期症状の緩和や骨粗しょう症予防、肌の潤いや髪の維持など更年期特有の悩みの味方として、大いに期待できそうです。またポリフェノールには、短時間で血流を増加させたり、身体の末端の温度が下がりにくくする機能もあるため、冷えにも効果的です。
一方で上記は必ずしも個人全員に当てはまるわけではなく、個人差があることは知っておく必要があります。大豆ポリフェノールであるダイゼインをエクオールに変化する腸内フローラを持つ人は、日本人でも2割いるかいないかという程度だそうです。
▶紅茶が短鎖脂肪酸を増やす!?
紅茶ポリフェノールが腸内環境にいい影響を与える可能性
ポリフェノールの中でも腸内フローラとの関係性が研究されているのが、紅茶に含まれる「紅茶ポリフェノール」です。40代50代に嬉しい、抗酸化作用、抗肥満作用、血糖値調節作用、血中脂質改善作用、便秘改善作用などがあります。
また紅茶ポリフェノールは短鎖脂肪酸を産生する菌を増やすことがわかっており、その結果、菌叢バランスを変化させ、悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌の増殖を促してくれます。そしてこの短鎖脂肪酸が全身を巡って各種臓器の健康状態に作用することが考えられています。
紅茶やワインだけでなくいろいろな食材からポリフェノールを摂取して
ポリフェノールと腸活の相互関係にはまだまだ研究の余地があります。ポリフェノールを含む食材や紅茶に限らず、ワインやチョコ、野菜などさまざまありますが、いろいろな食材からポリフェノールを摂取することでそのほかの栄養も摂れるため、偏った食生活にならないことを推奨します。
またポリフェノールの効果はすぐ効果が出るわけではないため、まずは2か月から3か月を目安として食材や飲み物から摂取して、紅茶であればカフェインが体に合うかどうかを見極めてください。
腸内フローラと密接な関係を持ち、構造を変化してさまざまな機能を引き出してくれる可能性に満ちたポリフェノール。女性ホルモンの構造変化にも影響を及ぼすことから、これから研究が進めば腸活だけでなく更年期症状においてもポリフェノールが救いとなってくれる可能性はかなり高いでしょう。オトナサローネ世代もこの先ますます進むポリフェノールの研究に目が離せませんね。
【解説】農学博士、甲南女子大学 医療栄養学部 医療栄養学科 准教授 川畑 球一先生
2000 年、近畿大学生物理工学部生物工学科卒業。福井県立大学講師、神戸学院大学講師などを経て、2018 年から現職。専門分野は食品機能学。腸内フローラとポリフ ェノールの機能的相互作用に関する研究に従事している。日本フードファクター学会理事。




