『映画ラストマン -FIRST LOVE-』が、12月24日(水)クリスマスイブに全国公開。さらに12月28日(日)には、完全新作スペシャルドラマ「ラストマンー全盲の捜査官ー FAKE/TRUTH」(以降、SPドラマ)が放送と、まさに“ラストマン・イヤー”の締めくくりを飾る大型プロジェクトとなっている。
物語の中心となるのは、主演・福山演じる全盲のFBI捜査官・皆実広見と、大泉洋演じる孤高の刑事・護道心太朗。“事件を必ず終わらせる最後の切り札=ラストマン”の異名を持つ皆実と、犯人逮捕のためには手段を選ばない心太朗という、肩書も性格もすべてが正反対の2人。しかし捜査を共にする中で、次第に“無敵のバディ”として絆を深め、ドラマ終盤では実の兄弟であるという衝撃の事実も明らかになった。
そしてこの冬、2人は映画とSPドラマの二軸で“史上最悪の2日間”に挑むことになる。
どのようにして映画・SPドラマ化は実現したのか。脚本はどこに重きを置き、映像として立ち上がっていったのか。今回、企画プロデュース・東仲恵吾、脚本家・黒岩勉、監督・平野俊一という「ラストマン」を創り上げた3名に迫り、映画・SPドラマの裏側を紐解いていく。
視聴者の期待に背中を押されて――プロデューサー・東仲恵吾が語る“続編”の必然連続ドラマの放送終了直後から、SNSや視聴者からは「続きが観たい!」という声が数多く届いたという。
東仲プロデューサーは「“続編を望む声”があったからこそ映画化が実現しました。ドラマを見てくださった皆さんの声が、企画を動かす一番の原動力でした」と語る。
連続ドラマの撮影中も、キャスト陣やスタッフの間では「この物語はもっと広がる」「ぜひ続編を!」という共通の思いが強く、東仲氏自身も「ラストマンの世界は長く続けていける」と確信していた。
そして連続ドラマの放送終了後、続編プロジェクトに向けて動き出した。
■福山演じる皆実の“初恋”で描く、彼の原点
映画で強くこだわったのが、皆実の人間性を深めることだったという。
皆実を演じる福山とも会話し、連続ドラマで描き切れなかった皆実の過去、その“心の奥”へと踏み込むことで、劇場版のテーマ性が大きく広がると確信していた。
黒岩氏と脚本を書き進める中で、皆実をFBIに導いた“恩師”を描く案もあったが、“彼の心を最も揺らす瞬間”を考えたとき、辿り着いたのは初恋だった。ナギサ・イワノワという初恋の人物が、皆実の価値観の核を作った――。その関係性を、映画の中心に据えた。黒岩氏と何度も推敲を重ね、皆実の人間性を深堀りするキーパーソン=ナギサの輪郭が築かれていった。
「皆実に引けを取らない存在感を纏える役ということで、ダメ元でオファーをさせていただきました」とナギサを演じる宮沢りえのキャスティングをふり返っている。
皆実を“人間”として深めるための選択――脚本家・黒岩勉氏次に物語の核を作り上げた脚本家・黒岩勉の視点に触れたい。映画化にあたって、黒岩氏が最も大切にしたのが皆実×心太朗のバディ感。
「軽妙な掛け合いは視聴者が愛してくれた部分。映画でもそこは変えてはいけないと思った」そのうえで連続ドラマでできなかった爆破・アクションや遠方ロケなど、映画ならではのスケール感を最大限に活かした脚本を追求した。
■“北の魅力”が決め手に
北海道を舞台に選んだ理由の1つには、ナギサが拘束されていたロシアとの地理的な関係に加えて、黒岩氏個人の体験も背景にあった。
連続ドラマの終了後に訪れた函館・五稜郭の桜に心を惹かれ、山や港、路面電車が共存する函館の多彩な表情に魅力を感じたという。結果として、スピード感のあるカーチェイスから、視界が入り組むアクションまで、多様なシーンを成立させる絶好のロケーションとなっている。
■SPドラマが担う“時代性”SPドラマでは、SNSと真偽を巡る物語を描いた。「SNS=悪という描き方はもう古い。SNSは国民の声でもあり、向き合うべき存在」と黒岩氏。即時性を重視するドラマだからこそ、“誰が何を信じるのか”を現代的に描くことに意味があった。
■作品全体に通底するテーマ
黒岩氏は「ラストマン」という作品で伝えたいメッセージを、こう語る。「誰かに助けてもらうことは決して悪いことではない。助けてもらった人が、今度は誰かを助けてあげればいい」。
“映画ならでは”のステージへ――平野監督が語る現場と演出
その脚本を映像として体現した平野俊一監督が映画化で大切にしたのは、「ドラマとは違う世界へ2人を連れて行くこと」だった。その一環として選ばれた舞台が北海道。降り積もる雪が物語のスケール感、初恋の叙情性をさらに加速させた。
■福山雅治×大泉洋 演技の化学反応これまで数多くの作品を手がけてきた平野監督だが、撮影前日はやはり緊張するという。その理由は、現場に行って2人が提案するもの、表現されるものに敵わないないなと思ってしまうからだという。
「現場では、最初に僕がビジョンやプランを説明しながら撮影していく中で、福山さん、大泉さんの中で次第に血となり肉となってアイデアがどんどん出てくる感じです。台本以上のものに2人を導いていけるのかというプレッシャーを感じながらも、負けじと臨んでいます」と監督。
2人がカメラの前に立つと、台本以上のものが必ず生まれる。だから敢えてカットは長回しにする。現場で起こる予測不能な瞬間を、監督は逃さず拾い上げていった。
■皆実の“見えないアクション”
皆実が目の見えない状態で戦うアクションシーンは、アクション監督の川本耕史、全盲所作指導のダイアログ・イン・ザ・ダーク、そして福山本人のアイデアを交えながら、細かな検証を重ねて構築されたという。特に「相手と組むまでをどう描くか」が大きなテーマで、距離の取り方や敵のサーチ方法は何度もトライ&エラーを繰り返して作り上げられた。
謎の組織に追われるナギサを救出する場面では、光で視界を一時的に麻痺させるという新しい戦術を採用。サーチでは白杖も使うが、「白杖を武器として使わない」という連続ドラマ時代からのルールは堅持された。その積み重ねが今回さらに発展した形だという。
■新バディ・泉 × ユンの魅力連続ドラマからのキャラクター、護道泉(永瀬廉)と、新たな交換研修生として派遣されたFBI特別捜査官のクライド・ユン(ロウン)のバディにも熱が入る。
「泉は不器用で真面目。ユンは生意気で自由。でも芯には同じ“熱”を持っている。この対極を見せたかった」という監督。アプローチに違いはあれど、正義に尽くす思いは変わらない。泉とユンが成長していく姿も、本編で丁寧に映し出されている。
■おわりに
東仲プロデューサーが走り出し、黒岩氏が物語の土台を築き、平野監督が映像として生命を吹き込んだ――。
3者が語る“ラストマン愛”は、確かに同じ方向を向いている。「この物語は、まだ続きが観たい」。映画とSPドラマを見終えたあと、観客の心にはきっと、このひとつの感情が残るだろう。
『映画ラストマン -FIRST LOVE』は全国にて公開中。
完全新作スペシャルドラマ「ラストマン-全盲の捜査官-FAKE/TRUTH」は12月28日(日)21時~TBS系にて放送。












