【モデルプレス=2025/09/12】NHK連続テレビ小説「あんぱん」(毎週月~土あさ8時~ほか)に出演している俳優の北村匠海(きたむら・たくみ/27)にモデルプレスらがインタビュー。前編では、第1回冒頭シーンの裏話や最終回への思い、そして共演したMrs. GREEN APPLE大森元貴との関係性について聞いた。【写真】嵩(北村匠海)に嫉妬するのぶ(今田美桜)◆連続テレビ小説「あんぱん」今作は、“アンパンマン”を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、生きる意味も失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかった2人が、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」に辿り着くまでを描く愛と勇気の物語。主人公の柳井のぶを今田美桜、のぶの幼なじみで、夫の柳井嵩を北村が演じる。◆北村匠海、第1回冒頭シーンで見せた“覚悟”― 1年間お疲れ様でした。ようやく第1回冒頭のシーンにたどり着きましたが、ここまでの撮影を振り返って今の心境をお聞かせください。北村:やなせさんが遅咲きで「アンパンマン」を生み出したというのもあり、物語上、悩んだり立ち止まったり、下を向いたりということを50代後半、60代に至るまでやり続けなければいけませんでした。第1回冒頭のシーンの撮影時は、まだ先々のことが分からない状況だったので、やなせさん本人にしか答えがなく、ある種模倣しようと考えてお芝居をしていました。だけど、120回になってようやくたどり着き「アンパンマン」を見たとき、あの頃とは全く違う感覚が湧きました。それはなぜかと考えたとき、やなせたかしとしてではなく、柳井嵩として生きたからだというのを強く感じます。“柳井嵩”というものの主体性をどこに置くかという話を妻夫木(聡)さん(八木信之介役)ともよくしていたのですが、やなせさんは「あんぱん」という作品全体を包んでいて、嵩はその象徴的な存在だというところに行きつきました。だから、1年間過ごしていく中で、やなせさんとは似て非なるものになっていきました。柳井嵩として「アンパンマン」を見ると、愛しさと、ここに至るまでの苦しさと、今まで出会ってきた人たちの顔が浮かびました。でも、やっぱり一番は、のぶちゃんを感じましたね。というのも、実際のやなせさんと暢さんが一緒に過ごした時間より、柳井嵩と朝田のぶが過ごした時間って長いんですよ。ともに過ごした幼少期があり、のぶは軍国主義も背負いましたし、2人で戦争後に話したり、高知新報で再会したり、嵩は常にのぶに尻を叩かれながら前に進んできたけれど、ときには自分が前に立つ瞬間があったり、どうしようもなく落ち込んでいるのぶちゃんを横で見ることもあったり。そして今2人で歩むようになり、その中でもいろんなことが巻き起こっていって。そんな2人の日々を「アンパンマン」という作品全体に感じました。嵩にとってのアンパンマンは千尋(嵩の弟・柳井千尋/中沢元紀)ですが、作品全体には2人の軌跡が感じられて、これはきっと柳井嵩オリジナルの感情なのかもしれないと感じました。― 第1回冒頭のシーンの撮影について詳しくお聞かせください。北村:実は、冒頭のシーンを撮影したときは詳細な年代が決まっていなかったんです。第120回で放送されたものと全く同じシーンではないんですよね。冒頭のシーンについて監督がおっしゃっていたのは、「ある意味僕らの覚悟のシーンだ」と。「あんぱん」という作品をやりきるんだという覚悟を、観てくださるみなさんに見せたかったとおっしゃっていました。撮影は1年前のことなのでどんな気持ちだったのかをすぐに思い出すことはできませんが、もう1回同じようなシーンを演じると、当時とは顔の角度からなにからが違います。ただ、あのときにやなせさんを感じながら演じたお芝居の根っこは全く同じ感覚で、根を生やしているのはやなせたかしさんのイズムでありながらも、柳井嵩として違う花や草木として育ったんだなと感じました。◆北村匠海、全員で作り上げた「あんぱん」最終回― 脚本家の中園ミホさんは、100通りの最終回を考えていたとお話されていましたが、最終回の台本を読んだとき、演じたときの思いをお聞かせください。北村:みんなが納得するベストな終わり方になっていると思います。非常に「あんぱん」ののぶと嵩らしい、他愛のないシーンになっていて、撮影していて涙が出そうになりました。「あんぱん」で歩んできた温かな毎日がそうさせてくれた気がします。― みなさんで作り上げてきた充実感はありますか?北村:ありますね。僕たちの話も聞いてくれますし、監督さん、演出陣だけではなく、助監督チームやカメラマンチーム、衣装・メイク部、どの部署のスタッフさんも対等に話し合いながら、全員で1日1日を紡いでいるような感覚です。僕は今作が朝ドラ初出演だったので、15分の難しさを痛感しました。ページをめくったら数年経っていて子どもが成長している、みたいなこともあって。15分の中にどのように起承転結を付けて、1週間という大きな起承転結をどのように作るのかという難しさは今まで経験がなかったので、疑問に思うことがあれば決して流さずに立ち止まり、常に全員で話し合ってきたものが、ラストシーンに繋がったのかと思っています。◆北村匠海、やなせたかしの“チャーミングさ”に苦戦― 戦争パートでは胸を打つお芝居をされていましたが、お茶を吹き出すシーン(第102回)などコミカルな演技もとても魅力的です。そういったシリアスからコミカルまでの振り幅を表現する上で意識していることがあればお聞かせください。北村:戦争パートの撮影くらいから、この先やなせさんのチャーミングさをどうやって作っていけばいいのだろうと考えていました。高知新報のパートから、チャーミングさやポップな部分をにじませていこうかと思っていたのですが、戦争を経験した人にしか出せない表情や佇まいは必ず見せなくてはいけないので、その塩梅が難しかったです。脚本が進んでいくにつれて柳井嵩としてのオリジナリティがどんどん強調されていったので、弾けようと思えばいくらやっても正解なのかもしれないという思いもありました。大森元貴くん(いせたくや役)とのシーンは、彼自身がすごくポップな人間なのでポップになりやすかったですね。彼は、天性の感覚的な部分でやられていると思うんです。でもそれをちゃんと頭で考えることで裏付けされていて、楽譜のようなお芝居をされている印象があり、2人のシーンでは脚本の句読点なんかも全部ひっくり返し、現場でのセッションで作っていった結果、意外と嵩らしいポップな瞬間がたくさん生まれたような気がしています。お茶を吹き出すシーンも褒めていただけて嬉しいのですが、あれは得意なだけです(笑)。僕、血を吹き出すのはよくやっていて、一時期「血しぶきの天才」と呼ばれていたので、「ちょっとリベンジャーズやります」と言って吹いたのを覚えています。◆北村匠海「あんぱん」で得た財産とは― 「あんぱん」柳井嵩役が北村さんにとってどのような経験になったのか教えてください。北村:この1年は本当に長かったです。役と一体となって日々を過ごしていく、お芝居が当たり前である感覚が、改めて贅沢な時間だったと感じました。1日の内で芝居をしている時間の方が長いので、それが1年続くと嵩として喋っている方が自分にとってすごくニュートラルな感じになってきて。今までは役者として現場を俯瞰で見ることを常に意識していたのですが、今回は客観性も大事にしつつ、主観になってしまう瞬間が何度もありました。だけど、その瞬間にいいシーンができあがるという成功体験もあり、自分の中ではすごく有意義で贅沢な1年間だったと思います。また、子役の方から60代、70代の方まで、全世代の方と一つの作品でお芝居ができる機会はめったにないことなので、それも自分にとって身になる時間でした。あとは、今作でいろいろな方と出会い直しました。西山潤は同じスターダストプロモーションという事務所に所属しているのですが、小学校3、4年の頃に出会い、同じ作品に出演したんです。子役時代から演技レッスンを一緒に受けていた彼がある種同じ役をやるというのがすごく感慨深かったです。RADWIMPSさんも子どもの頃に出会い、やっとお仕事で出会い直すことができましたし、言わずもがな今田さんも何度も出会い直して今回があります。僕は来年で役者人生20周年になりますが、総決算のような感覚があり、いろいろな方との“出会い直し”が、改めて僕の財産になりました。― 嵩からはなにか影響を受けましたか?北村:めっちゃ落ち込むようになりましたね(笑)。長らく落ち込むということをしてこなかった気もするのですが、嵩をやりだしてからすごく落ち込むんですよ。それほど自分に影響を与えています。振り返れば、学生時代はネガティブ人間だったので、そこに立ち返る感覚も少しあったのかもしれません。落ち込んだときは、やなせさんを見るようにしてました。やなせさんは本当に明るい方なので、やなせさんからエネルギーを摂取して芝居に臨むという日々のルーティーンがありました。◆北村匠海、ミセス大森元貴の才能に嫉妬 再共演熱望― やなせたかしさんは作詞家としての一面もありましたが、柳井嵩を演じ、北村さんのアーティスト活動に影響を受けた部分はありますか?北村:ありますね。「アンパンマンのマーチ」には先方に修正される前の歌詞があるのですが、それを見たら、僕の価値観や哲学がやなせさんと本当に近かったのだと気づきました。僕も歌詞が暗すぎることが結構あるんです。でも、ポジティブなことには必ずネガティブなことが付き物だと思っているので、そこを描かないことにはポジティブが伝わらないという考えがあります。やなせさんの言葉を見て、自分の感覚は間違っていなかったと天国のやなせさんが肯定してくださっている感覚があり、影響を受けた部分も大きいですし、支えにもなりました。― 「ポジティブとネガティブは表裏一体」ということは大森さんもおっしゃっていましたが、大森さんとの共演も含め、今後の刺激になったことはありますか?北村:もっくん(大森)は、初めて仲間を見つけた感覚に近いというか。僕からしたらミセスさんは遠い存在ですが、もっくんが僕と目線を合わせて言葉をかけてくれる。クランクアップの際にも「本当に匠海くんを尊敬しています」と言ってくださいましたし、「僕もあなたのことを大尊敬しています」とお話しました。“仲間”というのは見つけようと思って見つかるものではないです。だからこそ、僕が肩を落としたときに、一緒に横で肩を落としているもっくんがいるというのは支えにもなりましたし、2人だからこそできた芝居もありました。あと、音楽番組で生き生きと歌っている彼を見たら、やはり素晴らしいアーティスト、表現者だなと思いました。彼の才能には嫉妬もしましたし、それでいて本当に尊敬できる方。また役者の現場に来てくれるのであれば、出会い直せるタイミングがいつかあれば嬉しいなと思います。★後編では、共演した今田、高橋文哉らとの秘話や演じた柳井嵩への思いを語ってもらった。(modelpress編集部)◆北村匠海(きたむら・たくみ)プロフィール1997年11月3日生まれ、東京都出身。映画「君の膵臓をたべたい」(2017)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年はドラマ「教場」シリーズ(フジテレビ系/2021、2023)、「にじいろカルテ」(テレビ朝日系/2021)、「アンチヒーロー」(TBS系/2023)、「幽☆遊☆白書」(Netflix/2023)、映画「東京リベンジャーズ」シリーズ、「明け方の若者たち」(2021)、「法廷遊戯」(2023)、「悪い夏」(2025)など数々の話題作に出演し、2025年10月24日に主演映画「愚か者の身分」が公開予定。【Not Sponsored 記事】
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